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2024.10.03【特集|SDGsなこめ油】手間をかけてしぼる“捨てるところがない” 米活用の可能性【新潟】

【特集|SDGsなこめ油】手間をかけてしぼる“捨てるところがない” 米活用の可能性【新潟】
米から生まれた『こめ油』
黄金色に輝く透き通った食用油。米から生まれた『こめ油』です。作っているのは、南魚沼市で米の卸売などをしている吉兆楽(きっちょうらく)です。
訪れてみると、米を保管する倉庫の横にあったのは・・・

■吉兆楽 水野義彦専務
「(Q.ここはどんな場所?)ここは、精米工場から出た米ぬかの油の原油をしぼる圧搾プラントになります。」

こめ油の原料は、精米した後に出る"米ぬか"です。
一般的な製法では、ヘキサンという溶剤を使って"米ぬか"から"油"を取り出していますが、吉兆楽は機械で蒸した米ぬかに強い圧力をかけてしぼり取る〝圧搾法〟を取り入れました。大量生産が難しく、手間がかかるため珍しい製法です。

■吉兆楽 水野義彦専務
「こめ油のマーケットで言うと、全体の3%しかこの方法で作っていない。無添加で作り方がシンプルで、素材そのものを生かせる圧搾方式がいいのではないかと思った。」

吉兆楽では、豪雪地・南魚沼市の豊富な雪資源を使い、米を雪室に貯蔵。冷気を使って一年中、新米に近い鮮度を保っています。その米を精米したときに出る"米ぬか"もまた高い鮮度を保っているため、その活用法を探ってきました。

■吉兆楽 水野義彦専務
「以前は、地元のきのこ業者に"ぬか"を使ってもらっていた。そのきのこ業者が「吉兆楽さんから出る"ぬか"は、とても鮮度が高くてクセがなくて匂いが無い、とてもいい"ぬか"というお褒めを頂いた。新しい何かを作りたいと考えついたのが、こめ油というところですね。」

しぼりとった原油を精製すると、透き通ったこめ油に。精米後24時間以内に搾っているため、雑味や油くささがなく、ドレッシングにも向いているといいます。
そして、最大の特徴は、油を取り出したあとの"しぼりかす"も溶剤が残っているおそれが無いため、食用にできることです。こちらがその『脱脂ぬか』と呼ばれる"しぼりかす"。油を搾る前には粉状だったものが、板状に固まったことが分かります。そのまま食べられるということで、一口いただきました。

■池田藍子記者
「お米の風味がするクッキーみたいな食感ですね。ジャムとかヨーグルトにつけて食べたら、すごくおいしいのでは。」

■吉兆楽 水野義彦専務
「米はもちろん全部使っていますし、そこから出てくる"ぬか"も"油"としてアップサイクルする。副産物として出てくる"脱脂ぬか"もアップサイクルしていく。そうすると、もう捨てるところがまったくないですよね。地元のエネルギーや資源を使っているところがスタートですから、SDGsの視点はずっと持ち続けているし、これからもそうしたいと思っている。」


この『脱脂ぬか』の可能性に注目した研究が始まっています。
発酵食品などに詳しい新潟県立大学の田村朝子教授は、『脱脂ぬか』を原料にしたパンの試作に取り組んでいます。

■新潟県立大学 田村朝子教授
「米ぬかが、非常にたくさん捨てられているという現状がある。(脱脂ぬかは)食物繊維もたっぷりですし、鉄分などもたくさん入っているものを捨てるんではなくて、もう一度お米に戻して食べられないかなというのが最初のきっかけです。」

田村教授によると、国内で米を精米した後に出る"米ぬか"は、毎年約100万t。その半分ほどは、こめ油や飼料に使われていますが、残りは廃棄されている可能性があるといいます。

新潟県立大学では、今年の春から吉兆楽の『脱脂ぬか』を使って、活用法の研究を開始。水分量などを調整し、米粉と脱脂ぬかを7対3で混ぜたパンを作りました。

■新潟県立大学 田村朝子教授
「脱脂ぬか自体が"きな粉"みたいで、すこし香ばしくておいしいので、お米の淡白な味にプラスアルファで香ばしい味がプラスされますから、パンにしたときにもおいしいものができたと思っています。」

米粉のみで作ったパンとくらべると、少し脱脂ぬかのいろみが加わっているのが分かります。『脱脂ぬか』は栄養素が豊富で、米粉にはないビタミンEやアミノ酸が含まれています。また、小麦粉アレルギーやグルテンフリーにも対応できる、新たな食材となる可能性があるといいます。
田村教授は今後、さらに『脱脂ぬか』の割合を増やしたパンや、パン以外の製品にも活用の可能性を見出しています。

■新潟県立大学 田村朝子教授
「米粉を使ったお菓子はたくさんありますが、そこに添加すれば栄養もプラスされておいしいものがいろいろできるんじゃないかなと思っています。」

丁寧に油を搾り出し、そのしぼりかすで食の可能性をひらく。新潟を代表する農産品〝米の魅力〟を、余すところなく活用する動きが始まっています。
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