2026.05.28【特集】持続可能な医療とは?現場の実態と本音:県政課題の実情を深掘り③「医療」【新潟】
村上市の中心部に位置するJA県厚生連・村上総合病院
知事選の投開票まであと3日となりました。
県政課題を深掘りするシリーズの3回目は『医療再編』です。患者数減少などに伴う病院経営の悪化により、診療科の廃止や病床の縮小などが進んでいます。
県立やJA県厚生連の病院の経営は、非常に厳しい現状があります。県は、県立病院の2025年度の決算が約15億円の赤字になると28日に発表。11病院を運営するJA県厚生連も、2025年度の収支は国の補助金などで改善するとしていますが、2024年度の収支は30億円以上の赤字。いずれも運転資金の確保が喫緊の課題です。
県は、持続可能な医療提供体制を目指して病院機能の役割分担や適正な人材・医師や看護師の配置を進めています。
医療の現場の実情と病院の取り組みを取材しました。
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5月18日、村上総合病院に一人の患者が搬送されました。
■医師
「ひざ関節だね。」
96歳の女性。左ひざの痛みを訴え、約30分離れた市内の朝日地区から搬送されました。
■救急隊
「転倒したかどうか分からないが、(近所で)立っていて動けない状態を家族が発見したと。」
ケガの原因は、本人は「覚えていない」といいます。
村上市の中心部に位置するJA県厚生連・村上総合病院。山形県境に近い山間部や離島の粟島を含め、東京23区の2.4倍ともいわれる範囲をカバーしています。救急をはじめ回復期の患者に対応する地域医療の要ですが、患者数の減少や物価高騰の影響が直撃しています。最大263あった病床は、2024年以降徐々に縮小。現在の稼働病床数は185床です。2025年3月には、出産の取り扱い休止を余儀なくされました。
県が進める『医療の再編』。
直近では、3月。上越地域で県立中央病院を急性期や高度医療に対応する『中核病院』とし、JA厚生連の上越総合病院を高齢者救急や回復期を担う『地域包括ケア病院』に位置付ける新たな方針が示されました。
■県の担当者(当時)
「人口が減少して高齢化も進んで子どもも減っている。こういった局面が見えているなか、将来を見て先んじての再編であることが重要なポイント。さまざまな取り組みを加速していきたい。」
再編はまったなし。村上総合病院の杉谷想一院長は「致し方ない」と理解を示しつつ、抱えている不安があります。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「行き過ぎた集約化というか、あまりにも大きな病院や都市部にドクターを集めすぎると、地域に必要なものが失われてしまう弊害が起こっていると思う。」
地域に必要なものとは―
■村上総合病院 杉谷想一院長
「ある程度 高度な医療や対象の少ない医療は、手放さないといけないと思う。その反面、地元にありふれた疾患はできるだけ多く受け入れないと、地方の人は困ってしまいます。私たちがうまく応えられないことで、患者の医療が縮小するのは不本意。」
左ひざの痛みで救急搬送された96歳の女性。
■研修医 大石悠登さん
「骨折かもしれないということでX線を撮ったがよくわからなくて、CTも撮ろうかとなっている。」
X線やCT検査の結果、打撲によりひざの内部に血がたまっていたことがわかりました。
■整形外科 白野誠医師
「頑張ったね。痛みどう?ちょっと良くなった?」
いまは高齢の息子と2人暮らしです。
■整形外科 白野誠医師
「私の外来に入れておくので、痛ければまたいらしてください。今日は帰れると思います。」
■女性の息子
「このまま帰れるんですか…。」
■整形外科 白野誠医師
「はい、帰れます。」
デイサービスを利用していますが、農業を営みながらの母親の介護です。
■女性の息子
「いま田植えの時期で、(母親が家に)いなければ一番いいんだけど。」
■整形外科 白野誠医師
「そうしたら期間を区切って、1週間とかだったら(入院できる)。」
■女性の息子
「いいですよ、ちょうど田植えも終わりますから。」
■整形外科 白野誠医師
「そうはおっしゃるんだけど、病院は介護する場所ではないから。治療する場所なので、今日はひざが痛いから治療の対象になるけど。そういうことは介護なので、それはお父さん考えないとダメだわ。ケアマネージャーさんと一緒に考えて、どうしていくのかが喫緊の課題です。」
杉谷院長は、本来の役割を超える負担を感じています。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「人口減少によって医療の需要が減ると世の中では前提として語られているが、村上総合病院の数字を見るとそんなことはない。私たちは基本的には紹介先であり受け入れ先で、ある程度 高度な医療を行うのがいままでの分業体制だったがそうではなく、開業医も減っている。」
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■村上総合病院 杉谷想一院長
「10個以上、全部ポリープです。ひとつひとつ確認しても悪性はないので、気になさらさずにこのまま経過観察で大丈夫です。」
内科部長も務める杉谷院長は、この日も外来診療に来た多くの患者たちと向き合います。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「一番近い病院が村上総合病院となると、かかりつけとして頼られてしまう。おそらく高齢化すればするほど、その傾向は増していく。そうすると私たちは開業医分のかかりつけ機能を、もっと強化しないといけない。」
こうした地域のニーズに応えるため村上総合病院では、縮小ではなく〝拡大〟したものもあります。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「軽症者の救急。『軽いから病院に来ないで』ではなく、来た人は本当に軽いかどうか診て、もし村上総合病院でダメだったら次の大きな病院に移ろうと。診ないうちに断らないようにしたら非常に積極的に受け入れている。」
地域が必要とする医療にリソースを固める、病院独自の挑戦。右肩下がりだった外来患者数は、2025年度初めて前の年を上回りました。2025年度の収支は約9000万円の赤字の見込みですが、これまでと比べると大幅に改善しています。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「もっと地域と連携すれば経営状況は良くなると思う。なぜなら人口減少はしているが、医療需要はある。そこに私たちが気付かずに、単なる医療縮小だけは許されない。」
村上総合病院では、さらなる業務の効率化を目指して2024年からAIを導入。医師が作成したカルテや入院記録を読み込ませると…ものの数分で退院記録が出来上がります。AI導入前までは原則、医師が退院記録を作成していましたが、いまは事務スタッフが担当できるようになりました。
■事務職員
「先生方からはとても助かっているという話は伺っている。」
患者への検査説明もQRコードを読み込んで動画解説を利用してもらうなどして徹底した効率化を図り、スタッフの働き方改革にもつながっているといいます。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「私たちが20~30分、ときには1時間くらいかかっていた書類が、まず5~6分あればできてしまいます。インパクトはすさまじい。」
再編の波にさらされながらも、病院がその地域に存在する〝意味〟があります。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「林業や農業に携わる人は医療がないとそこで続けられない。私たちが医療を担うことは、その地の産業やその町自体の存続に関わっていくのではないかと思っている。」
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■岡拓哉アナウンサー
「杉谷院長の話で印象的だったのは、コンビニか大手小売店かではなく、地域に合ったスーパーがないと地元の需要にも応えられないし採算も合わない。大きいか小さいかが問題ではないと話していました。村上総合病院でも縮小した面もある一方で、縮小しなくても地域のニーズには応えられるアイデアはあり、院長は『実際に経営状態もびっくりするくらいよくなった』と話しています。」
知事選も投開票まで、あと3日です。候補が新潟の未来をどう描いているのか、見極めて選択する必要があります。