2025.07.22【特集】野党共闘の裏側「ガラス細工」当選8回のベテランから冷静な声も:参院選 再選の立憲・打越さん【新潟】
打越さんに対し冷静な声も
20日投開票の参議院選挙は、立憲民主党の打越さく良さんが自民党の中村真衣さんに競り勝ち、2回目の当選を果たしました。前回の参院選に続き、既存の野党が事実上一本化し打越さんの勝利につなげましたが、『共闘』にほころびも見えました。
打越さんの陣営で心配されたのは、現職ながら知名度不足でした。
今年4月の地元回りでは-
■立憲民主党 打越さく良氏
「ありがとうございます。頑張ります。」
■有権者
「市とは関係ないの?市の方とは。」
■立憲民主党 打越さく良氏
「参議院ですが、国会の。」
自民党は、オリンピック銀メダリストの中村真衣さんを擁立。知名度勝負に打って出ました。公示直前に開かれた最大の支援組織・連合新潟の決起集会。小林会長は、危機感を募らせました。
■連合新潟 小林俊夫会長
「私の耳には、あまり打越さんの活動がなかなか見えないんだと、分からないという話も聞こえてくることがあります。新型コロナがあったじゃないですか、ウイルス禍が。なかなか活動が見えないと言われるのも仕方がない。」
前回は無所属で立候補し、立憲・国民民主・社民・共産が推薦。自民の現職を破り、野党共闘の象徴となった打越さん。
今回は、立憲の公認候補として立候補しましたが、動きに乱れが-
今年1月に開かれた立憲・国民民主・社民・連合による4者会議。立憲の西村県連代表が呼びかけました。
■立憲民主党県連 西村智奈美代表
「ぜひ皆さんから(陣営に)入ってもらって、打越さんの選挙を支えていただきたい。」
しかし、国民民主だけが首を縦に振りませんでした。2024年の衆議院選挙で、全国的に大きく議席を伸ばしたのが理由でした。
■国民民主党県連代表 上杉知之県議
「大躍進。この新潟県でも比例区で比例票、前回を上回る倍増。」
■国民民主党 玉木雄一郎代表
「具体的に打越さん、立憲民主党の候補予定者に対してどう取り組むかは未定。」
連合にも変化が・・・。
4年前に初の女性トップとなった芳野友子会長は、共産党との選挙協力に否定的な路線を強めました。連合新潟が打越さんと政策協定を結ぶ際に『付帯事項』として出した文書。そこには、共産党の選対入りを拒み、連携しないよう求める強い文言が並んでいました。
2025年4月に発足した打越さんの陣営に、国民民主の姿はありませんでした。国民民主は比例候補の応援に専念。共産は打越さんの自主支援を決めました。
この動きに立憲幹部は-
「今回はガラス細工の野党共闘だ。」
迎えた選挙戦。2024年の衆院選で全勝した勢いを生かし、立憲の5人の衆議院議員が打越さんと二人三脚の活動を展開しました。演説では、物価高やコメ対策に力を入れました。
■立憲民主党 打越さく良氏
「物価高から暮らしを守らないといけない。食料品の消費税減税。新潟は農業県。戸別所得補償制度をバージョンアップし、農地と食料を守る。」
■立憲民主党 菊田真紀子衆院議員
「自民党の候補、素晴らしいアスリートでも政治に関しては、ど素人。」
■立憲民主党 黒岩宇洋衆院議員
「背泳ぎが早いより、法律を作る国会議員の方がいい。」
連合への配慮から踏み込んで訴えていなかった柏崎刈羽原発の再稼働については、公示日から触れるように。
■立憲民主党 打越さく良氏
「避難計画の実効性を確保し、地域の民主的な手続きを経た合意がない限り、原子力発電所の再稼働は認められない。」
選対本部長は、再稼働をめぐり県民投票の署名集めを行った水内弁護士。陣営幹部は「約14万筆に上る署名集めの熱気を取り込む戦略だ」と明かしました。ただ、原発そのものには反対せず、自民党などが否決した県民投票条例案に的を絞る、考え抜いた表現でした。
選挙戦中盤の15日、2度目の応援に駆けつけた立憲の野田代表は、魚沼地域へ。
■立憲民主党 野田佳彦代表
「魚沼、新潟県。車社会ではありませんか。(ガソリン減税法案が通れば)40L給油すれば1000円安くなる。衆議院では少数与党に追い込んだから賛成多数で可決できた。参議院は今も自民党・公明党だらけで邪魔されてしまった。行きあたりばったり農政が、今の小泉農政ではありませんか。」
