2023.11.01【老舗】親子で守る地域唯一のスーパー 19年前の中越地震・震央の街で【新潟】
19年前に倒壊した安田屋 震災を乗り越えて
10月で2004年に発生した中越地震から19年が経ちました。その震災の震央の地となった長岡市川口で60年以上続くスーパーマーケットがあります。地域に支えられながら、欠かせない店として親子で守り続けています。
■買い物客
「やっぱり傍がいいなと思って、ここ」
「なくてはならない存在ですよね」
地域密着で住民の生活を支えてきたスーパー。そこには、苦難を乗り越えてきた力強さがありました。
JR越後川口駅から歩いて3分。長岡市・旧川口町で唯一のスーパーマーケット「安田屋(あんたや)」。
3代目の山森瑞江さんは、先代の母・チウ子さんの跡を継ぎ店を守ってきました。
■山森瑞江さん
「仕事をするのが好き。この仕事をするのが好きだった。自分で選んで売ったものが、お客さんに喜んでもらえるということをすぐに感じられる。そういうのが自分に合っている仕事だったからかなと思います。」
安田屋は、昭和31年創業。食品類から生花、日用品まで、生活に関わるものを取りそろえています。
中でも自慢は、毎日40種類以上並ぶ果物。朝、市場で味を確認し厳選して仕入れるそうです。
■山森瑞江さん
「熊本産の”ひのあけぼの”というブランドみかんなんですけど、糖度がすごく高くて今一番おいしい。果物買っておいしくない
とお客さんが『悔しい』って。損した気分になるというから、そうさせないように味をみられるものは味をみて、お客さんを
裏切らないような品物をそろえるように頑張っている。」
工夫は売り方にも。小分けにして販売しているものが目立ちます。
■山森瑞江さん
「ぜいたく品じゃないですか。買わなくても食べなくてもよいものだけど食べたいと思うお客さんの気持ちを大事にしたい。」
新潟県の特産の「越の雫」というイチジクも、4個入りで1パックになっているものを、2個に。500円のお金出すよりも、280円の2個でいいと言って買っていく。お客さんの負担がかからないような売り場づくりを心掛けているといいます。
全てお客様ファースト。その思いを強めたのは、19年前の出来事でした。
2004年10月23日に発生した「中越地震」。長岡市・旧川口町は震度7を観測。安田屋の店舗は全壊しました。
■山森瑞江さん
「店の外に自動販売機が4台と電話ボックスが1つあったところに、ひさしが乗って何とかべちゃっと崩れずに保っていた状態。こうやって頑張っているのが、あの時は考えられなかった。もう終わりになるのかなと思っていた」
震災から3日後、無事だった倉庫で営業することを決意。無料で食料や日用品を提供しました。
■山森瑞江さん
「もうなんといっても、地域の人たち、お客さんから『店を続けてね』という言葉が毎日のようにあったので・・なんといってもそれですよね」
店を手伝う息子の健也さん(27)は当時のことを鮮明に覚えています。
■息子・健也さん
「小学2年生で、役場の広場に避難していた。母は地震直後に、近くにいる従業員と一緒に店に入って取れるものを取ってきていたので、その時点で『いかないでよ。危ないよ』みたいな感じで止めたと思う。
」
■山森瑞江さん
「止めてた。余震がすごかったので、『行くなて危ねっけ』と怒鳴って半泣きしながら止めていたのを覚えている」
地域で唯一のスーパーをつぶすわけにはいかない・・・震災の翌年、新しい店舗で営業をスタートさせました。
■山森瑞江さん
「私たち従業員が入り口で『いらっしゃいませ』と出迎えたら、常連のおばあちゃんたちが手を握って『いい店作ってくれて
ありがとうね』と言ってくれた。涙が出てすごくうれしかった。今も来てくれるお年寄りは『お前さんのところがなきゃ俺たち買い物行くとこねんだっけ、頑張ってくれや』と今でも言ってくれる」
大学卒業後、一度東京で就職した健也さん。新型コロナをきっかけに地元へ戻り、去年から店を手伝っています。
■息子・健也さん
「仕事に対しての愚痴や『お店がやばいかも』と電話で言われた。そういうことを母親から聞いたことがほとんどなかったから自分の番かな、帰るタイミングなのかなと思い決めた」
健也さんが始めた、新たな取り組みがあります。
■息子・健也さん
「他の都道府県の変わったものを置いたり、普通のスーパーで買えないようなお菓子やスイーツ、アイスなどを置いている。普段来てくれるお年寄りの方が買ってくれるようなものを選んで仕入れるようにしている」
意見箱を置いて、お客さんの声を参考に、商品を仕入れているそうです。
■息子・健也さん
「和歌山のグリーンソフトというアイスが和歌山県では有名でみんなが食べていて、テレビにも取り上げられている。お店に仕入れてほしいという要望があって探して入れた。結構お客さんと話すことが多いので、『これ美味しかったよ』という声を頂くと、すごくうれしい」
震災後、旧川口町の人口は3分の1まで減少し高齢化も進んでいます。安田屋の経営も厳しさを増しています。
■山森瑞江さん
「店を続けていくのは難しい状況。でもここの地に店がなくなったら困るお客さんがいっぱいいると思うし、水害とか地震とか災害があった時にこういう食品スーパーがなければ地域を守っていけない。週に1度でも自分たちの老後のために、買い物に行こうかという気持ちになってくれるととてもありがたい」
母と息子、そして 店を守るパートナーとして力を合わせて歩んでいきます。
■息子・健也さん
「今いるお客様にもっと、良いお店だと思ってもらうこともそうだし新しい所からお客様に来ていただけるように、お店作りをやっていきたいなと思います」
■山森瑞江さん
「立派になりましたね。彼は彼なりに、私の目線じゃないところで色々なことを考えながらやっているし、これからもやっていってくれると思うので。けんかして私のことをむかつくと思うこともあるかもしれないけれど仲良く。第一は店を続けていけることなので、この子と連携しながらこの地域で生き残って、ずっと商いができるように頑張りたい」