2024.11.12【特集|古町で愛されて80年】人気惣菜店「美谷商店」閉店を決めた夫婦に密着【新潟】
80年の歴史に幕
新潟市の古町で80年続いた惣菜店が、その歴史に幕を閉じました。地元の人たちの心をつかんだのは、愛情がたっぷりつまった手作り弁当です。
10月31日、新潟市古町の一角に行列ができていました。創業80年を誇る〝美谷商店〟の最後の営業日。店を切り盛りするのは、美谷正江さん(80)と夫・保男(81)さんです。
■美谷保男さん
「学生は、昼休みでこれからドーンと(客が)来るけど、まさかこんななるとは思わなかったから。」
名物は、550円の日替わり弁当。1番人気のメニューは『からあげ』です。
■美谷保男さん
「学生さんたちが、いつもこのからあげを喜んで食べて、今まで味も落とさないようにしてきた。美谷さんの味を教えてくれっていう人も多かった。(Q.出来は?)うまくいきましたね。」
出来立てを食べてもらうため、注文を受けてから作るのが“こだわり”です。
■美谷正江さん
「少しでも安く買って、いかにおいしく。安いからいいってわけじゃない、おいしく味付けして的な。」
学生からお年寄りまで、多くの人の胃袋を満たしてきました。
■学生
「毎日ここの弁当を食べていたので、最後のこの日に食べることが凄く嬉しい。学生の身なので、安い値段で提供してくれて感謝しかないです。」
「一人暮らしなので、弁当を作る時間もあまりなくとても助かっていました。和気あいあいと弁当を作っているところが印象的で、自分が疲れているときに笑顔になる素敵な店。」
美谷商店の先代は、正江さんの両親。高校生の時から店を手伝い、その味を守ってきました。支えになったのは、お客さんの笑顔です。
■美谷正江さん
「みんながおいしいご飯食べられるゆうて喜んでくれるから、なおさら励まさなきゃいけないとおもって。」
最終日-
正江さんと保男さんに感謝の気持ちを伝えようと、地元のファンが訪れました。
■地元ファン
「お疲れ様でした。ありがとうございました。」
■美谷正江さん
「こんななって店を閉められるなんて思ってなかった。幸せだった。お客さんが『体の半分は美谷さんだわ』なんて。」
開店から1時間半、約340個の弁当が完売しました。
■美谷正江さん
「ありがとうね。」
惜しまれながら、80年の歴史に幕を閉じました。
翌日-
店の片付けをする2人の姿がありました。
■美谷保男さん
「昔の人がよく言う、立つ鳥跡を濁さずっていうさ、足元を綺麗にしていかないとね。」
歴史を物語る、道具の数々。こちらは、決まった額のおつりを取り出せるそうで・・・
■美谷正江さん
「お客さんがここ来て、40円返すと4のとこ押せばいいし、30円返すと3のところで出てくる。」
創業当時から使う看板も・・・
■美谷保男さん
「親が作ったのだからきれいに磨くと記念になるいいのだけどね。」
この日も、閉店を聞いた常連客が訪れていました。
■常連客
「お世話になりました。残念でたまりませんけど。」
「(Q.何が魅力?)ファンです。手作りで、美谷商店さんご夫妻の人柄ですね。とても寂しい。私にとってもお袋の味がなくなるような気がして。」
閉店を決意したのは2024年9月。体のことを考えてのことでした。
■美谷保男さん
「腰が悪くなってきて、途中で倒れたらお客さんに迷惑をかけるし、そういうのが気になって。これ以上続けられるか心配で。」
■美谷正江さん
「一緒にやめようと。一緒に幕を下ろそうと。」
80年分の思い出がしみこんだ“のれん”をはずします。
■美谷正江さん
「うちらの棺の中に入れてもらおうよ。先代から続いたこの“のれん”。唯一の財産だわ。」
■美谷保男さん
「これ外すことによって、本当の美谷商店が終わりだなという気持ちで。少しは心の中にはもう少しやりたいという気持ちもあるし。こんなこと思うと、いつまでもキリがないからね。」
毎日欠かさず、販売した弁当の数を書き込んできたカレンダー。
■美谷保男さん
「ホッとしましたね。この仕事が大変だったから、とにかく今はホッとしています。」
■美谷保男さん、正江さん
「(Q.やり切った気持ちか寂しさどっちが大きい?)やりきったね。」
■美谷保男さん
「学生さんもそうだし、一般の人もそうだし。ほとんど雨の日も雪の日も通ってくれるから、ただただお客さんに感謝するだけですね。」
■美谷正江さん
「16年前、卒業した子も子供連れて旦那さん連れてきてくれて、しててよかったねって言って。ありがたい。おごることなかれやからね。」
美谷商店の味、そして、ぬくもりは記憶の中で生き続けます。