2025.12.17【特集|令和の米騒動】高止まりつづく「コメ価格」今後の見通しは:シリーズ新潟2025③【新潟】
〝コメ〟を巡る激動の1年を振り返る
新潟の2025年を振り返るシリーズ企画。3回目は、令和の米騒動とも言われた〝コメ〟を巡る激動の1年を振り返ります。
コメの価格高騰を受け、政府は備蓄米を放出しましたが依然5kg・4000円を超える高止まりの状態が続いています。
日本人の主食である〝コメ〟。
2025年はコメを取り巻く環境が大きく変化した1年でした。『令和の米騒動』とも言われ、全国各地でコメの価格が高騰。
2月、三条市内のスーパーでも県産コシヒカリの価格が5kg・4000円を超えていました。
■マルセン 太田雅悠専務
「主食となるようなコメがかなり買いづらい状況は、我々にとってもかなり死活問題につながっていく。」
政府は保有する備蓄米の放出を実施、コメの流通を円滑化する目的での放出は初めてです。
■江藤拓農水大臣(当時)
「正常な状態じゃないものを正常な状態に戻すために、備蓄米を放出する。」
4月下旬、県内でも田植えが始まりました。8月中の収穫が可能な極早生の『葉月みのり』です。魚沼市のコメ農家・関隆さん。コメが高騰するなか、取引業者からは過去に例がないほど引き合いが増えたと話します。
■専業農家 関隆さん
「県外の業者があまりにも高い値段を提案してきたから『そんな高い値段で買ってはだめ』と下げさせた。笑い話のようなことが現実に起きている。」
JA全農県本部は2025年産米の仮渡金について、主食用米の各銘柄で一律3000円の追加払いを決め、一般コシヒカリは3万円から3万3000円となりました。その理由について、民間との集荷競争が続いていることや他県の状況を踏まえたことなどを挙げています。
5月、コメをめぐる不適切な発言を受け江藤農水大臣が辞め、後任の小泉進次郎農水大臣は『コメ担当大臣』と称し、随意契約による備蓄米の放出を進めました。
■小泉進次郎農水大臣(当時)
「率直に僕はどれを食べてもおいしく頂けます。」
小泉農水大臣が試食したのは2021年産の備蓄米、いわゆる『古古古米』です。
■池川泰介記者
「PLANT5の店舗前です。備蓄米を求めて開店前ですが、多くの人が列を作っています。」
新潟市内の量販店でも『古古古米』が5kg・1814円で販売、開店から1時間ほどで完売しました。
■購入客
「安くてうれしい。(Q.味に心配は?)別に・・・よく研げばいいとかテレビでやっているので心配ない。」
7月、厳しい暑さに加え雨が降らず、県内の一部の田んぼでは深刻な水不足に…。
ダムの水が不足し、市民に節水が呼びかけられた上越市。雨水に頼る天水田では、イネの大部分が枯れる被害も。一部は家畜のエサにまわすことを決めました。
■グリーンファーム清里 保坂一八社長
「コメをとる田んぼであって、(家畜用の)ワラをとるための田んぼではなかった。まさかこんな風になるとは夢に思っていなかった。」
十日町市では、田んぼに水を入れるためミキサー車が出動!
■花水農産 宮内賢一会長
「厳しい、本当に厳しい。雨が降らなければどうにもならない。」
8月、極早生の品種『葉月みのり』の稲刈りが柏崎市で始まりました。
こちらは、南魚沼市の田んぼ。魚沼産コシヒカリの稲刈りです。品質・収量ともに上々でした。
■桑原農産 桑原真吾さん
「令和5年産の経験(令和5年産・・・県産コシヒカリの一等米比率が過去最低)があったので、そういうのを考えながら肥やしを少し多めにあげたり、イネがちゃんと丈夫な体を作って暑さに耐えられるイネ作りを心掛けた。」
2025年産の県産コシヒカリの1等米比率は10月時点で76.1%と、去年産の74.1%から2ポイント上回っています。県によりますと、穂が出る『出穂期』前に追加の肥料や水管理を徹底したことで、平年並みに1等米比率を確保できたとしています。
■石破茂総理(当時)
「消費者の皆様が安定的にお米を買えるようにするとともに、意欲ある生産者の皆様の所得が確保され不安なく増産に取り組めるような新たなコメ政策へと転換します。」
石破前政権ではコメを増産する方針を示した一方で、高市政権では事実上の方針転換に。
農水省によりますと、今年のコメの生産量は例年を大きく上回る約748万tになる見込みですが、関係者によりますと来年の生産量は想定される需要量に合わせ711万t程度とする方向で調整されています。鈴木憲和農水大臣は「需要に応じた生産が基本」と説明していて、価格についても「マーケットの中で決まるべきもの」と話しています。
■花角英世知事
「『なつほなみ』と名付けることといたしました。ちょっと皆さんの反応がよくわからないんですけど、おーという声でもないし別に落胆でもないんでしょうし。」
県が開発を進めてきた極早生のコメ『新潟135号』、その名称が『なつほなみ』に決まりました。食味が良く暑さに強いのが特徴で、8月中の収穫が可能です。
今年は猛暑となり、早くもその真価が問われる年となりました。県内13カ所で試験栽培を実施したところ、1カ所を除きすべて1等米となりました。来年は約400haを作付けする見込みで、一般栽培・販売を予定しています。
11月下旬、三条市のスーパーを訪ねると店頭のコメの平均価格は5kg・5000円を超えるなど、去年の1.5~2倍の値段になっていました。
■マルセン 太田雅悠専務
「価格が上がって本当にお客様も買いづらくなっていますし、我々としてもたくさん仕入れるのに少し躊躇(ちゅうちょ)してしまうような価格になっている。」
スーパーでのコメの平均価格は5kgあたり4321円と3週ぶりに値下がりしましたが、14週連続で4000円台と依然 高止まりが続いています。
12月2日、JA新潟市は生産者などとコメ情勢の情報を共有する会合を開きました。JAによりますと、2026年6月の民間在庫量は適正在庫である200万tを大幅に上回る予想となっています。コメの生産・販売などを手掛ける神明の藤尾益雄社長は、「今後価格が暴落する可能性がある」と指摘します。
■神明 藤尾益雄社長
「市中相場はすごい勢いで下がっている。大阪は5kgにして3480円とか出てきています、新米で。(Q.どのくらいまで価格は下がる見込み?)出てきているのはたぶん、卸売業者が在庫を投げてきている。(会社の)規模によっては資金繰りがある。資金繰りが厳しいところはそうせざるを得ない。」