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2025.08.26【特集】「不登校」の親子と向き合う元教師「心が疲れたんだ」寄り添い続けた33年間【新潟】

【特集】「不登校」の親子と向き合う元教師「心が疲れたんだ」寄り添い続けた33年間【新潟】
元中学校教師の西伸之(67歳)
新潟市に不登校で悩む親子を支える元教師がいます。30年以上様々な声に耳を傾け、寄り添い続けてきた男性の思いを取材しました。

新潟市中央区の一室に悩みを抱えた親が集まりました。

■子どもが不登校を経験 当時中学2年生の保護者
「突然 頭が痛いと言って(学校を)休んだ。3日くらい休んだあたりでいつもなら動き出すが気配がなくて、これはおかしいなと。『どうした?』と聞くと『心が疲れたんだ』と。これは一大事だと思った。」

■子どもが不登校 高校3年生の保護者
「先生から様子を聞くと仲間と楽しそうに話して冗談も言い合っていると言うが、学校には行かない。どういうことか分からない。」

子どもの発達と不登校を考える「アーベルの会」。保護者や教師が参加して、子どもの状況や経験を語り合います。

■子どもが不登校 高校1年生の保護者
「高校になってから毎日お弁当。『行かないかな』と半分思っているけど、弁当を作るようにしている。『行く』となったときに『弁当ない』『じゃあ行かない』と言われるのが嫌で。親の安心材料じゃないけど、気休めでやっているというのが本当のところ。」


会を開いているのは、元中学校教師の西伸之さん、67歳です。

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「いろいろやっても駄目だなと、諦めみたいな気持ちになることはなかった?」

■子どもが不登校を経験 当時中学2年生の保護者
「なりました、ずっと引きこもり状態。この子が一生引きこもりでも、私と家族が楽しければそれでいいじゃないかと。」

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「開き直りじゃないけど、そこまでなった?」

■子どもが不登校を経験 当時中学2年生の保護者
「そう思えたら色々なことが少しずつ動き始めて『こういうこと?』みたいな。『西先生が言っていたのこれだ!』と思った。」

30年以上前から、毎月欠かさず不登校などに悩む親子の声に耳を傾けてきました。

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「来てくれるだけですごいエネルギー。たぶん一番しんどいときは、こんな所に来る気力もない、抱え込んで。でも、ここに来られるってことは、ちょっと動けて、何かヒントをもらいたいと。だから、よく来てくださってありがとうございますという気持ち。」

■子どもが不登校 高校1年生の保護者
「不安を和らげに来ているというか、正直 不登校って孤独なんですよ。わかってもらえないことが多くて。ここにくると自分でも何を言っているか分からないときもあるが、聞いてもらえるし、こんなんでいいんだよと教えてもらうこともあるし。」

西さんが会を始めたのは、35歳のとき。
初めて不登校の生徒を担任したことがきっかけでした。

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「一生懸命その子に関わったつもりでいた。毎日家庭訪問して『明日は頑張ってこよう』とか『約束しよう』とか。彼も『頑張るよ』と言いながらやっぱり休みが続く。そうすると、教師として自分が良かれと思っていたことが、もしかしたらその子にとってはつらい思いをさせていることもあるんだと、自分をもう一回見つめ直さなきゃと思ったことがすごく大きかった。」

『不登校』の児童・生徒数は、年々増加しています。文部科学省が定義する年間30日以上欠席する『不登校』とされた小・中学生は、2023年度初めて30万人を超えました。県内でも5617人と、8年連続で過去最多を更新しています。

西さんは、アーベルの会で指導ではなく〝気づき〟を大切にしてきました。

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「(親は)本当は求めていなくて、聞いてほしくて、そして聞いてもらうなかで、親が自分自身で振り返って次はこうしていくというのを自分で見つけていく。親だけじゃなく子どももそう。僕は『こうしたらいいんじゃない』『これが良くなかったんじゃないか』という自己教育力や自己回復力を養っていく。親も子どもも教師もみんな持っているので、それが出るのはアーベルの会の大きな役割。」


