2026.06.19【特集】医師定着のカギは?新潟で学ぶ理由・医師不足の背景を探る:研修医に密着【新潟】
新潟を研修の場に選んだ〝医師の卵〟たちの思いとは
医師不足が深刻な新潟県は、若い医師を県内にどう呼び込み定着させるかが課題となっています。今回は、県内で学ぶ研修医に密着しました。新潟を研修の場に選んだ〝医師の卵〟たちの思いと、模索する医療機関の姿を取材しました。
村上市のJA県厚生連『村上総合病院』。早朝から回診にあたる研修医の大石悠登さんです。新潟市出身で新潟大学医学部を卒業して2年目。1年目は県外の大病院で先端技術や専門的な症例に触れ、2年目は県内で地域に根差した医療を実践的に学ぶという県の『たすきがけ研修』に参加しています。
■研修医 大石悠登さん
「ご高齢だと症状が出ない方も多い。より注意して、いつもと細かい変化がないかなと診ながら回っている。」
5月18日-
村上総合病院に救急患者が運び込まれようとしていました。
■整形外科 白野誠医師
「膝(ひざ)痛のおばあさんが救急車で来るからファーストタッチをお願いします。レントゲンを撮って、自分の見立てで(処置を)検討しましょう。」
対応を任されたのは、大石さんです。患者は96歳の女性。ひざに痛みを訴え動けなくなっていたといいます。左ひざに血がたまっていたことがわかり、大石さんが処置。
■研修医 大石悠登さん
「ちょっとチクッとしますよ。」
■看護スタッフ
「整形外科にスカウトします。」
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村上総合病院には、7人の研修医が在籍。高齢者救急や回復期の患者など地域密着型の医療を学んでいます。
■研修医 大石悠登さん
「都会の大きな急性期病院は病気を集中して勉強できる環境はある。病気を治し終わった後に、患者がどう家に帰っていくかあまり携わらない。」
しかし、ここは違います。
■整形外科 白野誠医師
「96歳でひざが痛くて歩けない、何が問題?介護だよ。」
■研修医 大石悠登さん
「施設に入ったり…。」
■整形外科 白野誠医師
「(介護)どうする?みたいなことまで気にしてあげないと。入院が100%いいわけでもないし、入院すると途端に認知症が進む。歩行能力が改善するわけではないから、どうするかを家族と相談しましょう。」
■研修医 大石悠登さん
「地域に密着して病気だけを診るのではなく、退院の方向性まで見なくてはいけないことが非常に勉強になる。」
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新潟県の〝医師不足〟は深刻です。人口10万人当たりの医師の数は、2024年末時点で全国ワースト5位の238.4人。村上総合病院の医師も年々減って現在は21人です。外科医は2025年に4人から1人になり、医療の内容にも影響が出ました。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「(村上総合病院は)もう緊急手術はほぼできない。外科医が緊急手術できないとなると、内科もあきらめざるを得ない治療が出る。」
医師不足の状況を表す医師偏在指標も、新潟は全国ワースト4位(44位)。過疎地域で慢性的に不足しています。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「いままでにない偏在だと思う。それは偏在ということではなく、あえて集めたということだと思う。たくさん(医師が)いるところは経済効率が悪くなっているし、少ないところは忙しくて大変。お互いに損になって、多いところが思ったほど効率を上げられない。少ないところは少なくなったことで、手放した医療もある。」
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■研修医 長濱幸佑さん
「CTとかエコーはやらなくて大丈夫そうですか?」
■村上総合病院 杉谷想一院長
「やったほうがいいんじゃない?とりあえずデータをとって。」
研修医の長濱幸佑さん。3月に秋田大学医学部を卒業し、『たすきがけ研修』に参加しています。じつは長濱さん、この村上総合病院で生まれました。
■研修医 長濱幸佑さん
「患者の痛みがわかる医師でありたいと思う。この治療をすることで患者にどういう意味があるのか、患者が退院した後にどういう生活を送るかまで考えられるようになりたい。」
小児科に長期入院していた経験から医師を志しました。7月からは、埼玉の大病院で1年間経験を積みます。
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県内で学ぶ研修医は年々増え、2024年度の採用数は161人と過去最高に。2025年度も同水準を保ちました。
