2025.08.08【特集】航空自衛隊のエリート『PJ』あらゆる現場に対応する「人命救助“最後の砦”」訓練密着【新潟】
〝PJ〟は全国に約100人、そのうち7人が新潟分屯基地に所属
航空自衛隊・新潟分屯基地に陸上と海上で活動する人命救助のエキスパートがいます。
通称〝PJ〟(パラレスキュージャンパー)。
高い救助能力を持つ精鋭たちの訓練に密着しました。
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航空自衛隊、航空救難団。遭難した自衛隊航空機の捜索・救助を主な任務とし、大規模災害が発生したときは、人命救助の最前線に出動します。救助を担う救難員は通称〝PJ〟と呼ばれ、日々過酷な訓練に励んでいます。
■新潟救難隊飛行班長 佐藤敦3等空佐
「PJはまさに救難団のやりの矛先でありまして、困難な現場や天候不良で厳しい条件の中、ヘリコプターから現場に飛び降り海であっても山であっても確実に連れて帰ってこられるという能力を有する必要がある。」
警察や消防・海上保安庁が出動できないと判断した現場に出動。
人命救助の「最後の砦」〝PJ〟に密着しました。
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新潟市東区にある航空自衛隊・新潟分屯基地。PJの1日は、朝6時に始まります。
新人PJの𠮷田優吾3曹。自衛隊の中でも狭き門とされる〝PJ〟の選抜試験に合格し、2025年2月に新潟分屯基地へ配属されました。半年ほどのトレーニング期間を経て、現場に出動します。
■新潟救難隊 新人PJ 𠮷田優吾3等空曹
「(朝は)水回りの準備だったり、1日のスケジュールの流れをもう一度確認してという感じ。」
〝PJ〟は全国に約100人。
そのうち7人が新潟分屯基地に所属しています。
■新潟救難隊隊長 景浦浩1等空佐
「我々は有事を想定した訓練というのを主眼にしていますので、すべての状況に的確に対応するというところで我々は能力を伸ばしているところです。」
これまでに2000人以上を救助。2024年の能登半島地震でも、孤立した住民などを救助しました。
装備を整え訓練へ。この日は下越地方の山間部に向かいます。遭難者のダミー人形をセットしたのは、木々が生い茂る森の真ん中。上空から要救助者を発見し、ロープを使ったラペリングと呼ばれる降下法で現場へ。
■新潟救難隊 新人PJ 𠮷田優吾3等空曹
「大丈夫ですか!分かりますか!」
先輩の指導を受けながら、ストレッチャーに要救助者を固定。ワイヤでつり上げ、救助しました。
■新潟救難隊PJ(6年目) 長友章悟3等空曹
「ストレッチャーをキャッチするとき、今回はそんなに揺れていなかったので、届きそうであればつかんでいい。細かいところだけど、そういうところでも時間を短縮できるようにやって。」
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昼食は、部隊の垣根を越え、数十人の隊員が食堂に集まりました。
■新潟救難隊PJ(3年目) 諸岡拓3等空曹
「どうですか、今日のカレーのお味は?」
「とてもおいしいです。あとフォローお願いしますよ。」
■新潟救難隊 衛生員
「(PJは)エキスパートというか鍛え抜かれた人たちなので、すごくかっこいいなと思う。自分にはできないので。」
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室内で行うのは、落下傘(らっかさん)をたたむ訓練。落下傘は航空機から降下する際に使うパラシュートで、PJは任務に使う落下傘を自分で畳みます。
■新潟救難隊PJ(6年目) 長友章悟3等空曹
「昨日も言ったけど、ここが風をはらむ部分。大事なところだからしっかり。」
すべて畳み終えるのは早い隊員でも1時間。慣れないうちは2時間近くかかるといいます。
■新潟救難隊PJ(6年目) 長友章悟3等空曹
「そもそもこれが開かないと落ちて(自分が)死んでしまう可能性もある。非常に大事なところ。」
ひもを通す位置、順番、数センチのずれが命にかかわります。細かい作業も、手を抜くことは許されません。
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業務を終えたあとのトレーニング。海上での救助も求められる〝PJ〟。10kgの重りを持って、キックを鍛えます。
さらに-
一緒にトレーニングする板花士長は、吉田3曹の同期ながら1年先に選抜試験に合格し〝PJ〟の任務に就きました。
■新潟救難隊PJ(2年目) 板花奈津輝士長
「(Q.よく2人でトレーニングする?)めちゃくちゃやります。」
■新潟救難隊 新人PJ 𠮷田優吾3等空曹
「週に1回か2回はやります。」
■新潟救難隊PJ(2年目) 板花奈津輝士長
「それぞれでトレーニングは週6回。」
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過酷な現場に出動する〝PJ〟になぜなろうと思ったのか―
■新潟救難隊 新人PJ 𠮷田優吾3等空曹
「自分は岩手出身で東日本大震災があって、そのときまだ小学3年生。沿岸にも友達がいて、その知り合いが亡くなったりして。そういう人たちにも本当にやりたかったことがあって、自分のやりたいことって何だろうと考えたときに、そういう人を救う仕事だなと思った。」
一度、選抜試験に落ちたものの、2回目の挑戦で突破しました。
■新潟救難隊PJ(2年目) 板花奈津輝士長
「お互いに救難員を目指してトレーニングしていたので、こうやって新潟で一緒に勤務するのは自分の中でも心強い存在になるし、早く一緒に任務に行きたい。」
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この日は、新潟市の沖合で救助訓練を実施。戦闘機のパイロットが緊急脱出して、海で遭難したという想定です。
まずは、入水の訓練―
止まった状態での入水は、海面から3mの位置までヘリコプターを近づけ飛び込みます。
■新潟救難隊 新人PJ 𠮷田優吾3等空曹
「少し斜めに入ってしまって。本来は足から一直線に落ちるが足が前に行ってしまい、くの字の形で入ってしまった。それをやってしまうと危ないことになるので、正しい動作で飛び降りた方がよいという指摘を受けた。」
ヘリコプターで移動しながらの入水は、より速く現場に到着できます。
■新潟救難隊 新人PJ 𠮷田優吾3等空曹
「大丈夫ですか!分かりますか!」
要救助者の身体をボートからストレッチャーに移します。海中では吊り上げるとき、回転しないようにヒモを伸ばします。
𠮷田3曹のトレーニング期間は、残り2カ月。あらゆる状況に対応できる〝PJ〟を目指して厳しい訓練は続きます。
■新潟救難隊 新人PJ 𠮷田優吾3等空曹
「どんな要救助者も帰りを待つ人はいるので、帰りを待つ人にとっても要救助者にとっても、最後の救いの手になれるように頑張っていきたい。」