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2025.09.23【特集】〝新〟風力発電:実証実験開始から約1年-課題解決に新たな一手【新潟】

【特集】〝新〟風力発電:実証実験開始から約1年-課題解決に新たな一手【新潟】
パンタレイが開発を進める新しい風力発電
長岡市の寺泊水族博物館。屋上に設置されていたのは、羽の部分が円柱になった風力発電機です。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「黒色の円柱の部分と、その後ろにあるリングの中で発生する渦の力を使って回る風車です。リングに対して巻き付くように渦が三次元的に出てくる。」

円柱の後ろにリングを設置することで風が通過する際に渦が発生。その渦が推進力になって円柱状の羽を動かします。円柱状の羽は形がシンプルで作りやすく、軽い素材を使用することが可能です。従来の風力発電と比べ、ゆっくりと回るため騒音の減少や安全性の向上が見込まれ、これまで設置できなかった箇所でも発電できるのではと注目を集めています。

開発に挑むのは、大学内ベンチャー企業『パンタレイ』。2021年に長岡技術科学大学に設立され、佐藤靖徳客員准教授が代表を務めます。円柱とリングを使って回る仕組みを使った風力発電は、日本など世界5カ国で特許を取得しています。2024年9月には実用性を確認するための実証実験をスタート。屋上に試作機を設置しました。

実験開始から9カ月が経過した6月。
見比べてみると設置時にはなかったものが-

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「風向きを変える集風体というものです。風車自体は首を振らずに一方向を向いているその分横からきた風を風車に当たるように風を取り込むスリットをいれた構造になっている。」

より効果を高めて挑んだ実証実験の成果は-

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「寺泊は30m/s近い風が吹く。冬場には強い風が吹くところ。その中で事故や故障がなく1年近く稼働ができているのは大きな成果。」

強調したのは「稼働し続けたこと」。佐藤代表は初めての屋外での実証実験で、冬場の強風を乗り越えたことで安全性の高さを証明できたと手ごたえを感じていました。


その一方で-

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「本来我々が予測していたような発電量までには到達していないという事がわかっています。」

課題として見つかったのは〝発電量〟。
目標としていた10分の1程度だったといいます。理由としてあげたのは発電する仕組み。試作機では風車が1回まわると発電機も1回まわる仕組みでしたが、それでは足りないといいます。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「我々の風車自体がゆっくり回る風車なので、発電機の部分はある程度の回転数がないと発電しない。」

さらに、風車自体もより電力を生み出す構造に改良する必要があることがわかりました。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「何を解決すればいいか分かったという前向きなものかなと捉えている。」


実証実験開始から約1年がたった9月12日-
大学のラボでは新しい試作機が完成していました。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「この風車がバルーンの素材でできている。いわゆる風船ですね。空気で膨らませるので大きい2m級のものでも非常に簡単に作れると、風車が大きくなればその分発電量も大きくなる。」

課題解決のために選んだ素材はなんと〝風船〟。
軽量化によって大きな風車を作ることが可能になり、寺泊に設置した試作機より1.3倍の大きさにしました。さらに組み立てや持ち運びも簡単に。風船を素材にした乗り物を開発している研究グループを見つけ、実際に指導を受けながら風船風車の開発に至りました。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「バルーンの試作ができたり、商品提供している会社にお願いして作ってもらった。風車やこういう形状で作るのは初めてだったので、いくつか段階を踏んで試作を重ねた。」

さらに、風車の後ろには-

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「今回の試作ではこの風車の回転数を増速させて、具体的には風車の回転数を10倍回転数を増やして発電機に伝えている。」

風車が1回転するごとに、発電機との間に設置された増速機が10回転します。発電機に必要な回転数を確保し、1回転あたりの発電量を増やすことが可能になりました。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「ようやく製品に近い段階に近づいている。寺泊同様、外に出してデータをとって次の改善のポイントを見つけていきたい。」

研究開発とともに進めているのが、本格的な製品化や量産化に向けて協力できる企業を探すことです。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「パンタレイという会社だけだと、なかなか製品を作る事業化していくことは難しいと感じている。いかに協力していただける方を作っていくか、これが大学発ベンチャーの重要なところだと思う。」

将来的に開発した技術をもとに、複数の企業と協業して様々な形で製品化することを目指すパンタレイ。多くの企業などとコンタクトを取る中で、会社として転機になりうる事業への参加が決定しました。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「ムーンショット事業。ムーンショットというものは実現困難なように見えるけども、そういう目標に対して挑戦的に国家の力を集結させる。」

未来を見据えた挑戦的な研究開発を進めるために創設された国家プロジェクト『ムーンショット型研究開発制度』。
「2050年までに地球環境再生に向けた持続可能な資源循環の実現」を目標に、DACと呼ばれる大気中の二酸化炭素を直接回収するシステムを作る事業に参加します。

パンタレイが担うのは、電力を使わず風を集める技術の開発です。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「従来は送風ファンにかなり大量の風を当てながら、そのファンを動かすのは電力。火力発電とかそういったものに由来する電気を使う。そうではなくて自然風をうまく使って回収する技術を作っている。」

風力発電を開発する過程で培われた風を集める技術が評価され、公募に参加した10チームの中で1チームだけが採択。最大5年間で2.5億円の開発費用が入るだけでなく、研究開発の能力を示し協業する仲間を増やすチャンスでもあります。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「ムーンショットがきっかけとなって、横のつながりを作っていけるととてもいい。」

研究開発した技術をいかに社会で応用させていくかが、大学から生まれた企業としての使命だと話す佐藤さん。風力発電もムーンショットも、とにかく結果を出していきたいと意気込みます。

■パンタレイ 佐藤靖徳代表
「まず結果を出していくことが大学の成果を、大学の技術を世の中に実装していくことの動きやムーブメントを出せるきっかけになる。なんとか形にして会社を続けていきたい。」
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