2025.09.25【特集】どう黒字化?エンタメ界出身の異色経営者「もう一回1番にしたい」トキエア和田直希氏に密着【新潟】
トキエア 和田直希共同代表
新潟空港を拠点に各地を空でつなぐ『地域航空会社トキエア』。
設立から5年。機体トラブルなどから経営の不安定さが指摘される中、2025年6月に音楽・エンタメ業界などで手腕を振るってきた和田直希さんが共同代表に就任しました。
どのような成長戦略を描いているのか、密着取材を通して和田さんのトキエア改革に迫ります。
■トキエア 和田直希共同代表
「おはようございます。」
和田直希さん。2025年6月、トキエアの共同代表に就任しました。
■トキエア 和田直希共同代表
「空港もあり、基本的な新潟県内内需といいますか、しっかりとおいしいご飯があって観光としても佐渡など可能性があるのは、もうトキエアぐらい新潟県が魅力的だったんすよ。」
兵庫県生まれの44歳。20代後半でインドネシアに移住し起業。家具の製造工場を立ち上げ、東南アジアで事業拡大に努めました。2020年には、アーティストのプロデュースを手がける株式会社LANDを設立し、音楽・エンタメ業界でも第一線で活動してきました。
就任が決まった6月の株主総会で、トキエア参画の理由をこう語っていました。
■トキエア 和田直希共同代表
「ひとつひとつやるべきことをコツコツやるとしっかり収益を上げられるという事業モデルなので、ビジネス的に〝勝ち筋〟。」
就任から3カ月-
〝勝ち筋〟の真意について、あらためて聞きました。
■トキエア 和田直希共同代表
「いわゆる変動費(燃料など)と言われる一番の根幹にあるコストが、同じ70人や90人乗りのジェット機に比べて正直3分の1からなんですよね。(他社が)60人乗らないと赤字なところを我々は30人でもう黒字ゾーンに入っている。地方は撤退されるかもしれない中、トキエアだったらその中でも収益性を確保できるラインに乗っている。」
2年前、三条市で開催された燕三条ジャパンフェスで総合演出を務めた和田代表。その縁でトキエアの長谷川政樹社長と出会い、共同代表へのオファーを『二つ返事』で引き受けたといいます。
8月末、開催を2カ月後に控えた第2回の燕三条ジャパンフェスに向けた打ち合わせ。
■トキエア 和田直希共同代表
「(Q.トキエア和田社長として手がける第一弾)そうですね、やりやすいですよね。県外から来ていただける導線を作れるので。」
11月2日に開催するフェスには、韓国を代表するボーイズグループ『iKON』のJAYさんや、グローバルガールズグループ『MADEIN』などをキャスティング。また、今回はLANDとトキエアの代表という二足のわらじで総合演出を担当。人脈と経験をフル活用する中でどう相乗効果を生み出すか、模索していました。
■トキエア 和田直希共同代表
「K-POPのアーティストが新潟に来ることもないし、燕三条に来ることも歴史上になかった。そこがトキエアとLANDができる地方創生のひとつの形ではある。」
来日する海外アーティストの玄関口には新潟空港を使う予定で、トキエアのPRにも比重を置きます。
■トキエア 和田直希共同代表
「全出演者のSNSのフォロワーを足すと、少なく言っても2000万人を超えている。トキエアの一番大きな課題は、まず認知されてないところ。まず認知がとれるようなことをするといいのかな。」
エンタメ業界から、航空業界への異色の参入。
その思いの原点はー
■トキエア 和田直希共同代表
「街づくりをずっとしたかったんですよ。街づくりをしたいからずっとインドネシアでやっていて、日本と違ってインドネシアは株式会社が世田谷区くらいの街を持っている。その中に行政を呼び込んでいい街を作っていく。いい形での競争があるので、政治力以外のビジョンなどで街が良くなっていく姿をけっこう見てきた。日本で航空会社を持っていれば、全部つなぎこんで『ヒト』と『モノ』と『コト』がすごく行き来するような世界を作ると、やっと流動性が高まっていい街になる。」
