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2026.05.27【特集】現場の戸惑い・・・「工事まで30年待ち!?」財政難に揺らぐ農地整備:県政課題の実情を深掘り②「農業」【新潟】

【特集】現場の戸惑い・・・「工事まで30年待ち!?」財政難に揺らぐ農地整備:県政課題の実情を深掘り②「農業」【新潟】
農地整備とは
県知事選挙を機に考える県政の課題。2回目は『農業』、とくに農地整備について取り上げます。取材にあたった千葉記者に伝えてもらいます。

―――農地整備とはどのようなものなのか?

■千葉卓朗記者
「農地でいろいろな工事をするのですが、主要なものを挙げるとすれば『農地』を広げることです。一つの農家が所有している水田が飛び地のように点在していて、かつ、ひとつひとつが小さいと機械も入れにくく農作業に手間がかかります。それをできるだけ集めて、一つ一つの田んぼを大きくすれば作業を効率化できます。このように、生産性を上げるために農地を整えるのが『農地整備』です。」

これにどのような問題があるのでしょうか。

■千葉卓朗記者
「国や県などはいま農地整備を推進していて、農家のニーズも高いのですが、じつは新潟県では『工事まで30年待ち』という状況が生じているんです。農地整備をめぐる現状を取材しました。」


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新潟市西蒲区の針ヶ曽根地区。83.4haの農地を大規模化する工事が数年前から続いています。総工費は約26億4000万円です。

■新潟地域振興局巻農業振興部 三浦利明農地整備課長
「道路から道路の間に10aの圃場(ほじょう)が約10枚、1枚にならす(統合する)作業で1haの圃場を作る。この工事区域は1haの圃場が5枚あり、トータルで5haくらい作業している。(Q.50枚あった田んぼが5枚になる?)はい、そうです。」


こちらは、一部工事が完了した新潟市西区の笠木地区。田んぼ1枚当たりの面積が大きく広がっているのがわかります。『農地整備』は、田んぼを広くするだけではありません。

■新潟地域振興局巻農業振興部 三浦利明農地整備課長
「従前の田んぼの用水ですけども、ぐるっと(パイプを)回しますと向こうの用水路から水が流れ出てくる仕組みになっています。(Q.全部手作業?)いちいち農家が来て、くるっと回して手間がかかります。各圃場に1カ所ずつあります。(Q.50枚あったら50回やることに?)そういうことです。」

古い灌漑(かんがい)設備を更新するため、水を送る配管を地中に埋め込む工事も行います。

■新潟地域振興局巻農業振興部 三浦利明農地整備課長
「新しくなった施設。このようにハンドルを回すと水が簡単に出る仕組みです。」

農地整備の目的は、農作業の効率化です。30年以上前、約36万人だった県内の農業従事者は2020年時点で約11万人。3分の1以下になりました。作業効率を3倍以上に高めなければ、農業を維持していけない状況です。

県内では、農地整備のニーズが高まっています。きっかけは8年前に国が打ち出した政策でした。事業費のうち、農家の負担をゼロにしたのです。窓口となる県には申請が殺到しました。ただ、そのニーズは県の想定を超えていました。

2026年3月時点で、着工を待つ農地は約1万2000haにまで積みあがりました。農地整備の事業費の負担割合は、国が62.5%、県は27.5%、残りが市町村です。厳しい財政状況の中、県が整備できるのは年間約400haが限界。すべての工事を終えるのに30年かかる計算です。

新たな整備は『30年待ち』という状況が生じました。そして、県は2024年9月、農地整備の新規受け付けの休止を通知したのです。

■県農地計画課 髙橋雄司課長
「(Q.休止の理由は?)制度上なんとか県の負担が少ない形を模索して、完全にやれることをやり尽くしたような状況。1万2000haを400で割ると〝30年〟。正直言って30年でもパンクしている。これ以上新しい地区をとって1万2000をさらに積み上げても誰も幸せになれませんよね。一回切って整理整頓して未来につなげていこうと考えて一回休止させていただいた。(Q.ニーズの高さは想定以上だった?)想定以上ですね。」


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農地整備の要望が多すぎて県の想定を大幅に超えてしまい、対応が追いつかないということですね。

■千葉卓朗記者
「これには、新潟特有の事情もあるといいます。そもそも新潟は、30a程度以下の小さい農地が多く、県内の全農地の3割・5万ha以上もあるんです。水田でみると整備率は66.2%で、全国平均を下回っています。北陸地域でみると福井・石川・富山の3県は整備率が8割を超えています。他県に比べて農地整備が遅れている理由ですが、海抜が0m以下のエリアが広がる新潟の平野部は、排水をし続けないと水で沈んでしまう特有の地形です。これまでは、排水設備の整備にコストをかけざるを得ず、農地整備の方が遅れてしまったと県の担当者は認識しています。そこに、農家の負担ゼロの制度ができて、一気にニーズが高まったという状況です。」

