2026.01.15【特集】異常事態!このままでは幻の魚に・・・記録的な「サケ不漁」の背景は【新潟】
サケ不漁の背景は
サケの記録的な『不漁』が続いています。村上市の三面川では、2025年の漁獲量が例年の10分の1まで激減しました。
このままでは、サケが幻の魚となってしまうかもしれません。不漁の背景と関係者の苦悩を取材しました。
年末やお正月のごちそうに欠かせない『サケ』。しかし、異常事態が起こっていました。
新潟市本町の海産物店『にいがた石山』。
軒先にサケが並んでいましたが-
■にいがた石山 石山幸次さん
「ここら辺は小さい。やっぱり大変でした。ほんとに年々減っているがとくに今年も大変で、去年以上に数がなくてかき集めるのに大変でした。」
例年、年末年始に向けて200~300本のサケを用意していますが、この冬ようやく確保できたのは150本でした。
■にいがた石山 石山幸次さん
「やっぱりこの時期(年末年始)は逆にどんなに高くても、1年にこの時期だけは『おいしいサケを食べたい』という方がほとんど。『いつもよりは小ぶりになるけど味は間違いない』という感じで確保した。」
全国的に続く『サケの不漁』。
国の研究機関「水産研究・教育機構」によりますと、2025年に日本の沿岸や河川で獲られた数は、平成以降で最少。例年の8分の1近くに減っています。
古くからサケ漁が盛んな村上市の三面川。
遡上してきたサケをウライと呼ばれる仕掛けでとる『一括採捕漁』は10月下旬からはじまり、12月にピークを迎えますが…。
■三面川鮭産漁業協同組合 平田茂伸副組合長
「きょうは6本。」
三面川では2017年に5万匹近くの漁獲量がありましたが、3年ほど前からは1万匹を切っています。このシーズン、1月10日までに捕獲されたサケはわずか1178匹。いまや1匹もとれない日もあります。
1日に1000匹以上がとれ大漁に沸いた、かつての姿が信じられない状況です。
■三面川鮭産漁業協同組合 平田茂伸副組合長
「おかしいですね。ピークというのがなかったから、まとまってとれるというのがなくて。やはり何かが違ってきているのだと思います。」
この日とれたのは、オス4匹とメス2匹。漁業組合には、地元の料亭『能登新(のとしん)』の社長が買い付けにきていました。
■能登新 山貝誠社長
「例年だったら献立にサケの料理を入れても何の問題もないですけど、今日でしか(とれた日しか)作れない料理というのがあるので。」
サケを受け取ると、すぐさま車で7分ほどの料亭へ。鮮度がいいサケでしかつくれない料理を作るということで同行させてもらいました。
■能登新 山貝誠社長
「これ結構良い。表面のウロコの状態以上に中身が良いサケ。」
ぶつ切りにしたサケを水・ミソ・塩で煮る郷土料理『川煮』です。
■能登新 山貝誠社長
「塩で動いている。ビクビクと。」
味付けもシンプルなため、新鮮さが命。とってから30分以内に鍋に入れなくてはなりません。江戸時代、漁師が川でとれたサケをすぐに煮たことから『川煮』という名がつきました。
内臓も臭みがなく、サケのうまみを存分に味わえます。とれたてを食べられる村上だからこそ育まれた〝冬の味覚〟。サケの不漁により、こうした食文化も危機に瀕しています。
料亭能登新も、サケにこだわり続けてきました。
■能登新 山貝誠社長
「せっかく県外から来られるお客様が多いので、村上のサケを食べに来ていただけるところもあるので、産地にこだわってやっている。」
毎朝、漁協や市場に出向いて仕入れてきた山貝さんですが、例年より1.5~3倍にも高騰した価格に頭をいためています。
■能登新 山貝誠社長
「いまのところはまだ在庫量は大丈夫だが、来年は間違いなく足りなくなる。今後もし この不良が続くと、サケ料理はものすごく高価なコースにならないと維持はできないのかなと。」
