2024.11.28【特集】『仕事見つからない』『家も借りられない』 “身寄りなし” 孤立する高齢者たち【新潟】
“実質的に身寄りがない”孤立する高齢者
超高齢化社会を迎え、問題となっている高齢者の孤立。
身寄りがなく親族にもかかわりを拒否され、社会から孤立したまま人生を終える高齢者が増えています。
多様化する孤立の現場を取材しました。
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(合葬墓に納骨・読経)
納骨されたのは76歳の男性の遺骨。
手を合わせているのは、家族ではありません。
■社会福祉士 土田純一さん
「ご結婚はされていなくて、お子さんもいらっしゃらないと。親御さんはもうお亡くなりになってるかなっていう方だった。それで成年後見制度を使って、この度、私の方でご担当させていただいた。」
認知症を患っていた男性。離れて暮らす兄弟とは関係が悪く、火葬や納骨を拒否されました。
合葬墓への納骨を決めたのは、後見人の土田さん。男性と同じような境遇の人が、多く入っているといいます。
■林正寺 橘芳月副住職
「(合葬墓を)永大供養墓とネーミングを変えて、身寄りがない方でも受け入れますよという。今のところは本当、想像以上に人が入ってくるというとこでしょうかね。」
男性の火葬を担当した、村上慶乃介さん(47)。新潟市で葬儀業を営んでいます。亡くなった高齢者の家族以外から、火葬を頼まれることが増えているといいます。
■村上慶乃介さん(47)
「このご遺体は、後見人さんからの依頼の案件になるんですけれども、ご親族と生前からあまり関係が良くなくて、葬儀以降のこと、葬儀からも関わりたくないということで、もう親族が何もしてくれない状態ですね。」
1人暮らしの83歳の男性。病気で入院し、その後亡くなりました。葬儀はなく、亡くなった翌日に火葬場へ。
■村上慶乃介さん(47)
「今回の方みたいにお骨を誰も拾わないってなると、もうここで終わりです。ちゃんと火葬までしましたっていうところで、僕から後見人さんに報告して完了ですね。」
1人暮らしの高齢者が自宅で、誰からも看取られずに亡くなる、いわゆる“孤独死”。
県内では、今年6月までの半年間、自宅で1人で亡くなったのは542人。このうち8割以上にあたる439人が、65歳以上の高齢者でした。
村上さんは、高齢者の孤立が多様化していると感じています。
■村上慶乃介さん(47)
「じつは身寄りがないと言っても、本当に戸籍上も身寄りがない人はほとんどいなくて、2親等・3親等はいる。いるんだけど関わりたくないと拒否されるケースだったり、“実質 身寄りがない”状態という人がほとんど。」
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■村上慶乃介さん(47)「こんにちは。」
■中川さん(仮名・77)「いやいや大変だね、なんか。」
■村上慶乃介さん(47)「とんでもないです。」
村上さんは葬儀業のほかに、孤立する高齢者をサポートする会社を運営しています。
77歳の中川さん(仮名)。村上さんが身元保証を請け負う高齢者の1人です。
■村上慶乃介さん(47)
「パソコンもいらない?多分使いたい人いるので、ありがたいです。」
■中川さん(仮名・77)
「ヘタに出すと、かえってお金かかっちゃって。」
30代で夫と離婚し、兄とは絶縁。“実質的に身寄りがない”状態でした。
■中川さん(仮名・77)
「早い話が職を失って、一生懸命職探したんですけど、もう年齢で切られることが多くて。住まいもちょっと問題があったりして、先行きがもう見えないなっていう雰囲気があって、そんな時にちょっと事故ってしまって。」
職を失ったのと同じころ、家主の事情から住まいを変えざるを得なくなった中川さん。新しい仕事が見つからず、保証人もいないためアパートを借りようとしても契約ができませんでした。将来に希望を見いだせない中、1年半前、車で単独事故を起こしました。
■中川さん(仮名・77)
「でもどうしようもなかった。生活費はままならないわけだし、5カ月間入院して、退院はできても行き場がないわけですよ。住まいがないから。それで困っていた時に、たまたま包括支援センターの方が村上さんを紹介してくださって。」
村上さんが保証人になり、退院後に今のアパートを契約。住み始めてから、まもなく1年が経ちます。
■中川さん(仮名・77)
「もし村上さんがいなかったら、こんな話していいのかわかんないけど、首をつっていたかもしんないですね。もうこんなになってまで、生きてたってしょうがないじゃんって。」
■村上慶乃介さん(47)
「施設入居とかする際の身元保証事業であったり。その方に何かあった時に、24時間いつでも駆けつける緊急の駆けつけのサービスであったり。家族の代わりみたいな形ですかね。」
2人は、死後事務の委任契約も締結。中川さんが亡くなった時は、通夜から火葬や納骨、財産処分や遺品整理までを村上さんが請け負います。
■中川さん(仮名・77)
「(気持ちが)全然違いますね。ここで本当にバタッと逝ったって、そしたら全部これを処分してくださるわけだから、こんなに安心なことないじゃないですか。友達がいたにしても、そんなことまで頼めないですよ。向こうも家族いるわけだしね。」
■中川さん(仮名・77)
「(柴犬のおもちゃで遊ぶ中川さん)あったま、かったー、ひーざ、ポン!ひーざ、ポン、ひーざ、ポン!」
毎月の暮らしは、年金と、貯金を切り崩しながらの生活です。
■中川さん(仮名・77)
「ほんとはちゃんと犬飼いたいんだけど、自分の生活で目いっぱいだしさ。そう思うとこんなのでも…。」
現在のアパートは、貯金がなくなり生活保護を受けることになっても、住むことができる物件です。
■中川さん(仮名・77)
「私も前はそういうところにすがるっていうのは、すごく申し訳ないことだって思ってた。自分で自分の食いぶちくらいちゃんと稼いで生活していかなくちゃって。」
■村上慶乃介さん(47)
「(生活保護という選択肢も)必要なことですよね。だって同じような悩みを抱えている人が、もしかしたら本当に絶望して命を落としているかもしれないし、助けられるものがあったのに助けられなかったっていうのはやっぱり悲しい。」
今の生活、そして死後の心配がなくなり、前向きな気持ちを持てるようになったといいます。
■中川さん(仮名・77)
「人に頼るのもそんな恥じゃないんだからって言われて。好きにテレビ見たり、本読んだり、散歩に行ったり。図々しいかなと思うけど、それでもいいか、とか思うようになりましたね。」
■村上慶乃介さん(47)
「真面目で責任感が強い人ほど、中川さんのようなケースになることが多いっていうのは感じているので、やっぱりああいう人こそ、支援したいっていうところはありますよね。やっぱり時代とともに、葬儀社っていうのも形を変えていかなきゃいけないと思っているので、これからの時代、葬儀社として身寄り問題サポートっていうのは続けていきたいなっていう風に思いますよね。」
多様化する高齢者の孤立。
社会全体で、その課題に向き合うことが求められています。