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2024.05.08銭湯100年物語 豪雪・水害…災害も乗り越えて 身も心も温まる地域の憩いの場【新潟】

銭湯100年物語 豪雪・水害…災害も乗り越えて 身も心も温まる地域の憩いの場【新潟】
地域の憩いの場 100年銭湯 泉乃湯(三条市)
三条市で昭和元年に開業した銭湯があります。店主の高齢化により一時休業しましたが、4月に営業を再開しました。普段は住民たちの憩いの場として、災害時には公共インフラとして、親子4代にわたる100年の歴史に迫ります。

「銭湯で 上野の花の 噂かな」…花見をした人、していない人、銭湯には色々な人が集まり会話が弾むということを詠った正岡子規の俳句です。

そんな日本の原風景が三条市に残されていました〝銭湯 泉乃湯〟。
■お客さん
「やっぱり大きなお風呂で足伸ばして、入った瞬間気持ちーーーっていうこの感覚。」
「昭和のような銭湯もいい。まだまだ三条にこんなところがあるっていうたまたま家の給湯器が壊れてお邪魔した。」
「小学生くらいからの常連。ここの息子さんと同級生。当時は色んな人が集まっていて人が集まる場という記憶はありますね。」

昔ながらの番台。入浴料は大人480円です。
店主の小泉允彦(まさひこ)さん。泉乃湯は常連客との絆が深いと言います。
■泉乃湯店主 小泉允彦さん
「地元の人が多い。地元から離れた人も車で来る。繋がりの強さを感じる。」

泉乃湯は、小泉さんの曾祖父が1926年(昭和元年)に開業。当時は風呂がない家庭が多く、銭湯は地域に欠かせない公共インフラでした。
■泉乃湯店主 小泉允彦さん
「昔はこの辺は鍛冶町で工場がいっぱいあった。ぼくが小さい頃は工場終わって夕方4時くらいから汚れた感じで来る人がいた。」

開業から約100年。地域に愛され続けた泉乃湯ですが、実は...去年11月、一時休業を余儀なくされました。
■泉乃湯店主 小泉允彦さん
「父である先代の体調が悪くなって。本人もこれ以上続けられないという感じで。」

曾祖父から代々引き継がれてきた家業。小泉さんは、美容室を経営する傍ら、4代目店主として泉乃湯を継ぐ決意を固めました。
■泉乃湯店主 小泉允彦さん
「小さい頃からこのお風呂で生活してきたので失くしたくないものという思いがある。近所の人からも『なくなると困る、寂しいね』と言われ自分が出来るところまでやってみようと思った。」

4月、小泉さんは泉乃湯再建に向け、風呂場の掃除や修繕に追われていました。
■泉乃湯店主 小泉允彦さん
「細かい目地まで汚れを落としたいのでなるべく丁寧にやっている。」

再建には三条市のベンチャー企業「下田村」が協力。運営する古民家ホテルの客に泉乃湯を使ってもらう狙いです。SNSで募集したボランティア30人も掃除などを手伝い、4月24日、再開の日を迎えました。

開店の4時間前、小泉さんは風呂のお湯を沸かしていました。燃料は、地元の木工所から安く仕入れた廃材です。釜と一体となった水槽の水を沸かしパイプで湯船に送ります。このようにお湯を沸かすと、いわゆる「やわらかいお湯」になるそうです。

■泉乃湯店主 小泉允彦さん
「常連客から家で入るよりは熱いけど心地いい温かさだと感想をもらった。」

再開後の一番風呂はボランティアとして再建に協力した男性です。
■一番風呂の客
「ボランティアで掃除したので以前よりきれいになってより気持ちいい。」

その後も休業前からの常連客やボランティアスタッフが続々と訪れ上々の再開となりました。
■泉乃湯店主 小泉允彦さん
「どうですか?お湯加減」
■客
「ちょうどいい」
「まずまず」
「もっと熱くてもいいんじゃない」
■泉乃湯店主 小泉允彦さん
「まだお湯作るのになれてなくて」

釜の炊き方は父に教わったといいます。
■泉乃湯店主 小泉允彦さん
「小学校の時にはもうやっていた。お小遣いもらうために。1日100円とか。」

当時の記憶を頼りに作業を進めていると、父親の健次さんが様子を見にきました。
■先代 父・健次さん
「怖いから見に来た、心配で見に来た」
■泉乃湯店主 小泉允彦さん
「やっとバトンタッチしてくれた。今まで自分がやらなきゃって全部やっていたので。」
■先代 父・健次さん
「4代目をやるなんていうからたまげたや。難儀ぃ仕事ばっかやね~できるだけ手伝ってやりたいと思うけどもう年だっけぇ。」

健次さんは、41歳の時に3代目店主となり、35年間、泉乃湯を切り盛りしてきました。
■先代 父・健次さん
「洪水もあったし、地震もあったし大雪もあったし。」

1963年、昭和38年に発生した38豪雪。三条市では最大2m45cmの積雪を記録し、泉乃湯も煙突以外は雪に埋もれてしまいました。
■先代 父・健次さん
「38豪雪では自衛隊を風呂に入れた。当時、自衛隊は仮設の入浴施設がなかった。」

さらに、2004年の7.13水害では、泥水を被った被災者や泥だしのボランティアなどを受け入れ復興に貢献。当時、泉乃湯で泥を流した男性は、今も常連として通っています。
■当時からの客
「7.13水害の時は被災した知り合いの家で泥かきを手伝った。家の風呂は入れなかったので泉乃湯で入った。その時のボランティア全員で。公共の施設として街に1つは銭湯があった方がいい。」

公共インフラとして。地域住民の憩いの場として。泉乃湯は、次の100年に向けて歩み始めました。

【泉乃湯】
水・金・日曜
午後5時から8時半までの営業
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