しかし、問題は2年間の臨床研修を終えたその後。多くは専門医の資格取得のために専門研修プログラムに進みます。どの病院のどんなプログラムを選択するか、ここで都市部と地方の差が出ます。
■研修医 大石悠登さん
「例えば東京などはいろいろな大学病院や大きな市中病院があったり、そこがたくさんプログラムを持っていたりするので、プログラム同士の魅力度の競争が起きる。競争があればあるほど(プログラムも)とがっていく。そういったところに人が集まりやすいのでは。」
■研修医 長濱幸佑さん
「実力をつけたいのであれば、県外に出たいというか都会のハイボリューム病院に行きたいという人が多いのは確か。」
県内で専門研修を受ける『専攻医』の数は、近年横ばいで推移。県は「伸び悩んでいる」ととらえています。また、県内の医師のボリュームゾーンは55~69歳。30代がもっとも多い東京との違いは明らかで、高齢化は深刻です。
杉谷院長は訴えます。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「少々大変でも働きがいがあってワーク・ライフ・バランスで家族もハッピー。医師のライフスタイルが確立されないと、なかなかドクターがいつかない。お金をかけて一時的に若いドクターにいてもらうことよりも、来てくれたドクターやいま地域で頑張っているドクターなど、そういう人たちをより大事にする新潟県であってほしい。そういう視点がいまの医療再編には欠けているような気がして。」
選ばれる立場の病院も、それぞれの〝強み〟を打ち出さなくてはなりません。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「(村上総合病院は)離島があり、全身 全部診なくてはいけなくて、診療科も少なく、無い診療科もカバーしなくてはいけないというウリをしたら、それに共感する研修医が来てくれた。」
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村上総合病院が独自に打ち出した『へき地・離島研修プログラム』。たすきがけ研修とは違い、村上総合病院を拠点に県内で2年間研修を受けます。このプログラムに参加している研修医がいます。
村岡暁さん。東京出身で早稲田大学でスポーツ医科学を学んだ後、東京医科大学に進学し、この春 村上にやってきました。
■研修医 村岡暁さん
「お気に入りの場所は、やはり海は良いですよね。釣りもするので。瀬波海岸・岩船港は夕日がすごくきれいで好きですね。」
この日は、外来で問診を担当。そこに病院スタッフが業務中に腰を痛めたと、急きょ診察に来ました。
■研修医 村岡暁さん
「ここがちょっと動くだけで…腰が。」
■腰痛で受診
「腰が重いと言ったらいいのか…陣痛と同じ感じ。」
東京出身者で、村上総合病院のこのプログラムを受けるのは村岡さんが初めて。あえて都会を離れたのは、理想の医師像があるからです。
■研修医 村岡暁さん
「最先端の治療を提供して治すことはもちろん大事。患者が普段生活している場所に帰してあげることを目標にして、一緒に患者や家族と考えながらそのゴールを目指して治療や医療を提供するのが理想ではないかと思っている。」
杉谷院長はこう提言します。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「県外流出を防ぐためには、県内の良い(医師の)ローテーションプログラムと病院間の連携だと思う。県立病院もJA厚生連も母体は関係なく、県内ごちゃ混ぜにして研修していいとこどりをさせてあげればいいと思う。」
これから2年間、県内で医師の基礎を学ぶ村岡さん。
■研修医 村岡暁さん
「2年間の初期研修のうちに、都心のハイボリュームセンターで必ずしも研修をする必要はないのではないか。患者の背景や生活が見えて、どういうところで生活しているのか、自分の考えや思いをめぐらせながら診療に当たる医者でないと、今後そういう医者の需要が高くなってくると思う。」
新潟に残る可能性はあると話しますが、具体的な進路は未定です。施設の再編・集約とともに、意欲ある若手をどれだけひきつけられるかに地域医療の将来がかかっています。
花角知事も17日の会見で、医師の数に対しては「十分だとは思っていない」と述べ、「遠隔医療が技術的に進んできているので、もっとうまく使って課題の解決につなげたいという発想は持っている」と話しました。どこに住んでいても、安定して安心して医療を受けられることは住民にとっては大きな問題。再編、医師の偏在解消の取り組みはしっかり見ていかないといけません。