2025.01.07【特集|能登半島地震1年①】自宅が液状化被害…半年以上待っても工事始まらず、なぜ? 建築業者も苦悩【新潟】
1年経っても…進まない住宅復旧 なぜ?
能登半島地震から1年を迎えた被災地の今を シリーズでお伝えします。
1回目は、自宅が液状化の被害を受けた被災者についてです。
復旧工事が進まない現状を取材すると、そこには工事を請け負う建築会社の苦悩がありました。
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■田中洋子さん
「昔から作るようにしていたけれど、意欲が沸かない、作る意欲が。だからあんこも焦がしちゃって。」
新潟市西区に住む田中洋子さん。液状化現象の被害を受けた自宅で、新年を迎えました。
■田中洋子さん
「1年は早かったですね、あっという間にあれよ、あれよという間に1年経っちゃいましたね。」
能登半島地震で、新潟市西区や江南区を中心に液状化現象の被害が拡大。住宅の被害は1万7000棟以上にのぼり、被災者の生活再建は道半ばです。
■田中洋子さん
「楽しく元気に自由に生きております。どうぞ孫や子どもをお願いいたします。もうすぐ行きますので待ってて下さい。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏...」
田中さんは14年前に夫が他界し、一人暮らしです。
■田中洋子さん
「この写真が一番好きなんですよ。まだお互いに若かったですわね。 40代でしたから、夫は50代。(記者:ご主人のことを愛していたんですね)あれですよ、喧嘩ばかりしてましたけどね。私はこの家が朽ちる時に私も一緒に朽ちたい、だから他に移る気持ちはございません。思い出の土地ですもんね、2人で作った家ですから。」
夫と暮らした築50年の自宅。液状化で家の中心部が盛り上がり、放射状に傾きました。
■田中洋子さん
「なんとなく斜めになってるのは、感覚的に頭も痛いですし、肩も痛いですし、体の調子がとても悪い。やはり気分も浮き沈みがあり、何となく沈んでしまう時がある。」
「ここが液状化になりましたからね。濁り水が川のようにダーと泥水流れてすごかった。」
液状化は、地震の揺れで地下水や砂が地表に噴き出す現象で、建物が傾いたり沈んだりする原因となります。
■田中洋子さん
「1日でも早く家を直してほしい。雪が降る前にそれが一番です。」
被害判定は半壊。家全体の傾き向きを直すには、1000万円以上かかるとされ諦めました。
茶の間など、主な生活空間となる3部屋分の床を約100万円をかけて直す予定で、補助金の申請を終えましたが、未だ工事が始まりません。
■田中洋子さん
「5月24日に(補助金の)許可出ているのに、まだ工事に入らないってどういうことですか!? 2~3日前も業者に電話したけど通じない。」
田中さんが工事を依頼している『アサツマ建築店』。
朝妻勝人さん、新潟市建築組合連合会の副会長です。修復工事について…
■アサツマ建築店 朝妻勝人さん
「仕事してもお金が入ってこない、それが一番。(記者:どこからお金が入ってこない?)新潟市から。」
工事が終わると、業者が新潟市に報告書を提出。受理されると、1カ月半後に市が業者に入金します。報告書の複雑さが時間がかかる要因の一つだと言います。
■アサツマ建築店 朝妻勝人さん
「工事中に写真を色々撮っていて、編集をして、書類を作って、それを持って区役所の窓口に出向いて、2~3時間待ってやっと受付をして。だいたい1回で通らない、写真が不備だとか。」
報告書の受け付けだけで数週間、受理されるまでに1カ月。さらに支払いは、その1カ月半後だと言います。入金までに時間がかかると、建築業者は運転資金が不足するため、補助金による工事を避けると言います。
■アサツマ建築店 朝妻勝人さん
「前受け金もしくは中間金で、せめて半分でももらえばスムーズにいくし工事をやる人も増える。」
復旧工事を引き受けるのは、朝妻さんの組合・副会長としての責任感。この時、70もの案件を抱えていました。
自宅で茶道教室を開いている田中さん。 雨漏りすることがあった茶室を先週修理することができました。
■田中洋子さん
「凄く嬉しかった。ここ使えないって言ったら、私の右腕取られたみたいなものですから。私のライフワークはお茶ですから。」
一方で、自宅の傾きを直す工事は『今年中』と言われていて、開始の時期は見通せていません。
■田中洋子さん
「家の中は何も手がついてないから、これからですよね。1・2・3月寒いから、今度梅雨までに終わるんでしょうかねってすごく心配してます。梅雨までには終わらないと困る。」