なぜ、サケはここまで減ってしまったのか-
新潟県水産海洋研究所の樋口所長は、地球温暖化により海水温がサケの生息できる温度を超えたのではないかと指摘します。
■県水産海洋研究所 樋口正仁所長
「2~3年ではなくて、徐々に徐々に(温度が)高まってきていると報告がなされています。近年の状況がサケの生息には適さない温度帯になってきたのではないかという風に考えています。」
生まれた川を下って海に出たサケは、オホーツク海を通って冬を北太平洋で過ごし、ベーリング海に到達。その後は、3~14℃の水温を求め、夏はベーリング海・冬はアラスカ湾と北の海を行き来すると言われています。
しかし-
■県水産海洋研究所 樋口正仁所長
「近年の研究だと、北太平洋の方の海水温も上昇しているので、サケに適している水温の範囲が小さくなっているのではと考える研究者もいます。」
100年前に比べ、地球全体の海水温は0.62℃上昇。日本近海でも1.33℃上昇しています。
現在考えられているサケ漁獲減の理由は大きくわけて2つ。ひとつは、稚魚が川から海にでたときに水温に順応できないという説。もうひとつは、北太平洋にたどり着いても海の環境がサケにとって厳しくなっているという説です。
■県水産海洋研究所 樋口正仁所長
「水温の上昇によって、サケが食べるエサの質や量が変わったり、他の動物・魚類の量が増えてきてサケのいる場所が少なくなってきたり。」
影響は、サケの『大きさ』にも及んでいます。
かつては通常(3~4年)より長く5~6年を海で過ごし、大きな体に成長して川に帰るサケも多く見られましたが…。
■県水産海洋研究所 樋口正仁所長
「近年は大きな、年を取って帰ってくるサケの数が減ってきてるという風な状況になっています。」
水産研究・教育機構によりますと、2025年にとれたサケの平均重量は2.71kg。1994年からの20年間で、本州ではもっとも小さい結果となっています。
■県水産海洋研究所 樋口正仁所長
「北太平洋の生き残りが悪くなって、大きなサケが少なくなっている可能性もあります。小さなうちに帰ってきてしまう個体が増えているという2つの側面がある。」
サケの漁獲を回復するためには、どうすればよいのでしょうか。
■県水産海洋研究所 樋口正仁所長
「現在生き残っているサケを大切にして、稚魚放流をすることが大事。高水温下で生き残ったサケを守り育てていくということが、今後の増殖事業にとって1つの重要な視点ではないかと考えています。」
変化する海の環境のなか、生きて戻ってきたサケを大切に繋いでいく。
〝稚魚の放流〟が要になるといいます。ただ、村上ではその稚魚の確保も難しくなっていました。
かつては三面川でとれたサケから採卵し、毎年約800万匹を放流していました。漁獲量が減ってからは他県から譲ってもらった卵をふ化させた稚魚を放流しています。
しかし-
■三面川鮭産漁業協同組合 平田茂伸副組合長
「北海道・秋田・山形でお願いしていたけど、すべてどこもとれないので『キャンセルしてください』と供給してもらえなくなりました。うちでとれた10万(の卵)しかないので、ほんとに4年後が心配ですよね。もうほとんどゼロに等しいんじゃないか。」
確保できる稚魚は10万匹ほど。放流した数が少なければ、3~4年後に三面川に帰ってくるサケの数にも影響が出ます。
■三面川鮭産漁業協同組合 平田茂伸副組合長
「本当にサケなんていうのはもう帰ってこなくなるのか、ほんとに〝幻の魚〟になるのかと思います。」
どうしたら、村上に戻るサケを増やせるか。
サケとともに生きてきた人々の模索は続きます。
■三面川鮭産漁業協同組合 平田茂伸副組合長
「やることはやっぱり同じなので、いままで通り少ないなかでもやって、それで果たしてどういう結果が出てくるか。」