2025.07.04【特集】歩くサッカーで「偏見なくし壁を壊す」左半身のまひ・言語障がいのある男性の活動を追う【新潟】
「健常者との壁を壊す」ことを夢に持つ田中一馬さん
左半身のまひと言語障がいがある男性が、歩くサッカー『ウォーキングフットボール』に取り組んでいます。スポーツを通じて偏見をなくし、歩くサッカー『ウォーキングフットボール』に取り組んでいます。スポーツを通じて偏見をなくし「障がい者と健常者の壁を壊したい」と活動する姿を追いました。
体が不自由でもボールを蹴りスポーツを楽しむ!
「私たちにしかできないことをするために、神様が障がいを与えたと思っています。」
自身の経験を、子どもたちに伝える活動をしました。
田中一馬さん、46歳。言語障がいがあり話すことができないため、ジェスチャーやパソコンの出力アプリ・文字盤を使って会話します。
■柿木哲哉記者
「プレーとしてはどう?」
■田中一馬さん
「(手で×)」
■柿木哲哉記者
「あんまりよくなかった?」
■田中一馬さん
「(身振りで、うん)」
■柿木哲哉記者
「これから頑張る?」
■田中一馬さん
「(身振りで、うん)」
田中さんが2年前から始めたのは、歩くサッカー『ウォーキングフットボール』です。
走ってプレーすることができず、体の接触やヘディングも禁止!年齢や性別、障がいのある・なしに関わらず楽しめることが魅力です。
田中さんは左半身にまひがあり、自身の体と向き合いながら練習を重ねてきました。
■田中一馬さん
「ウォーキングフットボールを通じて実現したい夢は、障がい者と健常者の壁を壊し、誰もが楽しめるスポーツの場を作ることです。すべての人々が希望を持ち、スポーツを通じて絆を深める社会を築いていきたい。」
障がいの原因は1歳のとき。40℃近い熱が数日続いたことで、左半身のまひと言語障がいが残りました。3年前に障がい者の訪問介護を行う「ヘルパーステーション ごきげん」を設立。自身の経験から希望する時間に介護を受けられるサービスを提供しています。
田中さんのチームの監督を務める野口光一さん。
■HUMAN 野口光一監督
「彼がすごいのが車に乗ってくる。1人であっちこっち行って、すごい活動力を持っている。」
ウォーキングフットボールは、国民スポーツ大会の「デモンストレーション競技」にもなっていて、田中さんは6月に新潟県代表のメンバーとして出場。結果は3勝1分で、グループリーグ内では1位だったそうです。
■田中一馬さん
「チームのみんなと力を合わせ、グループリーグは1位になれてとてもうれしかったです。でも思ったようにできなくて、もっといいパスが出せたのにと自分に言い聞かせています。次はすごいアシストができる人になりたい。」
先週、チームのメンバーと出雲崎小学校を訪れました。6年生を対象にウォーキングフットボールの体験会が開かれ、田中さんは講師を務めました。
■田中一馬さん
「心の中には見えない壁があります。どう声をかけたらいいのかな、なんだか難しそうだな、そんな気持ちは誰にでもあると思うんです。でもね、大事なのはまず(違いを)知ろうとしてくれること。それだけで見えなかったりしたものが見えてきたり、感じられなかったことが心に届いたりします。」
自分が会話やプレーができる姿を見せることで「障がい者への偏見をなくし、壁を壊したい」という思いで講師を引き受けました。
〝壁〟を感じるようになったのは、幼少期の体験からでした。
■田中一馬さん
「小学校と中学校は普通の学校で勉強しました。障がいのことで、いじめられることもありました。例えば、授業中にシャープペンで刺されたり、テスト中に消しゴムのカスを投げられたり、掃除中は転ばされたり泣かされることもありました。」
体験会では、日常生活に欠かせない文字盤を使って児童と触れ合いました。
■児童
「好きな食べ物とかありますか?」
■田中一馬さん
「(にく)」
そして試合を体験、歩くサッカーの魅力に触れました。
「健常者との壁を壊す」ことを夢に持つ田中さん。障がいは個性であり、もっと自分たちを知ってほしいと伝えました。
■田中一馬さん
「みなさんは障がいを持っている人を見ても、普通に接していい。障がいはみなさんと同じように、ひとそれぞれにある個性や特徴だと思います。」
■小学6年生
「最初は(スポーツ)できるのかなと思ったけど、協力しながら楽しくできたので障がい者でも比べないで生きていけるようになりたい。」
■小学6年生
「一馬さんをみてて、いいプレーをしていて障がい者でもいいプレーができると思った。」
■小学6年生
「障がい者のみなさんとも一緒に社会を上手に生きていきたい。」
今後の目標については-
■田中一馬さん
「障がいがあってもなくても、自然に笑いあえる社会を作ることです。心の壁もまだたくさんある。だからまずは知ってもらう、できる姿を感じてもらう、線を引かず同じ場所で過ごせる社会にしたい。すぐに叶うことではないけど諦めずに笑顔の輪を広げていきます。」