県の予算は増やせないのでしょうか。

■千葉卓朗記者
「予算が増やせない背景には、新潟県が多額の『借金』を抱え、新たな借金をするには国の許可を得なければならない状況があります。県は県債の発行に一定の制約をかけているので、高まるニーズに応じて十分な予算をつけられない状況です。」

『30年待ち』という農地整備の現状。戸惑いが広がる現場の声を紹介します。


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南魚沼市の嶋田悟さんは6年前に父親の水田を引き継ぎ、専業農家に転身しました。約10aの田んぼ約20枚でコメを作っています。この地区でも数年前に農地整備の話が持ち上がり、嶋田さんは推進委員として地権者から仮同意を集めていました。

■嶋田悟さん
「仮同意は95%は超えている、97%くらい。今年2月くらいの段階ですけどね。」

しかし・・・。

■嶋田悟さん
「2月の会合があったときに県から『予算がない』『申し入れはストップする』と。」

地区では、田んぼを若い農業者に譲りたいという人が増えています。

■嶋田悟さん
「若い農家たちが法人を立ち上げたり、田んぼを借り受けてこの地のコメ農業を発展させてほしい。受け継いできた土地をコメ作りの文化をなくさないでほしい。そのためにも、経営が成り立つようにしてあげないと、いくら思いがあっても食べていけなければできませんので。僕が生きている間に、この基盤整備事業が終わるのかどうか。」


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大規模化に取り組む法人も困惑しています。

■株式会社農tist 廣田大造さん
「これで1kg1000円なので3000円になります。」

4年前に、同世代の農家とともにコシヒカリを生産・販売する会社を立ち上げた廣田大造さん。高齢のため農業を離れた人などから農地を任されるようになり、現在24ha・266枚の田畑を耕作しています。

■株式会社農tist 廣田大造さん
「ここから7枚がうちの圃場で、2枚他人の(田んぼ)をはさんで、その下にまた1枚(廣田さんの田んぼが)あって。その下2枚また他人の、こっちも1枚あって。1枚他人の、2枚がうち、1枚他人の、2枚うち、みたいな感じ。(Q.作業効率は?)非常に悪いです。」

こちらが、廣田さんが担う田んぼ。飛び飛びに位置しているのがわかります。機械を使っても一枚の面積が狭いうえ、田んぼから田んぼへの移動に時間がかかります。

より多くの農地を引き受けるために、農地整備に期待しているという廣田さんですが・・・。

■株式会社農tist 廣田大造さん
「30年後どういう農業の体系ができあがっているか、まったく想像ができない。30年たつと私も70歳を超えています。スピード感がもう少し欲しい。」

魚沼産コシヒカリの生産を受け継いでいきたいと考えています。

■株式会社農tist 廣田大造さん
「(田んぼを)引き受けたいし 引き受けないといけないが、自分たちの作業が追いつかないと結局荒らしているのと変わらないことになってしまう。(限界が)迫ってきていますね。」

現場が直面する課題に、県はー

■県農地計画課 髙橋雄司課長
「我々もただ手をこまねいているだけではない。新しく国が創設した『大区画化等加速化支援事業』。簡単に言うと〝あぜ抜き〟です。(財源は)国の補助金だけ、(県の持ちだしは)ない。」


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現場の農家のみなさんの声は切実です。
県の対応は十分なのでしょうか。

■千葉卓朗記者
「農地整備をできるだけ進めるため県が力を入れ始めているのが、国の新しい補助事業です。これは田んぼを仕切っているあぜを取り除いて広げるという工事に国が定額を補助するもので、法人も個人も対象です。県の負担はゼロということで、県はこの制度の積極活用を呼びかけています。」

『30年待ち』の状況は解消されるのでしょうか?

■千葉卓朗記者
「簡単ではありません。予算以外にも制約の要因があるからです。そのひとつが『物価高』。例えば灌漑(かんがい)設備の整備では、塩化ビニル製のパイプが大量に使われます。紹介した針ヶ曽根地区では総延長で長さ10km分の塩ビ管が使われますが、ある大手メーカーは12%以上値上げすると4月に発表しました。予算が増えたとしても、資材価格の高騰が続いて値上がり分に吸収されてしまえば、整備の面積を広げる方につながりません。物価高のような課題はあらゆる分野に共通しており、農地整備の分野だけで解決できるような状況でもありません。こうした中で何ができるのか、官民あげて知恵を出し合っていくことが必要とされているといえます。」
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