2025.08.27【特集】〝住民負担〟めぐり広がる波紋「安心して住めない」新潟市の液状化対策の工事費【新潟】
新潟市の液状化対策の対象地区
能登半島地震で『液状化現象』が発生した新潟市。被害地域で地盤改良を伴う大規模な工事を検討していますが、その費用負担を巡って住民と行政の意見が分かれています。
能登半島地震で震度5強を観測した新潟市。西区や江南区などで液状化現象が発生しました。地震の揺れで砂の地盤が緩み、地表に地下水などが噴き出す現象です。
■ときめき西4丁目自治会長 阿部誠さん
「瓦がわしゃわしゃと揺れて、家が崩れると思っていたらバーッて水が出てきた。」
阿部誠さん(64)。液状化現象が広がった西区・ときめき西4丁目、117世帯の自治会長です。
■ときめき西4丁目自治会長 阿部誠さん
「前の道がひび割れて液状化で水がバーッと出て流れた。電柱があったが、電柱の根元から水が吹いて電柱が沈んで傾いた。町内全体的に水が噴き出たという感じ。」
復旧は進みましたが、地区のいたるところに爪痕が残されています。阿部さんの自宅も床が大きく傾くなどして、半壊の判定を受けました。
■ときめき西4丁目自治会長 阿部誠さん
「本当はここが平らなんだけど、床が上がった。本当はここが床の高さなんだけど、これくらい上がった。床をめくって張り替えて。」
『液状化現象』は、対策を講じなければ大きな地震の度に同じ場所で繰り返します。阿部さん家族の将来設計にも影響を与えました。
■阿部さんの妻・幸子さん
「(長男が)ここの敷地に家を建てるかを検討していたが、地震をきっかけに将来的にまた(液状化する)地盤だからと東区に建てた。」
■ときめき西4丁目自治会長 阿部誠さん
「我々の寿命はそんなに長くないかもしれないけど。」
■阿部さんの妻・幸子さん
「(子や孫に)ここに住めとは言えない。安心して住める地盤づくりは新潟市でやってもらわないと、新潟市に安心して住めない。」
新潟市は、地盤改良を伴う液状化対策の検討を進めています。対象は、とくに被害が大きかった西区の寺尾周辺地区、ときめき西を含む西区の黒埼地区、江南区の天野地区、合わせて約250haの範囲です。
8月上旬、新潟市は『液状化対策』について住民向けの説明会を開きました。
■新潟市 中原八一市長
「対策工法の内容や具体的な対象地域のほか、今後のスケジュールなどについて説明します。」
新潟市が実施を目指すのは『地下水位低下工法』。
道路の下に排水管を通して地下水位を下げることで液状化しにくい地盤にする、他の被災地でも実績がある工法です。この対策は、一定の範囲をまとめて実施しなければ効果が期待できないとされています。新潟市は、工事を実施する条件として対象地区のすべての地権者が同意することをあげています。
そこで課題となるのが-
住民に工事費用の一部を負担するよう求めていることです。国交省によりますと、地域一体の液状化対策にかかる工事費用の97.5%は国の補助金を充てることができるとしています。残りの2.5%を自治体がまかなうことになり、新潟市はその一部を住民に負担してもらう方針です。
説明会では、各世帯の負担が数十万円になる可能性が示されました。
費用負担について阿部さんは-
■ときめき西4丁目自治会長 阿部誠さん
「率直に感じたのは、がっかりした。『負担は100万円』と言われたら『えっ!』となる。『それなら同意しない』とか『なんで私が払うの』となると、全員同意なんて無理でしょ。新潟市が液状化対策事業を用意したけど、(合意できず)『やらないのね』と収めたいのか。(新潟市は)やる気ないでしょと。」
先週末、阿部さんは周辺の自治会長に呼びかけ、液状化対策についての勉強会を開きました。
■ときめき西1丁目自治会長
「液状化対策をするから個人負担で60万だ100万だ、誰が(同意の)ハンコを押しますか。」
■ときめき西2丁目副会長
「私もお金がないので出すのは難しいので、全額公費でお願いしたい。」
■ときめき3丁目自治会長
「(高齢者から)亡くなったら土地や家を売るという意見が出ているので、みんながお金を出すのは難しいと思う。」
これまで地震による液状化で地域一体の対策を実施したのは、全国で11の自治体。中越沖地震のあと対策工事を実施した柏崎市と、東日本大震災で被害を受けた千葉県の浦安市は、工事費用の一部について住民負担を求めました。
一方、熊本地震で被害が広がった熊本市など9つの自治体は、住民に負担を求めませんでした。
住民負担を求める理由について、新潟市の中原市長は公平性の観点をあげます。
■新潟市 中原八一市長
「能登半島地震で被災した地域は新潟市が集約したのが250haと大変大きな面積になります。その中で対策をやるところとやらないところがあるので、負担を求めることによって公平感を保ちたい。」
■ときめき西4丁目自治会長 阿部誠さん
「公費で対策工事をやって、地域住民の安心・安全は新潟市が守ると言ってくださればありがたい。困っている市民に寄り添って行政をやってもらいたい。」
■新潟市 中原八一市長
「負担額については様々な要望をもらったが、可能な限り負担額の軽減が図られるように新潟市としても今後努力していきたい。」
住民負担が求められる中で、地権者全員の同意を得るのは高いハードルになりそう。新潟市は、10月中旬の説明会で住民負担の金額などを示したうえで、工事を希望するエリアを募集するとしています。