2026.03.25【特集】糸魚川市の山間にある限界集落 未来に残す「一村貸し」とは【新潟】
築200年以上の古民家を改修した宿屋『堂道』
糸魚川市の山間の集落で、一棟貸しではなく『一村貸し』というめずらしい取り組みを始めた若者がいます。そこには、次の世代に集落を残したいという強い思いがありました。
糸魚川市の市街地から20km―
標高400mほどにある小さな集落『市野々(いちのの)』。通年で住んでいるのは1世帯2人、冬の間は市内の別の場所で暮らす人もいます。集落にある築200年以上の古民家が宿屋『堂道(どうみち)』です。
管理・運営するのは、株式会社伝燈(でんとう)の永田伊吹さん(30)。プレオープンの期間を経て、2026年1月から営業しています。
■株式会社伝燈 永田伊吹社長
「こちらが土間のあるキッチン。上を見ていただくと、かやぶきの屋根がある。」
14畳の広間には囲炉裏があり、宿泊客は炭を起こすところから体験できます。
■株式会社伝燈 永田伊吹社長
「寝室は2部屋あるが、今日は間仕切りを取って4人でお泊りするような形にしている。」
こちらはワークスペース。窓から見えるのは雪景色です。
■株式会社伝燈 永田伊吹社長
「いまは雪が積もっているが、もう少し春になってくると山菜とかも見えるし青がきれいになってくる。草花が咲くようなそんな感じの景色が広がっている。」
8年ほど空き家だった古民家。当時の建物の良さを残しながら床を張り替えるなど、半年かけて改修を進めてきました。
■株式会社伝燈 永田伊吹社長
「天井が昔は張ってあったがはがして見える状態にしたりとか、ここも床をはがしてなるべく当時の昔の建物の様相に戻す形で改修を進めてきました。」
定員は8人ですが、人数に応じて対応可能だということです。永田さんは新たな宿泊のかたちとして、一棟貸しではなく『一村貸し』を提案しています。
■株式会社伝燈 永田伊吹社長
「古民家に滞在していただくだけではなくて、集落にある湧き水や森、見渡してわかるように雪だとか自然も含めて味わっていただけるような体験として、一棟ではなく一村としてサービスを提供している。」
都内の設計事務所で働いていた永田さん。仕事で糸魚川市と関わったことが縁で、3年前に地域おこし協力隊として移住しました。宿屋 堂道には、2025年4月のプレオープンから数えると50組が宿泊しました。家族連れから年配まで、幅広く訪れていると言います。
■株式会社伝燈 永田伊吹社長
「宿をやろうと思ったときに、お父さんお母さんも東京出身で田舎を持たない家族が一定数いると思うが、そういった方にサードプレイスとしてふるさとを持ってほしいと考えていたこともあって、家族連れがすごく来てくれる。」
糸魚川市内でカフェを経営している今野直倫さんは、2025年8月に妻と友人ら4人で堂道に宿泊しました。
■堂道に宿泊 今野直倫さん
「田んぼが開けてて海が見える立地で、山の上のほうなのに視界が開けているのは気持ちいい。行く機会があれば行く。」
案内してくれたのは、湧き水が出るスポット。地元の酒蔵の仕込み水としても使われていると言います。
■株式会社伝燈 永田伊吹社長
「この水をくんでお米を炊いたり。鍋の水も全部湧き水で。」
かつて市野々には小学校があり、子どもたちの声があちこちから聞こえてきた場所でした。現在は限界集落と呼ばれ、集落の存続が危ぶまれています。
集落に80年住んでいる齊藤義昭さん(85)は、永田さんの取り組みを応援していると言います。
■集落に80年住む 齊藤義昭さん
「昔はこの集落は40戸くらいあった。だんだんと減って通年で住んでいるのはうちだけ。だんだんさびれてきた集落をなくしたくないという思いでいるところで(一村貸しを)聞いたもので、できるだけ利用してもらえるなら1年でも長く大字市野々という集落をなくしたくないその気持ちだけでできる協力をしたい。」
地域の魅力を伝えて多くの人に集落へ訪れてほしいー
その連鎖が続くことで、永田さんは市野々という場所自体が残ってくれればと話しています。
■株式会社伝燈 永田伊吹社長
「一村貸しをひとつのモデルとして、静かに終わりを迎える限界集落がたくさんあると思うが、逆手にとって歴史や文化を外部の方につないでいきたい。」