2025.02.27【柏崎刈羽原発】理由は〝工事の特殊性〟4年以上後ろ倒しに…テロ対策工事【新潟】
〝特重施設〟とは
東京電力が柏崎刈羽原発7号機で進めてきたテロ対策工事の期限を『2029年8月』に延期すると発表しました。地元同意のめどが立っていないことから、早期の再稼働は困難になり、今後は6号機の再稼働を優先するとみられます。
■柏崎刈羽原発 稲垣武之所長
「これまで実施したことのない工事であり、かつ非常に大規模な工事であるため、工期を見通すことが非常に難しい状況。工事完了時期を『2029年8月』に変更し、本日 原子力規制委員会へ工事計画変更の届出を行った。」
東電は3月に『完了予定』としていたテロ対策工事を、4年以上後ろ倒しすると発表。6号機についても、これまでの『2026年9月』から『2031年9月』に変更しました。
なぜ工期が遅れるのか。
その理由は〝工事の特殊性〟にあります。
テロ対策工事とは、通称〝特重施設〟を建設するものです。これは、発電所が航空機などによる攻撃を受けた際、原子炉格納容器の破壊を防ぐためのバックアップ用の施設で、原子炉建屋への電源や冷却設備などを備えています。
会見では、他の要因もあげました。
■柏崎刈羽原発 稲垣武之所長
「昨今の建設工事などの人手不足の社会情勢もあり、工期短縮が難しくなった。」
一方、東電が強調したのは、柏崎刈羽原発が〝重要な電源〟という点です。稲垣所長も再稼働の旗はおろしませんでした。
■柏崎刈羽原発 稲垣武之所長
「7号機、そして6号機と稼働させていくことで、日本の電力需給の安定化と脱炭素化に継続して貢献していきたい。」
ただ、7号機では特重施設の設置期限が『2025年10月』となっていることから、今 原発を動かせても10月には運転を停止しなければなりません。地元の同意が得られていない現時点では、「再稼働は極めて難しくなった」というのが東電や政府の認識です。
このため、今後は6号機の再稼働を目指すとみられます。こちらは特重施設の設置期限が『2029年9月』となっているため、原発を動かしながら工事を進めることができます。
花角知事は記者団に対し、次のように述べました。
■花角英世知事
「今、再稼働にどう向き合うかということの議論の中で、7号機がどうとか6号機がどうとかいう議論は、直接議論の本筋の話ではないと思っているので、特にどうということではない。」
現在開会中の2月県議会でも、「県民の意思が固まるのを見極める」と答弁している花角知事。再稼働を前提にした議論は“時期尚早”との立場です。
一方、再稼働を容認する柏崎市の桜井雅浩市長は-
■柏崎市 桜井雅浩市長
「4年という年月は、私が考えていたよりもはるかに長いというか、遅いというかという期間なので非常に残念。」
今回の工期延長は、再稼働をめぐる議論に影響を与えることが避けられない見通しです。特重施設が未完成のまま6号機を再稼働することは、安全上の指摘を呼ぶ可能性があります。
しかし、原子力規制委員会のルールでは、一定の設備が整っていれば稼働は可能です。このため、東電は「直ちに重大事故の発生などに支障が生じるようなものではない」と発表。会見で稲垣所長も次のように訴えました。
■柏崎刈羽原発 稲垣武之所長
「(航空機衝突時などの)訓練を繰り返し実施している。航空機衝突やテロという形の事故対応を備えてきている。」
3月の県議会では、国の原子力政策のトップが出席するなど議論が大詰めを迎えつつある中で、飛び出した今回の決定。〝工期延長〟も大きな争点の一つになりそうです。