鍬専門鍛冶屋の新たな挑戦
ものづくりの町、三条市。
江戸時代に生まれた鍛冶文化は現代にも受け継がれ、
その金属加工技術は世界からも注目されています。
「なんか見ているだけでワクワクしますね。鍬だけに」
そんな三条市で、鍬を専門に作り続ける一軒の鍛冶屋。
親子2代でその技術を守りつつ、新たな挑戦を始めていました。
県内30市町村をめぐる、「チカポンの探県日和」。
今回は三条市を訪ねました。
伺ったのは、創業150年を超える近藤製作所。
チカポン「すごいですね、この重厚な歴史ある機械とか。バチバチバチバチ鳴っている。ザ・町工場という感じです」
工場を束ねるのは、職人歴50年の近藤一歳(かずとし)さん。
一枚一枚、丁寧に鍬の刃先を曲げていました。
近藤一歳さん(近藤製作所 5代目)
「鍬っていうのは、少し刃先がカーブしているんですよ。それを出すための作業」
チカポン「畑で使ったときにサクッと入るように?」
一歳さん「そういうことです。ほんの気持ちなんですけどね」
チカポン「やっぱり職人の目じゃないと分からない」
一歳さん「最後はそうなりますね」
チカポン「さすがです」
数少ない鍬専門の鍛冶屋として、その名を知られ、
全国から注文が入る近藤製作所。
それを証明するものが倉庫にありました。
チカポン「すごーい!たくさんの…これ、本当に全部、鍬ですか?」
壁一面に並ぶのは、すべて鍬。
これまでに作った形は1,000種類を超えます。
一歳さん「使い方は形が違っても同じ使い方をするんだけども、地域や土の質によって形が違うんですよね」
チカポン「でも大変じゃないですか?いろんな種類のものを作っていたら」
一歳さん「そこが私たちの生きる道だと思いますよね。作ってもらってよかったとか、使うのがもったいないなんて言われるときが一番うれしい」
その鍬作りに欠かせない工程『鍛造』に私も挑戦。
金属を叩いて成形し、丈夫に仕上げる作業です。
チカポン「軽く踏んでみますね。わー、動いた」
一歳さん「しっかり持ってね」
チカポン「はい、いきますよ。はい!」
チカポン「あ、あ、あー」
一歳さん「もっと強くてもいい」
チカポン「もっと強く?」
まんべんなく叩いて鉄と鋼(はがね)を、よくなじませます。
鍛冶職人「はい、オッケーです」
チカポン「どうですか?」
鍛冶職人「あとで直しておくのでご安心ください」
チカポン「大変だ、これは」
全国から信頼が寄せられるのは、確かな技術があってこそです。
長年、工場を支えてきた近藤さんの技術を受け継ぐのが、息子の孝彦さん。
孝彦さんは、150年続く鍬作りのノウハウを生かし、新たな挑戦も始めています。
それが、園芸用品の開発。
チカポン「よいしょ。あ、すごい!」
チカポン「すっと入っていきますね」
近藤孝彦さん(近藤製作所 6代目)
「コンセプトは、“鍬屋が作る移植ゴテ”」
孝彦さん「鍬の材料を使っているので、表が鋼、裏が鉄の2枚合わせで土ささりが良いんですよ」
チカポン「だっけねー」
チカポン「女性でも力が要らないというか、いい感じの重みもあり…サクッ。サクッ」
このオリジナル製品が、新たな客を掘り起こしました。
孝彦さん「これを作ったきっかけで自分の目標でもあった海外との取引ができているので、種類をもう少し増やして鍬も作りつつ、また新しい販路を広げていきたいと思っています」
一歳さん「新しい商品を開発していかないと商売は先細りになりますからね。どんどん挑戦してもらいたいと思います」
チカポン「ですって」
孝彦さん「はい、頑張ります」
3人「あははは」
親子で伝統を守り、新たな未来を切り開きます。
近藤製作所
三条市猪子場新田2165-9
0256-45-2269