2025.10.10【特集】1人の中学生の願いからはじまり10回目「トチオノアカリ」奮闘する学生に密着【新潟・長岡市栃尾】
次なる課題は〝定住する人口〟につなげるか
長岡市栃尾地域を盛り上げようと毎年開催されている『トチオノアカリ』。地域活性化について学ぶ学生たちが、栃尾の魅力を発信しようと奮闘する姿に密着しました。
長岡市栃尾のメインストリート谷内(やち)通り、秋の恒例イベント『トチオノアカリ』今年で10回目を迎えました。
はじまりは地域活性化のアイデアを募るコンテスト。1人の中学生が大人を動かしました。
■トチオノアカリ協議会 田中浩一副会長
「『栃尾の町が最近元気がないので、ランプで谷内通りを明るくしたい』これを実現できる団体はないかということで声がかかった。」
かつて繊維工業で栄えた栃尾地域。
ランプには、糸を巻き取るために使われていた“糸繰り木枠”を使います。
■トチオノアカリ協議会 田中浩一副会長
「全部でランプとしては1500個くらい並ぶ。栃尾がにぎやかだったときの象徴が〝糸〟だったと思う。木枠や栃尾の糸を使ってランプを作ることは意味がある。」
高齢化が進む栃尾地域-
長岡市によると、人口は15年前と比べ7000人ほど減少。最近は毎年500人ほどのペースで減っています。
協議会は、働く場所が少ないことや豪雪地帯であることが影響しているのではと分析。危機感をもって活動しています。
■トチオノアカリ協議会 田中浩一副会長
「出生数もどんどん減って、学校を維持するのも難しい状態にはなってきている。栃尾を知ってもらうきっかけとして『トチオノアカリ』に来てもらう。」
栃尾地域の活性化をテーマに活動している長岡大学の石川ゼミ。
3年ほど前から『トチオノアカリ』に参加しています。イベント前日に並べていたのは、地元の保育園・小学校と協力して作った〝ランプ〟。
■長岡大学石川ゼミ 佐藤仁さん(4年)
「夏休みの宿題でお願いして書いてもらったのを展示している。小さい子でも見えるように、かぶらないように見やすい位置に置く。」
準備段階から協議会と協力し、空間アート作品の展示のほか 焼きそばの販売やイベントの企画・SNSでの発信などを担います。普段は経済や経営について学ぶ学生たち。交流人口拡大を目指して、栃尾の魅力を訪れた人に伝えリピーターを増やせるよう取り組みました。
■長岡大学石川ゼミ 波夛野慎ゼミ長(4年)
「人がどういう動きをしているのか、そういう知識を大学で学んでいるので(どうやって)より多くの人に来てもらうのか、大学で学んだことを生かしていける。」
ゼミ生で唯一、栃尾出身の吉原晴也さん。地元に関わる活動がしたいとゼミに入りました。
■長岡大学 吉原晴也さん(3年)
「トチオノアカリは始まったときから見ています。普段は夜、真っ暗で歩きづらいけど『トチオノアカリ』があると明るく照らされて、普段見れない景色を見られる。」
ゼミでは、アートづくりやフード販売に必要なお金を地元の商工会に出資してもらい管理しています。
■長岡大学 吉原晴也さん(3年)
「どうしたら活動に賛同してもらえるのかを考えながら、説明することで学びを得ている。」
吉原さんは活動を通して、あらためて〝栃尾の魅力〟に気が付きました。
■長岡大学 吉原晴也さん(3年)
「手伝ってもらうとか道具を貸してもらうとかで人の温かさを感じる。栃尾外から来た人にもっと栃尾を知ってもらえるイベントにしたい。」
協議会のメンバーとの交流も学生にとって貴重な経験。
イベント当日、学生たちが準備していたのはー
■長岡大学石川ゼミ 山崎蒼弥さん(4年)
「スタンプラリーの場所を地域の観光スポット・神社に置いて、参加者に楽しんでもらおうというのを準備しています。」
訪れた人に幅広く地域を回ってもらおうという狙いです。ランプの点灯まで学生たちは準備を進めます。
「去年よりこの看板ちょっと大きめのやつで、こういう感じで置いたらどう。」
■谷内通りで店を経営 広野光春さん
「こういう力は非常に栃尾にとってありがたい。お年寄りはいっぱいいるけど若い人は少ないから、若い人たちに手伝っていただけると非常に私たちは勇気・元気をもらう。」
10周年の今年は、イベントが始まるきっかけとなった当時の中学生で、東京藝術大学の大学院に通う高見梨花子さんが自身の作品を展示。同世代である学生たちの参加を歓迎します。
■イベントを発案 高見梨花子さん
「若い人たちが今後続けていくと思う。そういう方々が『トチオノアカリ』を引き継いで、いつまでも続けていければと思う。」
午後5時ごろー
灯りがともり始めます。
学生たちが運営するスタンプラリーも大盛況。
■長岡大学石川ゼミ 山崎蒼弥さん(4年)
「この時間にしては人が多いかなと思います。にぎわいが増していると感じる。」
地元の子どもたちと作った空間アート。お花畑をイメージしました。
「チューリップを描きました。」
「とても上手に描けていてきれいでした。」
栃尾出身の吉原さんは、焼きそばの販売ブースで接客と会計の管理を担当。
■長岡大学 吉原晴也さん(3年)
「商品と一緒にお会計を行いますので、1番でお呼びしますのでお待ちください。」
「一日100食が目安、半分近く売れている。残りの時間このままいけば余裕のペース。」
序盤は余裕の表情を見せていた吉原さんですが-
「整理番号3番でお待ちのお客様。」
「4番も呼んでいいと思う?あ~だめだね。」
■長岡大学 吉原晴也さん(3年)
「(客が)整理券を持ったまま遠くに行ってしまってなかなか配れない。お渡しできないということがあった。」
焼きそばは終了時間を前に完売、会計も問題なく完了しました。
■長岡大学 吉原晴也さん(3年)
「しっかりとメモと照らし合わせながらミスがないようにしていた。お渡しするときに笑顔で『ありがとう』と言われたり、『長岡大学がやっているんだ』と言っていただけて栃尾の活性化にも貢献できたと思う。」
協議会も学生たちの奮闘ぶりをたたえます。
■トチオノアカリ協議会 田中浩一副会長
「若い人たちの力って体力的にもそうだし、アイデアだったり柔軟性もあるので非常に勉強になっています。」
2日間の開催で、来場者数は1万2000人。
次なる課題は、交流からいかに〝定住する人口〟を増やすかです。
■長岡大学 吉原晴也さん(3年)
「栃尾の底力みたいなものを見られた。人を寄せ付ける魅力があると感じた。」
■トチオノアカリ協議会 田中浩一副会長
「栃尾の良さを発信して栃尾のファンを作って、そこから栃尾に移り住んでみたい人を1人でも2人でも増やしていければ。」