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2025年12月03日(水)本日の番組表

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2025.12.03【特集】主食米との価格差・・・日本酒業界が抱えるジレンマ、コメ生産者の本音は【新潟】

【特集】主食米との価格差・・・日本酒業界が抱えるジレンマ、コメ生産者の本音は【新潟】
日本酒業界が抱えるジレンマを取材
新潟が誇る『日本酒造り』が、思わぬ苦境に立たされています。背景にあるのは、原材料である〝コメの価格高騰〟です。その影響は日本酒の値上がりだけでなく、酒米の生産量減少という形でもあらわれていました。

日本酒業界が抱えるジレンマを取材しました。

1899年創業の高野酒造。代表銘柄の『越路吹雪』や『白露』など、年間36万ℓの日本酒を製造しています。コメ価格高騰の影響で酒米の調達費が上がったため、年明けに2~3割ほどの値上げを予定しています。

じつは、コメをめぐって価格高騰だけでなく、もうひとつの問題に直面していました。

■高野酒造 髙野英之社長
「(来年産は)実際調達できるのか、価格がどうなるのか、両方含めて不透明。」

酒米の仕入れが減るかもしれないという事態-
背景にあるのは、高騰した主食用米との価格差です。

■県酒造組合 坂井康一専務理事
「一般米よりも高い水準で安定的に契約をしていたんですが、昨年からの主食用米の高騰で今それが逆転している状況。」

日本酒造りに適した『酒造好適米』は、生産方法の違いや需要の関係で主食用米よりも高い値段で取引されていました。農林水産省が発表したデータによると、県を代表する酒造好適米『五百万石』の値段は、10年以上 主食用米の価格を上回っていました。

しかし、2024年産は主食用米が高騰し価格が逆転-
生産者としては、『主食用米』を作ったほうが手取りが増える構造になりました。さらなる減少が心配される酒造好適米。実際、高野酒造には生産者から来年産の酒造好適米の生産量を減らすとの連絡が来ていました。

■高野酒造 渡邉淳総務部長
「今季135俵購入していたのが、来季は62俵と半分以下になります。生産の計画の見直しを今後せざるを得なくなる。」

どの銘柄を、どの程度造れるのか-
コメの量に合わせた生産計画の見直しを進めています。

■高野酒造 髙野英之社長
「農家さんから出てこないとなると、もう補塡(ほてん)する場所がない。その原料をうたい文句にしていた商品は今後どうするか、造るのやめるとかそういうところまで影響が出てくると思う。」


日本酒造りに深刻な影響を与えかねない、コメの供給問題。
先週、県やJAなどの関係者による県農業再生協議会が、来年産のコメの生産目標を話し合いました。酒米については目標の作付面積を示し、今年の実績より100ha増やす2400haとしました。

■県農業再生協議会 石山章会長
「生産者はどちらかというと、主食用米意向が強い。農家の方々に理解をいただいて、実需者(酒造会社)が必要とするコメを生産していただけるように、再生協議会でも努めていく。」


しかし、生産者の本音は-

■花水農産 宮内賢一さん
「本音としてみれば高い方を作りたいですよ、みんな。」

十日町市でコシヒカリなどを生産する花水農産の宮内賢一さん。この会社では、地元の酒蔵に卸す五百万石を約6t生産しています。酒蔵とは約30年の付き合いということもあり、来年産も生産量に変更はないとのことですが、経営的な判断から『主食用米への転換』は理解できると話します。

■花水農産 宮内賢一さん
「去年くらいから単価を少し上げてくれという話はしているが、なかなか上がらない。農家はメリットがない。メリットを価格で出すのか、他の部分で出すのか、どういうメリットを出させるか。」

県内で生産する酒造好適米の価格の基準となる『五百万石』の価格は、毎年夏に酒造組合とJAが交渉して仮の価格を設定。11~12月にかけて正式な価格を決定します。

県酒造組合の坂井康一専務理事は、現在行われている2025年産の交渉は例年と違うと話します。

■県酒造組合 坂井康一専務理事
「主食用米が上がっているので、他の県でも酒造好適米も同様に上げざるを得ない。我々はなるべく大きな上がり幅でないようにお願いをしたい。」

去年の価格が1万6630円。今夏に設定した仮価格は2万円台中盤。なるべく主食用米の値段に近づけたいJAと、仮価格のままで正式決定したい酒造組合との間で交渉が続いています。

酒造組合には値上げに応じられない事情があります。

■県酒造組合 坂井康一専務理事
「消費自体は1973年をピークにして、ずっと落ちてきています。諸物価が高騰している中で、ますます家計の財布のひもも固くなって嗜好(しこう)品であるお酒の消費が一段と落ち込んでいます。」

酒造りの現場では、コメだけでなく様々な生産コストも上がっていますが、価格転嫁すれば消費者の〝日本酒離れ〟を招きかねません。

一方で、酒米の価格を抑え続ければ、生産者の〝酒米離れ〟がさらに進むという状況・・・。苦しい対応を迫られています。

■県酒造組合 坂井康一専務理事
「我々にとってはどちらに転んでも厳しい。あとで振り返ると『ここがターニングポイントだった』というような厳しい1年だったと考えられるかもしれない。」

県は酒蔵への支援策として、県産の酒造好適米の購入費用の一部補助を打ち出し、9月県議会で可決されました。来年産の生産量が見通せないなか、酒造組合は来年度以降の支援継続と拡大を求めるとともに、輸出強化など消費量を増やすための取り組みを進めたいと話します。

■県酒造組合 坂井康一専務理事
「日本酒は新潟県にとって看板商品。何とか関係業界とも色々協力をいただきながら、消費喚起も手を尽くしながら局面を打開していきたい。」

高野酒造でも支援に頼るだけではない営業努力が必要と考え、酒蔵見学や直接消費者に日本酒を売る『直販』の比率を上げるなど取り組みを進めています。

■高野酒造 髙野英之社長
「今まで通りお酒を造ってただ市場に出していくだけでは、なかなか厳しいというのは業界全体にも言えると思う。今までやってこなかったようなところにビジネスの軸を移すことが必要になると思う。」
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