2025.11.25【特集】ギリシャ出身の芸術家の制作現場に密着:初のガラス細工にも挑戦し、新潟の自然を表現【新潟】
ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
ギリシャ出身の芸術家が新潟市内に2カ月半滞在し、アート制作に挑戦しています。ガラスや銅器など様々な素材を使い、日本や新潟の自然を表現する制作現場に密着しました。
キラキラと輝く複雑な形をした〝ガラス〟。針金で天井に吊るされています。
ギリシャ出身の芸術家 ダナイ・コツァキさんの作品です。ダナイさんは9月から新潟市に滞在し、ガラスアートや彫刻・植物を使ったバイオアートなどを組み合わせた作品制作に取り組んでいます。
ダナイさんが参加したのは『アーティスト・イン・レジデンス』という一定期間滞在し、交流を通して作品制作やそれに伴うリサーチ活動などを行うプログラム。新潟市では国内外から芸術家を募集し、2018年から年8組ずつ・これまでに50人以上が参加しました。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「子どものころからずっと日本に来たいと思っていました。アーティスト・イン・レジデンスは、人とのつながりや日本の芸術の核心に触れることができるから。」
日本文化が好きだというダナイさん。国内の活動拠点を探すなかで、新潟市のプログラムへの応募を決めたといいます。
作品制作に協力するのは、新潟市秋葉区にあるガラス工房『秋葉硝子』。
ダナイさんは、これまでにもガラスの容器を作品に用いてきましたが、ガラス細工に挑戦するのは今回が初めてだといいます。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「大学時代からガラス作品を作りたいと思っていましたが、ギリシャではガラス工房を見つける機会がありませんでした。ついにほぼ人生をかけて夢見てきたガラス作品をつくる機会に巡り合えたのです。」
10月上旬から週に1回ほど、工房を訪れ制作を進めてきました。
この日取り組むのは、竹とガラスを組み合わせる作品です。竹の中に熱したガラスを入れて息を吹き入れていきます。形を保つためには、すぐに風をかけてガラスの温度を下げる必要があり、職人と協力して作業を進めます。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「ガラスを吹くのは簡単。難しいのはパイプをガラスの真ん中にして、ガラスが崩れないようにすること。」
職人らの協力を得て、作品づくりに挑戦して約3週間-
吹きガラスの工程すべてを自分一人でできるまで上達していました。
■秋葉硝子 照井康一代表
「彼女はやっぱり覚えが早い。最初にここでやったときも、すぐ(ガラスが)吹けた。すごい。」
■秋葉硝子 長谷川洋平さん
「おもしろいですね。いままでいつもやっていないような作業とか。」
ダナイさんの作品のコンセプトは、生態系や生命といった『自然』です。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「私は生態系、とくに小さなスケールの生態系をコンセプトに制作活動をしている。だからガラスを素材に選んだ。ガラスは小さな風景を内包できるから。」
ヨーロッパの東南端に位置するギリシャ共和国。
幼少のころから芸術に興味があったダナイさんは、美術大学に進学し彫刻に関する分野を専攻しました。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「5歳のころから記憶にある限り、ずっと絵を描くことや作品をつくることを楽しんでいました。」
卒業後は大きな作品をつくることにも挑戦し、ギリシャで彫刻の分野で賞を受賞。その後、奨学金を受けながら1年間インドネシアへの留学やオーストラリアの展覧会にも参加するなど、様々な国で制作活動に取り組んできました。
今回のテーマは『呼吸』。
作品全体で生きることや自然を表現するといいます。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「ここでもガラスが呼吸から形成されています。ガラスの中に私の息が封じ込められているのです。そして、そのガラスは同じく呼吸する植物を宿します。これは『Breathscapes=呼吸する風景』なのです。」
これまでも植物や水・ガラスをつかって生態系について表現した作品を制作してきたダナイさん。今回の滞在で、新潟の自然からも着想を得ているといいます。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「本当に気に入っています。水辺の素晴らしい自然、とても良い自然環境です。私のプロジェクトも自然をテーマにしているので、多くのインスピレーションを得ています。」
新潟市芸術創造村・国際青少年センター「ゆいぽーと」。
ダナイさんはここに滞在し、作品づくりに没頭する日々。その合間には日本食の料理にも挑戦したといいます。
11月18日、制作期間のゴールである展示会に向け最終調整に入っていました。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「全体的なアイデアは庭をつくること。庭には水・植物・コケなど色々な要素がある。そういった小さな要素を眺められる庭にしたい。」
今回、ダナイさんはガラス細工のほかに、陶芸や銅器の制作にも挑戦。
期間中に制作してきた作品に、水や植物を組み合わせていきます。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「リラックスして集中し、細部まで観察してほしいです。ここで時間が止まるような気持ちで、全体をひとつのアートとして体験してほしい。」
いよいよ始まった展示会。
新潟で制作した87日間の集大成です。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「予想をはるかに超える出来栄えだと感じている。ここ(新潟)にきて、芸術創作が上達したと感じます。どのようにしたら内部に自然が息づくような作品を創造できるのか、より深く理解できました。」
■来場者 新潟市から
「初めて見るタイプ、素敵ですね。落ち着きとか静寂とか、そういった感情(をもった)。」
新潟で過ごした2カ月半―
人とのつながりを大切にしながら、今後はギリシャに戻り芸術家としてさらに腕を磨いていきます。
■ギリシャ出身 ダナイ・コツァキさん(33)
「生命と向き合い続け、植物や生物が息づく〝生ける作品〟を創造したい。制作活動をより深めていきたい。」