2025.10.15【特集|クマ被害】過去最多のペース・・・大凶作でエサ探し市街地へ、山で何が!?専門家の調査に同行【新潟】
クマから身を守る方法は?
県内で相次ぐクマの被害。住宅地に現れるケースも少なくありません。いま山で何が起きているのか、専門家の調査に同行するとその理由が見えてきました。
人の生活圏に入り込むクマ。県内でも、住宅のすぐそばで目撃されるケースが増えています。
村上市では9月、市役所などがある中心部にクマが出没。早朝の住宅に侵入する騒ぎがありました。
■柏百花記者
「クマは玄関のガラスを割って中に入ったということです。」
■住人
「まさか(クマが)入ってくると思わない。洗面所の洗濯物を入れておくカゴだけが倒れていた。ケガがなくて良かったですけどね。」
■近隣住民
「まちなかの方までクマが出てきたと聞いていて、こんなところまで来るんだという感覚はあったけれど、やっぱり怖い。」
ケガ人も相次いでいます。
阿賀町では、買い物帰りに歩いていた女性がクマに襲われ、両腕をかまれるなどしました。
■通報した人
「びっくりですよ。ピンポンを鳴らされて出てきたら、ここに四つんばいになって血だらけの女の方から『クマに襲われたので救急車呼んでください』と言われた。」
県内では今年度すでにクマによる人身被害が11件発生。
これは過去最多のペースで、県は【クマ出没特別警報】を出して最大級の警戒を呼びかけています。
なぜ、人里でクマの出没が相次いでいるのでしょうか。
クマの生態に詳しい、新潟大学の箕口名誉教授です。
■新潟大学 箕口秀夫名誉教授
「双眼鏡でブナの枝先を見るとあるはずなんですが…ないですね、大凶作ですね。」
クマの秋の主食は『ブナの実』ですが、今年は全国的に凶作だといいます。
■新潟大学 箕口秀夫名誉教授
「一般的には『ナラ枯れ』と言われている伝染病のような病気。今年はミズナラ・コナラともに不作ということで、ツキノワグマをはじめ山の動物たちにとってダブルパンチ。」
これは夏に撮影されたクマの様子です。
同じ個体が秋になると・・・明らかに体が大きくなり、おなかの肉がたれているのが分かります。冬眠中、体脂肪をエネルギーとして使うため、秋のうちに大量のエサを食べる必要があるのです。
■新潟大学 箕口秀夫名誉教授
「何としてでもエサを取りたい・栄養を取りたいということで、市街地に出てエサを探すという集団が出てきてしまう。」
10月11日-
クマが出没した長岡市栃尾地域の現場には、エサとなるものがたくさんありました。
■池川泰介記者
「男性は、この家の玄関先でクマに襲われたということです。そばにはクマが食べたとみられる柿の実も落ちています。」
■近隣住民
「(1週間前)枝が折れていて実が全部食べられていたから、これはクマだなと思った。もっと熟してから取った方がいいことは分かっているが、それまで待てない。」
10月6日-
新発田市で撮影された映像。
「親子だ、落ちちゃったんだ。」
「外に出ないように言った方がいい、怖い。」
用水路に落ちた子グマ2頭を親グマが助けようとしていました。
■撮影した人
「親グマは自由にのぼりおりしていたので助けに行きたかったんでしょうけど、助けられなかったみたいで。親グマだけ走って山に行きました。」
新潟大学の箕口名誉教授は、この映像には学ぶべきポイントがあると指摘します。
■新潟大学 箕口秀夫名誉教授
「クマの身体能力は非常に高い。走って木のところに行って、高いところに登れば大丈夫と思っている人がいるかもしれないが、クマの方がずっと木登りは上手。時速40~50kmで走れる。よく例えに出されるのは、クマの走る速度はウサイン・ボルトよりも速い。」
もうひとつは、『母グマと子グマの関係性』です。
■新潟大学 箕口秀夫名誉教授
「親子のクマに会うと母親が子どもを守ろうとして神経質になるので、気をつけなければいけないと言われていて、まさにそのことがよく分かる。おりの中に子グマが入っている場合、ぱっと見近くに他のクマがいないように見えても、必ず母グマがその近くで子グマを何とかしようと身構えているので、不用意におりに近づくと母グマに襲われてしまうことがあるので十分気を付けてもらいたい。」
出没が過去最多ペースとなる中、クマへの警戒はいつまで続ければよいのでしょうか・・・。
■新潟大学 箕口秀夫名誉教授
「過去の大量出没年を見ると、10月にすごく多く人身被害が発生している。11月、さらには一般的にクマが冬眠するだろうと考えられている。12月にも人身被害が発生している。今年も場合によっては、年を越してもクマに十分注意しなければいけない状況。」
クマから身を守る方法を箕口名誉教授に聞きました。
・まず出会わないことが最も大切
そのために、クマ鈴など音の出る物を持つことや複数人で出かけるのも有効
・遭遇した場合は、とにかくクマを刺激しないこと
背中を見せずに静かに後ずさりをし、距離をとることが有効
・もし攻撃されてしまった場合
首や頭の上を手で守り、うつぶせの防御姿勢をとる