2024.09.06【特集|来夏の参院選候補者】「刷新」か「実利」か:”公募”巡る思惑とは【新潟】
「刷新」か「実利」か
自民党県連が公募を実施していた、来年夏の参院選新潟選挙区の候補者選びが難航しています。現職の参議院議員の佐藤信秋県連会長と、シドニーオリンピック銀メダリストの中村真衣さんの事実上の一騎打ちとなり、中村さん優勢とみられていますが、難航の背景にある思惑を取材しました。
引退後は、水泳の普及に取り組んできた中村さん。なぜ候補者の公募の中で浮上したのでしょうか。
自民党は2019年の参院選で、現職の塚田一郎参議院議員が野党統一候補の新人・打越さく良さんに敗北。その後、塚田さんが衆議院に転じたため、候補が「空席」となっていました。以来、候補者を探ってきた自民党。そんな中、長岡市が選挙区となる鷲尾英一郎衆院議員が中村さんに注目しました。
3月、県連幹部が都内のホテルで面会。複数の県連幹部によると、この場で中村さんは「新潟のために尽力したい」と話したといいます。水面下で、中村さん擁立に向けた調整に入りました。
■鷲尾英一郎衆院議員
「(名前が挙がっている女性もいるが)それは素晴らしい方が応募してくれた。」
しかし、別の動きも。
一部の県選出国会議員が、佐藤信秋県連会長に接近していたのです。官僚出身の佐藤県連会長は、国土交通省の事務方トップである事務次官を務め、建設業界の支援をバックに参院全国比例選出として国会議員に転身。道路予算などの獲得で新潟に影響力を及ぼしてきたこともあり、国会議員が選挙区での続投を求めた形です。
2人を巡って思惑が錯綜します。
■県連幹部
「裏金問題で自民党が逆風のなか、佐藤さんでは勝てない。若くて知名度のある中村さんで勝負すべきだ。」
■ベテラン県議
「公共工事の予算で、佐藤さんに世話になった恩を忘れるのか。政治未経験の中村さんに何ができるのか。」
裏金問題の逆風の中、若手による『刷新』か、予算獲得という『実利』か。
結論が出ないまま、6月、参院選では県連初となる公募で決着をつけることになりました。政権が行き詰まるなか、透明性をアピールする狙いもありました。
■佐藤信秋県連会長
「オープンでやった方がいいだろう。暗闇の中で、誰かが決まりましたというわけにはいかんだろう。」
複数の県連幹部は佐藤県連会長に対し、公募に応じないよう促していたといいます。現職が新人に負ければ、経歴に傷がつく上、県連内に亀裂が入り次の衆院選に影響が出るとの懸念からです。
しかし、「名誉ある撤退」を佐藤県連会長は拒否。事実上の一騎打ちとなったのです。
県連は、地域・職域あわせて約130支部に意向を問う文書を送付。UXが入手した文書には、候補者名のほか、「県連一任」との選択肢もありました。支部内で議論が難航することを見据えたものです。
公募で、佐藤県連会長は「県財政への国からの支援抜本的強化」を訴えました。
■佐藤信秋県連会長
「新潟に、最後のご奉公をやらせてもらえれば。」
一方、中村さんは元アスリートの経歴を打ち出しました。
■中村真衣さん
「今、逆風の中ではありますが、私自身、自民党の皆様と一緒に戦っていければと。」
そこに突如飛び込んできた岸田総理の総裁選不出馬のニュース。総裁選と連動するかのように、公募でも「刷新」を求める声が多数を占め、中村さん優勢となりました。
知名度のある中村さんに、立憲民主党は警戒感を強めています。年内と言われる総選挙も見据えつつ、来年夏の参院選で立候補を予定する打越さく良さんの知名度を上げる戦略です。
■立憲民主党 西村智奈美県連代表
「(参院選から)1年前の総選挙ということになりますので、おのずと打越予定候補者といろいろな形でともにアピールをしていく。」
6日午後から始まった自民党の選挙対策委員会。この席上で、中村さんか佐藤県連会長か最終決定が下されるはずです。