2025.03.05【特集|県内最北端のスキー場】9日で営業終了…『村上市ぶどうスキー場』36年の思い出のゲレンデ「私にとっては生活の一部」最後の冬【新潟・村上市】
最大斜度30度の中・上級者に人気のゲレンデ
村上市にあるスキー場が、今シーズンで営業を終了します。36年の思い出がつまったゲレンデで、最後の冬を過ごす従業員や地域の人の思いを取材しました。
県内最北端にある『村上市ぶどうスキー場』。ゲレンデは全長約2.7km、最大斜度30度の中・上級者に人気のゲレンデです。今シーズンは雪不足のため、5日遅れの2024年12月30日にオープンしました。
■村上市から
「待ってました、待ち遠しかったです。シーズン券、毎年買っています。」
■新潟市から
「毎シーズン遊びに来ています。」
■村上市から
「雪が多くて、下越でも滑りごたえのある傾斜が多いので、地形遊びとかもめちゃくちゃおもしろいですね。(スノーボーダーにとったら)天国ですね。」
ぶどうスキー場は、1988年にオープン。
当時は、バブル真っただ中!県内外から大勢のスキーヤーが訪れ、にぎわいました。
スキー場内の食堂で働く菅原恵子さん(77)と渡辺久美子さん(78)。当時の様子を今でも覚えていると言います。
■オープン当初から食堂で働く 菅原恵子さん
「ものすごく混んで並んで、こんなに山の中なのにいろんなスキーヤーが来て、にぎやかで。」
■30年近く食堂で働く 渡辺久美子さん
「トンネルを抜けると、すぐに第1駐車場の大きいのがあるんですよ。そこからずっと並んでここまで歩いてくる。すごかったですね、そのころは。」
しかし、開業から7年後の1995年をピークに利用者数は年々減少。さらに、雪不足やリフトの老朽化・人材の確保が難しい状況から、厳しい経営が続いていました。
運営する村上市は、2024年に大きな決断をしました。
■村上市観光課 田中章穂課長
「赤字の状態が恒常的に毎年繰り返していますので、このまま営業継続するっていうのは非常に困難だと思います。」
今後、営業を継続した場合、リフトを新設する必要がありますが・・・
■村上市観光課 田中章穂課長
「リフトというのは設備投資が非常に大きいものですから、その設備投資をその年に負担したものを利益として回収できるかっていうところ。」
ふもとからゲレンデ中腹へとつながる“第1リフト”が設置されたのは、開業時の1988年。頂上までの“第2リフト”も1990年に新設され、どちらも耐久年数に近いとされる30年以上が経過しています。村上市は設備投資を断念し、営業終了を決めました。
■開業当初からスキー場に通う 赤島清一さん
「あきらめきれないですよ。みんな同じ気持ちだと思います。」
こう話すのは、開業当初からスキー場に通う赤島清一さん(76)。
小・中学生のバスの送迎の仕事をしながら、今シーズンもほぼ毎日滑りに来ているといいます。
■開業当初からスキー場に通う 赤島清一さん
「仕事が朝8時ぐらいで終わりますんで、ここに真っすぐ来てスキーして、それでまた仕事に出るってそういうパターンなんですよ。だから毎日スキーできて楽しいです。」
“ぶどうスキー場の魅力”は、何と言ってもこの〝急斜面〟です。
■オープン当初からスキー場に通う 赤島清一さん
「急斜面の連続が魅力です。スキーはスピード競技じゃないですか。やっぱ快感度が違うんですよ。」
そして、約束はしなくても自然と集まってくる〝スキー仲間〟。
■スキー仲間
「誰かがいるっていう。だから1人で来ても皆さんがいるので、常に楽しく滑らさしてもらっています。」
「冬だけの付き合いだけどね。なんか今シーズンで終わるのが残念。それが1番の残念なところです。冬のお友達ですから。」
「なんかファミリーな感じです。」
「なんか家族みたいね。だから楽しいです。」
「アットホームです。」
赤島さんたちにとって、スキー場は日常生活の一部。そんな場所が失われることになります。
■オープン当初からスキー場に通う 赤島清一さん
「天気のいい日、一番上まで行くと北の方に鳥海山、北東の方に月山。鳥海山・月山・朝日連峰とつづいている。それも見れなくなりますよ。できるものならこのスキー場を、継続していただければという願いなんです。」
ここに来れば『仲間に会える!』みんなこの場所が好きでした。
■オープン当初からスキー場に通う 赤島清一さん
「食堂のおばちゃんたちいるでしょ。色々とおしゃべりすることもできますしね。非常に楽しい1日を過ごすんですけど、それもあとわずかで。来年からはここに来ることもなくなるんで、寂しい面もあります。」
ゲレンデを楽しんだ後の“昼食”は格別です。
地元のお母さんたちがつくった漬け物が大人気。第1リフトを登ったゲレンデ中腹にあるロッジは、利用者不足に伴い2023年で営業を終了。現在は、ふもとのレストランで地域の人たちが食事を提供しています。
■30年近く食堂で働く 渡辺久美子さん
「お客さん来てもわかる人たちばかりだから、会話がすごいんですよ。」
■オープン当初から食堂で働く 菅原恵子さん
「もうお客さんとは友達みたい。ものすごく楽しかったね。お客さんすごく喜んで『出席簿つけるか!』とか言って。」
■30年近く食堂で働く 渡辺久美子さん
「今でもそのお客さんたちがここへ来ると、『出席簿今日つけたよ!』とかみんなで言うの。」
レストランの壁には、常連客からのメッセージが-
「やさしくてあたたかいふんいきが大スキです」
「去年も来ました!!ここがなくなるのかなしいですね…。」
「今までありがとう」
■30年近く食堂で働く 渡辺久美子さん
「高速(道路)ができてしまうと、この地域なんかは本当に置いてきぼりにされるような感じで。だから、ここにスキー場がなくなると、本当にね、誰も来なくなる。」
ぶどうスキー場の営業は、3月9日まで・・・。
たくさんの人を笑顔にしてきたスキー場が、もうまもなく役目を終えることになります。
■30年近く食堂で働く 渡辺久美子さん
「本当に素敵な場所です。思い出がいっぱい。素敵な場所で本当に終わらせたくない。若い人たちに続けてやってもらいたい。」
■オープン当初からスキー場に通う 赤島清一さん
「このぶどうスキー場って、私にとっては生活の一部というか。だからね、もう思う存分滑りたい。うん、それだけです。あと終わりまでね。」