2025.03.27【特集|東電・原発建設】29年前“全国初”の住民投票で『NO』突きつけ白紙…「旧巻町」は今【新潟】
住民投票で『NO』を突き付けた結果、計画は白紙に
今から29年前、条例に基づく全国初の住民投票が旧巻町で実施されました。東北電力の原発建設に住民が『NO』を突き付けた結果、計画は白紙に。
全国の先駆けになった住民投票は、地域に何を残したのでしょうか。「民意とは何か」を考えました。
新潟市西蒲区。海岸近くに建てられたゲートの先には、東北電力が計画していた『巻原発』の建設予定地があります。
■笹口孝明さん
「右側の方に小さな建物があって、そこには(東北電力の)管理棟がある。」
現地には、今も東北電力の管理事務所があるといいます。
笹口孝明さん。『巻原発』をめぐり1996年8月、条例に基づく全国初の住民投票を実施したときの町長です。東北電力が1971年に計画を発表した『巻原発』。当時、3万人の町は揺れました。それまで慎重姿勢だった町長が推進に転じ、当選。反発した住民が『住民投票を実行する会』を立ち上げたのです。
■笹口孝明さん
「民主主義の原点に立ち返って、巻町の住民のみんなの意思を確認するような作業ができないだろうか。」
当時の町長は-
■佐藤莞爾町長(当時)
「間接民主主義。みなさんに理解をいただきたい。」
■笹口孝明さん
「今の民主主義は議会制民主主義だから、議会に意見を聞けばそれで事足りるという見解か。」
■佐藤莞爾町長(当時)
「事足りるとかそういう問題ではなくて、それが基本じゃないですか。」
住民投票で直接民意をはかるよう求める住民団体に対し、町民代表の町議会や町長に民意があるという町長。
議論は平行線でした。
■佐藤莞爾町長(当時)
「すべてのことを議会にはかり決定しているわけだから、現段階ではすべての問題は住民の代表である議会にはかって・・・。」
■笹口孝明さん
「巻町の主権者は誰ですか、答えていただけますか。」
町長、議会、町民――。
民意はどこにあるのか。今、改めて発言の真意を尋ねました。
■笹口孝明さん
「きわめて重大なことで、ほとんどの住民が大きい関心を持っていることは、住民みんなの意見を聞くべきだと。それが民主主義だと思う。」
その後、町議会選挙で住民投票賛成派が多数派になり、町長選では笹口さんが当選しました。さっそく宣言しました。
■笹口孝明町長(当時)
「住民投票は必ずやります。絶対にやります。」
全国から注目を集めた〝住民投票〟。
賛否両派が激しく争うなか、新聞には賛否両派のチラシが連日織り込まれました。国は住民投票を牽制しました。
■資源エネルギー庁 江崎格長官(当時)
「電源立地の問題は我が国全体のエネルギー需給に非常に関係する。個別の原発立地について住民投票にかけるかどうかは、なじむ性格のものではないのではないか。」
今も根強い『国策論』について、笹口さんは-
■笹口孝明さん
「『国策だから黙れ』と、昔のお代官の言葉ではないが『黙れ』ということ。民主的な論議を停止させて、従わせるというのが『国策だから』との否定につながっている。」
笹口さんは町民向けのメッセージを発表しました。町民は熟慮してきたと強調した上で、投票を呼びかけました。
投票結果は・・・賛成7904票、反対1万2478票。投票率は88.29%に上りました。
■笹口孝明町長(当時)
「約束通り、町有地は(東北電力に)売却しない。町有地を売却しない以上、原発建設は不可能になる。」
2003年、東北電力は計画を正式に撤回しました。巻町は、2005年に新潟市に編入され自治体としてはなくなりましたが、笹口さんは町の将来をみんなで決めることができたといいます。
■笹口孝明さん
「住民一人一人の将来、子や孫の将来を自分たち自身の意思で決めた。」
そして、今回の県民投票条例の動き。再稼働に必要な『地元の同意』は、知事・県議会が判断すべきか、それとも県民も関わるべきか。
今、思うことは-
■笹口孝明さん
「県民一人一人がいろんなことを考えて情報も持っているわけだから、自分たちしか判断能力がないというのは不遜だと思います。」