西さんとの関わりの中で、不登校を乗り越えた男性がいます。

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「本、まだあれ読んでないだろ『蜘蛛の糸』。」

■不登校を経験 三浦圭人さん
「読みました。」

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「読んだ?『杜子春』も読んだ?」

■不登校を経験 三浦圭人さん
「読みました。」

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「これ買ってきたのに。でもあげるよ。」

■不登校を経験 三浦圭人さん
「ありがとうございます。」

三浦圭人さん、20歳。中学で不登校となり、高校も中退しました。母の成江さんが会に通っていたことで、西さんと出会いました。

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「とにかく印象に残ったのは『なんで勉強するのか』とか『なぜしんどい思いまでして働かなきゃいけないんだ』『生きている意味はどこにあるんだ』そういうことを考えても、なかなか答えが見つからないという会話をしたのを覚えている。」

圭人さんは、西さんとの会話で印象に残っていることがあります。

■不登校を経験 三浦圭人さん
「自分は引きこもっている間、勉強をしていなかった。そこが不安だという話をしたが、先生が生きる意味とか生き方について考えるのは『哲学』という学問だと、別に勉強していないわけじゃないと言われて、あぁそうなんだと思って少しうれしかった。」
「(Q.その後の人生に影響した?)そうですね、すごい先生なのかもしれないと思った。」


圭人さんが不登校になったのは、中学1年の夏-
何か大きなきっかけがあったわけではなく、周りとの微妙なずれや部活動でケガをしたことなど、小さなことが積み重なって限界に達したといいます。

■不登校を経験 三浦圭人さん
「時間が経つにつれて、焦りというか、学校戻りたいけど戻るきっかけが出来ない。徐々に外に出られなくなった。外で同級生と会ったときに気まずいというか会うのがこわくなって、外に完全に出られなくなってしまってそこからどんどん沈んでいった。」

当時、圭人さんの母・成江さんはわが子の不登校に驚き、焦っていたと話します。

■圭人さんの母・三浦成江さん
「理由がはっきり分からなかったのもあるし、いろいろ話しかけたりするけど『具合が悪い』というので具合が悪いんだろうと思ったし。長くなったら大変だと思って〝戻さなきゃいけない〟それしか考えていなかった。」

成江さんも精神的に辛くなっていったと言います。

■圭人さんの母・三浦成江さん
「プリントとかもらいに行くと、やっぱり他の子どもたちもいますし、ちょっとすごく困りました。悩みました。(Q.当時の気持ちを思い返すと今でも…)泣けますよ、本当。」

時間だけが過ぎ不安が募るなか、アーベルの会の存在を知り、通い始めると少しずつ意識が変わっていきました。

■圭人さんの母・三浦成江さん
「もとは、この子の幸せを望んでいたのに苦しめている。(話を)聞いていたつもりだが、“もう少し話をしてみよう”とちょっと見守ろうかなという気持ちになった。」

不登校になって約5年―
成江さんの気持ちが変わると共に圭人さんにも変化が起きました。

■不登校を経験 三浦圭人さん
「西先生と出会って自分の話を聞いてくれて、自分のモヤモヤした部分を言語化してくれたことで自分に整理がついた。(親に)何かしら恩返しするために巻き返したいなという思いがあって、高校に入り直してちゃんと人生を歩もうと決断した。」

西さんとの出会いから数カ月後―
2024年の春に圭人さんは公立の定時制高校に入学しました。今は自宅で課題に取り組みながら、月4回ほど学校に通っています。

■不登校を経験 三浦圭人さん
「勉強はついていけていない部分も正直ある。中学時代の勉強が必要であれば振り返るようにして、何とか補っている。過去の不登校の経験があるからこそ、生かせる部分もある。精神的に強くなれたっていうのもあるし、近い人が学校に行かなくなったり引きこもったりしたら、当然 自分の経験を生かして助けたいと思う。」

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「(Q.圭人さんの成長ぶりをみていかが?)今とても良い感じであっても、これがずっと続くとは思わないし、そんな人生はない。でも、僕はとても今うれしい。彼がこれからどんな人と出会うかをずっと見ていきたいなと思う。」

西さんは、いま悩んでいる子どもたちに伝えたいことがあります。

■不登校に悩む親子を支援 西伸之さん
「僕は、小・中・高、若い時代に悩むことはすごく大事なことだと思うので、今もし学校に行けなくてしんどい思いをしていると思うけど、その経験はとてもいい経験をしているんだよ。だから、しっかり悩んで、でも必ずそれを応援してくれる人はいるし、道が開けるということを伝えたい。」


夏休み明けに不登校となるケースも多いとのこと。西さんは、悩んでいる親子がいたら悩みを抱えず誰かに話を聞いてもらうことが大切と呼びかけています。アーベルの会は、新潟市で3カ所・新発田でも開かれています。
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