深刻化する地場産業の担い手不足。
問題になっているのが職人の高齢化です。
オートメーション化が進む中でも、人の手でしかできない技は多くあり、今後、彼らの引退に伴い事業縮小や廃業に追い込まれる企業も。
そんな中、技術力を活かしたヒット製品が、若い職人の獲得につながったというケースを発見。担い手不足解消の手がかりとなるのでしょうか?2つの企業を紹介します。
まずは燕市にある「武田金型製作所」。
自動車や家電製品などの部品を形作る「金型」を作っています。
社長の武田修一さんが一代で築いたこの会社は、技術力の高さから厚い信頼を得ていましたが10数年前から、職人の担い手不足に悩んでいました。
そんな中、製作したのが「マジックメタル」という製品。
何もないただの板に見えますが…
後ろのレバーを回すと、文字が浮き出てきます。
もともとは企業の展示会で技術力の高さをアピールするために作ったもの。その仕組みはというと
文字のパーツと台座はこんなふうに別々に作られているんですが
これを組み合わせたときの隙間がなんと1000分の3ミリ。紙幣の厚さのおよそ30分の1。
そのため沈み込んだときに文字が消えたように見えるんです。
金型製作で培った技術があるからこそできるシロモノです。
この動画をSNSでアップすると、インパクト抜群の映像が全国で話題に。人気バラエティ番組でも取り上げられました。
すると、SNSやテレビでマジックメタルを見た若者たちが興味を持ち、武田金型に入社するようになったのです。
現在、2~30代の割合が3分の1と、社員の若返りに成功。
社長の武田さんはこの状況に驚きながらも、これからも今以上に社員の年齢を引き下げられるよう積極的に採用活動を行うとともに、女性の雇用にも力を入れたいと語っています。
続いては、三条市にある三条特殊鋳工所。通称サントク。
高温で溶かした鉄を型に流して成形する「鋳造」という技術で機械部品などを作っています。
様々なオーダーに応えられることから取引先は200社以上と業績は好調ですが、ここでも職人が高齢化し、後継ぎの若者が少ない状況。
そんな中、一筋の光明が。
工場内を見ると、女性の姿が多くみられます。
その理由は、サントクが開発した自社商品の鋳物調理器具。
特徴は、これまで鋳物では実現できなかった厚さ2ミリという極薄仕様。これにより“世界最軽量”といわれる軽い鉄鍋が誕生しました。
全国に評判は広がり、使い勝手の良さからプロの料理人も愛用するほどの人気商品に。
さらに
調理器具という親しみやすさから、この分野では数少ない女性の入社希望が急増したのです。
入社10年目の簔口さんもそのうちのひとり。
パートで働ける場所を探している中で、調理器具を作っていることから親近感を抱き、サントクに応募したのだそう。
それまで聞いたこともなかった「鋳造」という仕事ですが、やってみたらその魅力にすっかりハマったそうです。
冒険的なチャレンジをきっかけにサントクに吹いた新しい風。
繊細な手しごとが超軽量の鋳物鍋作りに生かされています。