2025.06.19【特集】県内の不登校は過去3年で2000人増加…子どもの居場所「当たり前がない場所」フリースクール【新潟・上越市】
『生きるのって楽しいな』と思ってくれるような場所にしたい
全国的に不登校が増加していて、県内も例外ではありません。子どもたちにとって必要なのは、どのような支援なのでしょうか?
2025年1月、『自分らしく居られる場所』を目指すフリースクールが、上越市にオープンしました。子どもたちの〝居場所〟について考えます。
上越市直江津の『ふりぃすくーる“日晴り(ひばり)”』。小1~中2までの不登校の子どもたち6人が不定期に訪れ、勉強やゲームなどそれぞれが自由に過ごします。この日は、中学生3人が訪れていました。
■中学2年生 さなさん
「(2025年1月)出来てすぐ来ている。週2くらい。いつもはゲームをしたり話しをしている。たまには話したいので。」
代表の川本陽子さん。『日晴り(ひばり)』を子どもたちにとって、「自分らしく好きなことを見つける場所」にしてほしいと考えています。
■ふりぃすくーる日晴り 川本陽子代表
「学校に行って当たり前とか、いろいろな当たり前があると思うんですけど、その“当たり前がない場所”が欲しいなと思った。世の中のイメージにとらわれないような、“自分らしくいられる場所”。」
遊びや勉強・人との関わり方も、子どもたちの自由です。川本さん自身も、子どもたちにつきっきりで過ごすのではなく、必要なときだけサポートをするように心がけています。
■ふりぃすくーる日晴り 川本陽子代表
「家では、お母さんやお父さんに『どうなの』などと言われちゃうところもあったりとかして。子どもたちは、自分の思っていることをなかなか言えない子が多くて、それを吐き出す場所というイメージですかね。」
県内の不登校の児童生徒の数は、2021年3854人、2022年4759人、2023年5617人と過去3年で約2000人増加。フリースクールのような子どもの居場所の必要性が高まっています。
■中学2年生 あおばさん
「やっぱ楽しい。(ゲームを)人とやると楽しい。1人じゃおもんない。」
■中学2年生 さなさん
「家では集中できないことをちょっとずつできるので、好きなものに集中できる場所としていいなと思います。(Q.これもっと頑張りたいと思っていることは?)やっぱネイル、もうちょっとうまくやれたらいいなと思う。爪をかむクセがあるので、かまないようにネイルをしようと思って、やっていたらかわいいなと思ってやるようになった。」
2025年1月-
川本さんは、『日晴り(ひばり)』のオープン準備に追われていました。築50年の古民家を手作りで改装しました。
■ふりぃすくーる日晴り 川本陽子代表
「(Q.オープンに間に合いそう?)間に合わなければ、子どもたちと一緒に活動しながら作っていけばいい。」
川本さんは、2年ほど前から家庭や学校以外に、子どもが安心して過ごせる場所が必要だと感じ始めたと言います。
そのきっかけとなったのが-
■ふりぃすくーる日晴り 川本陽子代表
「(息子が)中学2年生のときに完全に不登校になって、そのときに居場所としていろいろ探してみたんですけど、なかなか本人に合う場所がなかった。それならもう『自分でつくるか』という感じで立ち上げたのがきっかけですね。」
それまで学習塾で働いていた川本さん。息子の不登校をきっかけに、『日晴り』の開設を決意。同僚の鹿住遥菜さんに伝えたところ、協力の申し出を受け、共同代表として活動してくれることになりました。
■ふりぃすくーる日晴り 鹿住遥菜代表
「私も不登校の経験があるので、陽子さんから声かけられたときに絶対に2人でやろうと思って『日晴り』を立ち上げました。子どもたちの居場所でもあるし、自分の居場所でもあるので、仕事場だけど第2の家みたいな感じで落ち着ける居場所です。」
『日晴り(ひばり)』という名前は、未来ある子どもたちがヒバリのように天高く舞い、自由に飛べる世界を上越から広げたいという思いから、鹿住さんが考案しました。
開設から4カ月あまり、子どもたちの居場所として歩みを進めてきましたが、課題もあると言います。
■ふりぃすくーる日晴り 川本陽子代表
「経営面がすごく大変。上越市からフリースクールの運営に関しては補助がない。補助金や助成金がないので、続けるのが難しいと感じています。」
『日晴り』の利用料金は、週2日の利用で月額2万円(送迎代学習費用含む)。運営費を補助する自治体もありますが、上越市にはそのような制度がないため十分な運営費を得られていません。
5月28日。川本さんは、長野県のフリースクールを訪ねました。
『寺子屋TANQ(たんきゅー)』の代表・市川寛さん。27年間小学校で教師として勤務し、4年前にフリースクールを開設。川本さんとはSNSを通じて知り合い、情報交換を続けています。
■寺子屋TANQ 市川寛代表
「話をしているうちに、共通点がすごくいっぱいあって。お互い勉強できればいいと思い、つながりができた。」
この日は、長野県のフリースクールに対する補助制度について話を聞きました。
■寺子屋TANQ 市川寛代表
「長野県の大きな方針として、施設補助は県、家庭支援は基礎自治体。」
■ふりぃすくーる日晴り 川本陽子代表
「市で動くというよりは、県全体を動かさないと。」
長野県には、フリースクールを認証する制度があり、認証を受けた事業者は県から運営費が補助されます。また、利用者は市町村から利用料金が補助されます。
一方、新潟では市町村によっては利用者への補助制度がありますが、事業者に対する県からの補助制度はありません。市川さんは、フリースクールの運営には事業者への支援も重要だと言います。
■寺子屋TANQ 市川寛代表
「支援制度ができるまでは、自分1人しかスタッフが雇えなかったんです。助成金をいただくことで、スタッフを複数名置くことができるようになった。今まで通いたいけどお断りしていた方がいたが、今後は増やしていけるなと見通しが持てています。」
川本さんは、新潟でも行政の支援拡充を求めたいとしていて、今後も子どもたちの居場所づくりを続けていきます。
■ふりぃすくーる日晴り 川本陽子代表
「不登校だから何もできないとか諦める必要って全くないので、不登校の子たちが秘めているものを、『日晴り』に来て『生きるのって楽しいな』と思ってくれるような場所にしたい。」