2025.05.18【特集】“逆走”の危険性を検証!県内には7カ所「平面Y型」インターチェンジとは【新潟】
県内7カ所が「平面Y型」
4月、栃木県の東北自動車道で〝逆走〟による死亡事故が発生しました。この事故は、逆走が起こりやすい構造のインターチェンジがきっかけになったとみられています。
じつは、県内にも同じ構造のインターチェンジがありました。今回、実際に走ってその危険性を検証しました。
4月26日、栃木県の東北道上り線で起きた逆走による事故。逆走した車と、正面衝突された車の運転手が死亡しました。現場にブレーキの跡はなく、衝突時それぞれ100km/hほどのスピードが出ていた可能性があります。
なぜ、逆走は起きたのか-
その背景に、逆走が始まったインターチェンジに『構造的な問題』があったと指摘されています。逆走が始まったとみられる黒磯板室ICと同じ構造のICが県内にもありました。
■庭山陽平記者
「これですね、高速の出口と入り口が平面で交差する構造になっています。この信号を左折してしまうと、高速を〝逆走〟してしまう形になります。」
上越市の北陸道・名立谷浜IC。
富山方面に向かう道と、高速道路から降りて料金所に向かう道が交差しています。これは『平面Y型』と呼ばれるICの構造。料金所から本線に合流する道路と、本線から降りる道路が、Y字に同じ高さで交差します。
東北道の事故の発端とみられるインターチェンジでは、福島方面に行く場合、料金所を過ぎて左に入る必要がありますが、それを見逃して直進した場合、料金所に来る道に誤って入る恐れがありました。今回の事故では、まさにこのような形で逆走が始まったとみられています。
『平面Y型』のICは、ドライバーにはどのように見えるのか-
県内にも複数ある同型のICを、いくつか走ってみました。
■庭山陽平記者
「南魚沼市内の関越自動車道・塩沢石打ICです。こちらも矢印看板とポールはありますが、停止線で止まったときの左折車線への角度が緩いです。行こうと思えば左折できそうな感じはします。」
矢印板やポールなどで進入を制止しようとしているものの、物理的に入ることは可能です。『平面Y型IC』は、交通量の少ない場所で費用面などを考慮し整備されるケースが多く、県内には7カ所あり、多くは県の南部に集中しています。
■庭山陽平記者
「今度は、妙高市内の上信越道・妙高高原ICですが、こちらはポールがないですね。普通に運転している分には標識があるので大丈夫そうだが、これまでの場所と比べると物理的にはもっとも容易に左折できる場所にはなる。ここを左折してしまうと、もう高速道路を〝逆走〟してしまう。」
さらに夜になるとー
■庭山陽平記者
「夜になると、また違ってきますね。道路の赤と青の色分けも、かなり分かりづらいです。やはりポールなどがないと、この標識だけではここを左折してしまうというのも分かります。」
日中と比べると視界が狭まり、標識なども見えづらくなっています。県警高速交通隊によりますと、2024年の高速道路の〝逆走〟による県内の通報事案は35件。毎年30~40件ほどの通報があるといい、インターチェンジやサービスエリアでの勘違いが多いといいます。
〝逆走〟についてドライバーに聞くとー
■ドライバー
「夜道で土地勘がないところだと(逆走しそうで)危ないと思ったことが何回かある。標識などをもう少しわかりやすくしてくれると良いのかな。」
■ドライバー
「(逆走は)高速道路の入り口を間違えるのか。スマートICとかは間違えてしまうかもしれないので、気を付けるようにしている。」
逆走を防ぐ有効な手立てはあるのか-
交通工学を研究する長岡技術科学大学の佐野可寸志(さのかずし)教授に聞きました。
■長岡技術科学大学 佐野可寸志教授
「夜のほうが逆走事故が多いと思うので、照明をしっかりさせることも重要。ただ、新潟は雪国なので、明るくするだけで対策になるというわけでもない。」
整備や維持にかかるコストの面から『平面Y型IC』の設置はある程度仕方がないとしたうえで、物理的に進入しづらい構造にすべきだと指摘します。
■長岡技術科学大学 佐野可寸志教授
「間違って進入しないような構造にする。具体的には、90度で右折・左折するのではなくて、逆走する場合は90度以上で曲がらないと行けない交差点にした方が安全になる。」
停止線の先にポールなどを設置することで、根本的に曲がりづらくする対策です。今回取材した中では、名立谷浜ICや能生ICでは角度がついて曲がりづらくなっていましたが、塩沢石打IC・妙高高原IC・中郷ICでは、簡単に左折が可能な状態でした。
さらに-
■長岡技術科学大学 佐野可寸志教授
「フェイルセーフティーとして、〝逆走〟が起きた後でもドライバーを検知して、事前に重大事故が起こらないような仕組みを作ることは可能だと思う。車と道路で最近は通信ができるようになっているので、そういったものを使って逆走車に警告する。」
NEXCO東日本は、東北道での逆走事故を受け、緊急対策として県内すべての『平面Y型IC』に矢印板を設置。さらに、複数の場所に案内看板の照明も設置しました。今後も、現地の状況に応じて警察と協議しながら、適宜対策を検討するとしています。
NEXCO東日本は、案内標識や路面標示等に気を付けて運転するほか、情報板などで逆走車情報を見聞きしたら速度を落とし、十分な車間距離をとって走行するよう呼びかけています。