2025.07.31【特集】110年続く長岡市の〝車麩〟専門店「食感が他と違う」時代に合わせつなぐ歴史【この町で~愛される老舗~|新潟】
長岡市にある車麩の専門店『木宮商店』
長岡市に創業から110年、〝車麩〟をつくり続ける専門店があります。創業当初から続く製法を守りながら、時代に合わせた商品にも挑戦する5代目の思いを取材しました。
じゅわっと味がしみ込んだ柔らかな食感が特徴の〝車麩〟!創業110年、長岡市にある車麩の専門店『木宮商店』。
木宮商店の5代目・木宮大基(だいき)さん。4代目の父・信太郎さんと、日々、麩を作っています。車麩の主な原材料は、グルテンと小麦粉。機械で生地を混ぜ合わせていきます。
■5代目・木宮大基さん
「生地がどのくらい練りあがってきたというのを触って頃合いだなと思えば止めて取り出して。」
練りあがった生地を薄く伸ばしながら鉄の棒に巻き付けていきます。大基さんは初めのころ、生地を巻きつける作業に苦労したといいます。
■5代目・木宮大基さん
「1年くらいはうまく全然巻けなくて製品にはできない仕上がりのものが、5年くらい経ってだいたい良いのかなというような感じです。」
『木宮商店』定番の車麩は、4回巻き。麩の層が4層になっていて、生地を棒に巻き付けては焼き、これを4回繰り返します。
■5代目・木宮大基さん
「ここはやっぱりどうしても手でやらざるを得ないかなと。手でやることで何か違和感があればすぐ気づけるので、そういう点では非常に理にかなっていると思っています。」
この日、工場の温度は43℃。オーブンの温度を保つため夏場でも空調をつけないと言います。
■5代目・木宮大基さん
「あつ~。」
一日に焼く車麩は約4000枚。ひとつひとつ手作業で進められていきます。
■5代目・木宮大基さん
「機材とかは変わったとしても、製造方法自体っていうのは創業から変わっていない。」
“しっかりした食感で煮崩れしない”
100年以上変わらない伝統的な製法で、『木宮商店』自慢の〝車麩〟が作られます。
■5代目・木宮大基さん
「何代も続けて、原料と水の配合やこれからその日の気温とかによって時期に合わせてちょうどいい生地になるように、試行錯誤しながら生地は練っています。」
焼きあがった車麩は棒から外し、1日から2日休ませます。その後、蒸し器で柔らかくさせ、スライスするとよく目にする〝車麩〟に!最後は3日間、乾燥室に入れてようやく完成です。
■5代目・木宮大基さん
「乾燥していきますと水分が抜けていって、キュッと麩がちょっと縮むんですね。縮んでいく中で、少し割れちゃったりするのがあったりする。乾燥しきるまでは仕上がりがどうなるか分からないところもあります。」
完成まで約1週間、手間暇かけてつくられる〝車麩〟。そのお味は…特別に煮物にしていただきました。
■髙橋泉アナウンサー
「柔らかい、とってもふっくら。そして、しっとりしていて噛めば噛むごとにじゅわーっと味が染みてきて、とってもおいしいです。」
■5代目・木宮大基さん
「細かい分、汁もうまいこと吸ってくれるのかなと思う。食べたときにじゅわっとこう中のお汁が出てくるっていうような形ですかね。」
店頭に立つのは、5代目の母・満智子さんです。
■兵庫から買い物客
「彼女が連れてきてくれた。私が(友人の家で)この車麩を出してもらってあまりにもおいしいって騒ぎすぎて、『じゃあお店に買いに行こう』と連れてきてもらいました。」
■長岡市民 買い物客
「もう必ずストックがうちにあって、もどして冷蔵庫に入れておくっていうのをいつもしています。やっぱり食感が他のもの、他のところと違います。」
満智子さんは、麩のもどし方や麩を使った料理のレシピをまとめたリーフレットをつくり、お客さんに紹介しています。
■木宮満智子さん
「このあたりでは、給食で揚げ煮っていうのが出るんですよ。小学生のお母さんたちが、子どもが学校で出た麩を作ってって言うんだけどお母さんたちわからないとなって、じゃあレシピ作ってお母さんたちに配ろうって作った。」
町の人や観光客に愛され、長岡で110年続いてきた『木宮商店』。
しかし、店周辺は80年前の長岡空襲で焼け野原に。木宮商店の工場もその後建て直されたものです。
■4代目・木宮信太郎さん
「この辺は全部燃えて、裏に柿川という川が流れていてみんなそこに逃げたとか。うちのおやじは悠久山に逃げたとか言っていましたね。ここは昭和24年に建てました。2代目で建て直した。」
その後も段階的に工場を増築して、現在の形へ。先代から受け継いだ技術と思いが、今も続いています。
■4代目・木宮信太郎さん
「今日より明日の品物を良くしようと思うと、力が湧いてきますね。」
■5代目・木宮大基さん
「小さい頃からおやじの背中を見ていたのがでかいと思います。じいちゃんもいましたけど、うちの人間がやっているのを見て『自分も多分そうやるんだな』みたいな、やりたいなといつの間にか思っていました。」
大基さんは麩をつかった料理の幅を広げようと、数年前から新しい商品の考案に取り組んでいます。
■5代目・木宮大基さん
「食べるときに手間がかかるっていう話をお客さんから聞いた。すぐ食べられるお麩がいいなと思って。」
車麩を薄くスライスした〝このは〟。お麩ならではの食感はありつつ、薄いためもどすのにかかる時間は短く炒め物などにも合う商品です。
これからも伝統的な製法を守り、時代に合わせて進化しながら歴史をつないでいきます。
■5代目・木宮大基さん
「基本のうちの4回巻きっていうのは、ずっとそれは残していきたいなと思っています。加えて現代の食卓に合ったような商品を開発とか提供していければいいなと思っています。」
車麩を薄くスライスした〝このは〟以外にも、生地を1回巻いた一重の車麩〝ひとえ〟という商品もあります。どちらも料理時間が短縮され、手軽に麩が楽しめます。