2025.10.09【特集】中学校の部活動を“学校”から“地域”へ:長岡市で休日にスタート「部活動の地域移行」現状と課題は?【新潟】
文部科学省が全国で進めている政策「部活動の地域移行」
中学校で行われている『部活動』。国は、活動の主体を〝学校〟から〝地域〟へ移す方針を示しています。
長岡市では、9月から市内一斉に休日の部活動を地域に移行しました。現状と課題を取材しました。
長岡市の宮内中学校の体育館-
生徒たちがバスケットボールの練習に励んでいますが・・・、それぞれ違う学校の練習着を着ています。これは、学校の部活動ではなく『地域クラブ』の活動です。
参加しているのは、長岡市内4つの中学校の26人。平日はそれぞれの学校の部活動で練習し、毎週土曜日だけこの地域クラブで活動します。
■指導にあたる中学校の教師
「目だけ(動かすと)相手が反応してくる。反応させれば次にチャンスが来る。ディフェンスを反応させなかったらチャンスは来ない。」
指導にあたるのは、バスケの経験がある地域の人や活動への参加を希望する中学校の教師です。長岡市では、9月から土・日・祝日の部活動を全中学校で廃止し、『地域クラブ』に移行しました。
生徒たちは、この変化をどう受け止めているのでしょうか?
■参加した生徒
「オフェンスのときに考えることや、学校では学べないところが分かった。」
■参加した生徒
「初めての人のプレーを見るのも楽しみだし、知らない人とやるのも楽しみ。」
■参加した生徒
「知らない人とプレーしたが自分のためになる練習ができた。人数もいっぱいいるので『地域クラブ』の方がいい。」
〝部活動の地域移行〟は、文部科学省が全国で進めている政策です。新潟県は国の重点地域に定められていて、2026年3月までに土・日・祝日の活動は『地域クラブ』で行うことを目指しています。
長岡市は、9月から土・日・祝日の〝地域移行〟を一斉にスタートさせました。
■地域クラブコーチ 中野秀一さん
「学校ごとや仲のいい子で集まると思ったがそういうことはなかった。これから新人戦もあるし、このチームで新たな歴史を作っていけたら素敵。」
活動を担うのは、市が認定した地域クラブ『ながおかCome100(こめひゃく)クラブ』です。バスケの他、陸上や野球・柔道など運動系が13競技、文化系は吹奏楽・合唱・美術・デザインの4領域、合わせて84クラブに約1300人が参加しています。
大会などは週末に行われることが多いため、今後は部活動ではなく『地域クラブ』として出場することになります。
■地域クラブコーチ 中野秀一さん
「4つの中学校が集まって、それぞれの学校で継承されてきた部活の伝統を引き継ぎながら、新たな歴史をこのメンバーで作っていきたい。」
〝部活動の地域移行〟
国はなぜ進めているのでしょうか?
■東北中学校 大関邦子教諭
「ケガしないように1回1回練習頑張ってください。」
長岡市立東北中学校のバスケ部顧問・大関邦子先生。1年生の学年主任で、授業は数学を担当しています。毎朝7時に出勤し、1日4~6コマの授業を担当。それ以外に体育祭など学校行事の打ち合わせや、次の授業の準備に追われます。
そして、放課後-
息つく暇もなく、部活動の指導が始まります。顧問は練習中の安全管理などのため、毎日必ず参加しなければなりません。大関先生はバスケの経験はなく技術的な指導はできないと言いますが、チームワークの大切さなどを学んでほしいと考えています。
午後5時、部活動が終了-
職員室に戻った大関先生は、学年主任として各クラスの担任から生徒の様子を聞くなど仕事は続きます。
■東北中学校 大関邦子教諭
「たぶん、みんな大変。担任の先生は他にも子どものノートを見たりして1時間は最低でもかかるので、放課後や家でやることになる。」
この日仕事を終えたのは、午後8時。朝7時の出勤から約13時間の勤務となりました。
県教育委員会が2025年4月の中学校教師の労働時間を調査したところ、厚労省が過労死ラインとしている80時間を超えた教師が8.9%。労働基準法で上限に定められる45時間を超えたのは50.8%でした。
大関先生は、〝部活動の地域移行〟によって負担が減ったと言います。
■東北中学校 大関邦子教諭
「土日の部活がなくなったので自分の時間が作れるようになったし、時間を自由に使えるようになったのは変化があった。」
〝部活動の地域移行〟は、少子化が進んでいることも理由の一つです。
長岡市の担当者に聞くとー
■長岡市学校教育課 中村一幸課長
「生徒が希望する種目の活動の場が校内になかったり、単独で練習はできるがチームの編成ができなかったりする。」
長岡市では、2024年までの20年間で中学生の数が約2300人減少。各学校の部活動の種類が減っていたり、団体競技ではチームが組めなかったりするなどの影響が出ています。そのような課題は、地域移行によって改善できると期待されています。
長岡市が認定する地域クラブの一つ『ながおか東バドミントンクラブ』。
4つの中学校から9人が参加していますが、ほとんどの生徒がバドミントンの経験がありません。
■参加した生徒
「(部活は)吹奏楽をやっている。自分の中学校はバドミントン部がなかったので、1つ特技になると思って始めた。」
『地域クラブ』にはどの学校の生徒も参加できるため、希望にあった活動ができる可能性が広がりました。
■地域クラブコーチ 横山幸信さん
「うまく当たらなくてもいい。自分自身の体をしっかり回す。」
指導に当たる横山幸信さん。長岡市の職員で、長年バドミントンの指導をしてきたベテランです。
『地域クラブ』には他にもメリットがあるといいます。
■地域クラブコーチ 横山幸信さん
「学校の先生は専門種目でない競技を担当する機会が多いが、地域クラブは専門の競技の経験者が指導するので高いレベルを目指すこともできる。」
一方、『地域クラブ』には課題もあります。
■保護者
「Come100クラブの会費と保護者会費があるので負担が増えた。」
長岡市の地域クラブでは、参加費として月3960円を負担しなければなりません。指導者には1回5000円の報酬が支払われることになっていて、その費用に充てられます。
保護者は送り迎えをしなければならず、それも負担になっています。自宅から活動場所まで6kmを超える場合は、参加費を1000円割り引くことになっています。
■地域クラブコーチ 中野秀一さん
「子どもたちや保護者には負担がある。競技人口が減ってしまう懸念があるが、子どもたち一人ひとりに寄り添いながら、ニーズにあったクラブを作っていけたらいい。」