2023.05.26いちご戦国時代へ…「越後姫」を越えろ!県産いちご新品種の開発・研究の最前線
県のブランドイチゴ「越後姫」を超える品種を
芳醇な香りと甘さで人気の県産イチゴと言えば「越後姫」ですが、県はこの「越後姫」を超える新品種の開発に取り組んでいます。試行錯誤を繰り返す、研究の最前線を取材しました。
聖籠町にある県農業総合研究所園芸研究センターではハウスで新品種の候補になるイチゴを栽培しています。試食してみると、みずみずしさと甘さがあり、酸味は控えめ。「越後姫」っぽさがありました。
■県園芸研究センター 佐藤翔一主任研究員
「片親に越後姫を持つ系統になるので越後姫の特徴が表れていても不思議ではない。」
一方、別の株のイチゴは強い酸味が。それぞれ味わいが全く違います。
■県園芸研究センター 佐藤翔一主任研究員
「甘みが少なくて酸味が強いと話していたが、そういった特徴があるとケーキ用、加工用のいちごに適している。用途によって求められる特徴も違う。」
主任研究員の佐藤翔一さんは候補のイチゴを食べたり、葉の形を見たりして優れた株だけを残します。
選抜された株の種を育てて、品種開発の交配に使います。
■県園芸研究センター 佐藤翔一主任研究員
「イチゴの花が咲く前に花粉がつかないようにおしべをとり、袋をかけて他のいちごの花粉がつかないようにします。交配したい別の系統の花を持ってきて花粉をつけることでいちごの交配をします。」
選んだのは硬くて輸送しやすく、味がいい反面、収穫量が少ないという株。そこで収穫量が多い株と交配させ弱点を克服した品種の開発を目指しています。
新たな特徴を持って生まれたイチゴを評価し、形や重さ、糖度、酸味などを記録。それぞれの株の特徴を見きわめて、次の交配に生かします。
全国の産地が販売を競うイチゴ。日本一の生産量を誇る栃木県の調査によると、品種別の作付け面積は、栃木のとちおとめ、福岡のあまおうがトップを争います。県別の作付け面積は栃木、福岡、長崎、茨城の順で新潟はベスト10に入っていない状況です。
越後姫が品種登録されたのは、27年前の1996年。その後、県が新たに品種登録できたのは1種類のみです。園芸研究センターは新品種の開発に向け、試行錯誤を続けています。
■県園芸研究センター 佐藤翔一主任研究員
「今、イチゴ戦国時代なんて言われて全国各地で色んな品種が出ているが、私個人としても他県に負けないようなすばらしい品種を育成できればいい。」
2016年に県庁に入り、農業技術の指導などを担当した佐藤さん。先月、園芸研究センターに配属され、イチゴの品種開発を任されました。
品種開発の難しさを知る、上司の竹田宏行さん。越後姫の開発には、6年かかりました。
■県園芸研究センター 竹田宏行科長
「狙って交配しても望んだものができる確率は非常に低いという現実がある。新品種をできるだけ早く出したいと思っているがそう簡単ではないと感じている。」
県が目指す新品種の特徴については。
■県園芸研究センター 竹田宏行科長
「越後姫は非常に評判がいい品種。輸送性が悪い、うどんこ病にかかりやすい弱点も抱えている、それらを補える品種ができたらいい。」
糖度の高さや収穫量の多さに加え新潟の厳しい寒さに耐えられる特徴を備えた品種は少ないため、他の自治体に比べ品種開発のハードルは高いといいます。
■県農業総務課 瀧澤明洋政策室長
「私どもとしては越後姫は奇跡の品種だと思っているので、すべての面で上回らなくても求められる品質、時期など消費者ニーズを満たす品種開発を進めていきたい。」
県は今年3月、県産の農林水産物でブランド化を図る「県推進ブランド品目」に、越後姫や新潟米、錦鯉など8つの品目を選びました。新品種の開発だけでなく、越後姫の売り込みも強化する方針です。
■花角知事
「新潟県のイチゴみたいな疑問符がつくような反応がまだまだ首都圏では多いのではないかと想像するが、ここに越後姫ありということを認識してもらえるように発信していきたい。」
新潟の新品種がイチゴ戦国時代に名乗りを上げられるか…取り組みは続きます。