地方の空洞化を食い止め、航空会社を中心に様々な〝産業〟を生み出したいと語ります。
■トキエア 和田直希共同代表
「明治維新の後は、農業もあったと思うが(新潟県は)人口が1位だった。もう一回1番にしたい気持ち、やっぱりあるんですよ。」
主に、マーケティング部門を統括する和田代表。予定されるイベントなどはすべてチェックします。打ち合わせ中、ふと目を通した資料に表情が変わりました。今後のタイムセール計画について、内容と見通しの甘さを担当社員に指摘。
社員の意識改革も、大きな課題です。
■トキエア 和田直希共同代表
「タイムセールひとつにしても、弊社の利益を圧迫する話。でも、中長期的に見たらそれがなくちゃんと売りきれたら、利益が確保できて従業員の給料があがって株主に還元できてという四方良しになるような意思決定が考えずに習慣でやっているんじゃないか。これパッと答えられたら立派だなとなるんだけど、ちゃんとやらないとダメになる。」
社内の経営会議-
冒頭のみ撮影が許可されました。和田代表は8月にトキエアの株式を30%以上取得。筆頭株主となりました。
■トキエア 和田直希共同代表
「まずデジタルマーケティング、月500万円くらいの予算を見ていたが1回落としています。マーケティングによって利益・売り上げは多少上がってはいるが、出ていくお金のほうが多い状態だったので。」
隣に座るのは、共同代表で創業者の長谷川政樹社長。
和田代表のネットワークや資金調達力に期待をかけて、経営への参画を呼びかけました。航空業界経験者ではない和田さんの助言が「新鮮だ」と語ります。
■トキエア 長谷川正樹社長
「私自身もずっと(航空)業界にいて、こんなの当たり前だよねと思っていた話が外から見るとそうじゃないよね、どうしてって。われわれもそこはきちんともう一回考えて、もっと良いやり方があるんじゃないかという良い機会がそこら中で起こっている。」
支援者へのあいさつまわりも、自身の仕事。この日も株主の会社を訪れ、トキエアの展望について語ります。
■トキエア 和田直希共同代表
「今までは拡大路線だった。1日1便だけどいろいろな空港でやっていくというところが、もともと経営の方向性。僕は今の路線でイレギュラーなところはチャーターでやっていって、そこで収益をとりながら既存路線はいかに往復を積んでいくか。」
設立以来、路線を拡大してきた一方、赤字が続くトキエア。
東京航空局によると、トキエアの2025年5~7月の利用率は名古屋・神戸線で約60%台後半、札幌丘珠線に関しては50%台にとどまり、採算ラインとされる70%には届いていません。2024年12月~2025年1月にかけては、天候と機体トラブルの影響で一時全便が運休するなど利用者の混乱も招きました。
さらに、県が約12億円を融資。2024年は3億円あまりの補助金がおりていて、県民の税金に支えられていることも事実です。
県民や株主からは、足元の不安定な経営を懸念する声は少なくありません。県関係者は「和田さんがどんな人なのか、本当に黒字化できるのか見えない」と不安も吐露します。
■トキエア 和田直希共同代表
「(Q.税金が使われている責任はどう考えている?)僕はめちゃくちゃあります。すごくあります。新潟県を盛り上げる、インフラで便利にする意味ではじめにかなりご支援していただいているので。」
今後、年内には資金調達にめどをつける見通し。
2026年末には単月での黒字、2027年度には通年での黒字化を目指す考えです。
■トキエア 和田直希共同代表
「横に広がるのが決して拡張ではない。より安心した何時にいってもこの就航地に行けるというところではある意味拡大なんだけど、やはりいま飛んでいる路線、新潟・名古屋・札幌・神戸、この4都市で分厚い商売をしていきたい。」