自民票を引きはがす狙いでした。
■コメ農家
「今までコメ作るなと言われて減反してきた、長年。今コメ不足になって作れと言われても。」
翌日-
陣営と距離を置いていた国民民主の上杉県連代表が姿を見せました。要請したのは、立憲の西村県連代表でした。
■立憲民主党県連 西村智奈美代表
「ありがとうございます。よろしくお願いします。暑い中。野田総理級ですから。」
■国民民主党県連代表 上杉知之県議
「そんなに力ないので。個人として(来た)。だから(党シンボルの)うさぎのマークは一切つけていません。(Q.立憲としてはメリット?)そうでないと呼ばれないですよね。」
■立憲民主党県連 西村智奈美代表
「上杉知之県議会議員も駆けつけてくれている。」
■国民民主党県連代表 上杉知之県議
「志を同じくし、多少のやり方の違いはあるかもしれないが、しっかりとこの国を間違った方向から正しい方向へと少しでも変えてもらえる、そんな仲間の党を応援していきたい。」
一県議として、一回限りの応援。連合新潟の小林会長も見守りました。
一方、自主支援の共産は・・・
■共産党 田村智子委員長
「新潟選挙区、打越さく良さん。この勝利で自民党・公明党、確実に少数へと追い込んでいこうではありませんか。」
選挙戦最終日。野田代表が異例となる3回目の県内入り。
演説会場に選んだのは-
■立憲民主党 野田佳彦代表
「JAが軒先を貸してくださった。これはうれしいことじゃありませんか。」
自民の弱点を突きます。
■立憲民主党 野田佳彦代表
「JAを悪玉にしていますよね。責任転嫁するのはやめた方がいいんじゃないですか。(コメの)需給見通しを誤ったのは政府じゃないですか。野党の事実上の統一(候補)という形で支援をいただいている。自公政権の過半数割れが実現できるあと一歩まで来た。この新潟は、この新潟は打越さく良、打越さく良。激戦ですよ。1区から5区までしっかりした総支部長(衆院議員)がいるので、その辺が全力を出してくれれば勝てると思っている。」
直前に決断した、3回目の県内入り。
17日間の選挙戦。最後はJR新潟駅前を選びました。
■立憲民主党 打越さく良氏
「どうかこの新潟から私が勝つことで、参議院から新潟から政治の風景を変えていこうではありませんか。」
迎えた開票日。
■立憲民主党 打越さく良氏
「政治の風景を変えていきたい。県民の勝利。本当にありがとうございます。」
政権批判票の受け皿を参政党に取って代わられた立憲。薄氷の勝利でした。
■立憲民主党県連 米山隆一幹事長
「tじゅたない運営で本当に皆さんにはご迷惑をおかけしたが、勝てば官軍というか勝てば許されるということでご容赦いただきたい。」
歓喜に沸く会場に、共産党県委員会のトップの姿がありました。
■共産党県委員会 樋渡士自夫委員長
「良かった。(自民に敗れた)3年前の二の舞いになるのではと心配した。私たち自主支援にして、打越さん勝利のために全力をあげた。ただ(共産の)共闘の排除は何とか無くしていきたい。」
■連合新潟 小林俊夫会長
「緩やかだが、6年前に近い形にはなったのではないか。共産党は自主支援と聞いていたので、何の受け止めもない。」
打越さんに対し、冷静な声もありました。
■立憲民主党 菊田真紀子衆院議員
「選挙の時だけでなくて、新潟県民の声を足を運んで聞いて、皆さんの期待に応えられるよう精いっぱい頑張っていただきたい。」
どういうことか-
選挙戦終盤、当選8回のベテランはこう語っていました。
■立憲民主党 菊田真紀子衆院議員
「今回の選挙も正直、初めて(打越さんを)見ました、聞きましたという人が大半じゃないですか。衆院議員が5人いたから何とかなったけど、そうじゃなかったらとてもじゃないけどここまでできなかったと思う。次は自力でやれるように成長してほしい。」
表向き保たれたように見える野党共闘。
しかし、参政党に多くの票を奪われた中、この体制が今後も有権者に受け入れられるのか。課題は残されたままです。