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2025.05.23【特集】戦争は「ひどくて、残酷で、暴力的」ウクライナから小千谷市に避難して3年 夫婦が決めた〝生きる道〟【新潟】

【特集】戦争は「ひどくて、残酷で、暴力的」ウクライナから小千谷市に避難して3年 夫婦が決めた〝生きる道〟【新潟】
「日本を第二の故郷にしたい」
ウクライナから小千谷市に避難している夫婦がいます。日本での生活も、間もなく3年。ロシアによる侵攻が続く中、故郷ウクライナを思い、小千谷で暮らす夫婦を取材しました。

ウクライナから小千谷市に避難しているムタル・サリフさん。市内の金属部品をつくる会社で、働き始めて2年が経ちました。今では、主な商品の組み立てを任されています。

■ムタル・サリフさん
「ここでの作業のほとんどが慎重さが求められるから難しい。壊してしまわないように、100%正確に扱わないといけない。」

■同僚
「今日、晩御飯は?ディナー?」
■ムタル・サリフさん
「今日はまだわかりません、たぶん…コメ?」

日常会話ができるまで、日本語も上達しました。

■エヌ・エス・エス 大形学製造部長
「サリフは温和な性格で謙虚で、仕事も誠実に向き合って取り組んでくれているので、日々成長している感じがする。」

■ムタル・サリフさん
「この2年はとても大変だった。すべての物が日本語・漢字表記だから、でも今はたくさん上司や同僚から学んで、色々なことを自分でできるようになってうれしい。この仕事を楽しめています。」


「素敵な雰囲気だね」

サリフさんを迎えに来たのは、妻のイリナ・シェフチェンコさんです。2024年、運転免許を取得しました。

■イリナ・シェフチェンコさん
「(Q.毎日迎えに来ている?)はい。(Q.朝と夜?)夜だけ。朝は天気が悪いときに送るけど、基本は夜だけ。今日はどんな1日だった?」

■ムタル・サリフさん
「良い感じだよ。仕事は問題なかった。」

日常に慣れる一方で、ふるさとのことを気にかけています。
ロシアによるウクライナ侵攻。5月16日に両国の直接協議が行われましたが、停戦への道筋はいまだ見えていません。

■イリナ・シェフチェンコさん
「戦争は、どんな角度から見てもひどいもの。ひどくて、残酷で、暴力的です。誰も彼らに罰を与えない。いま思うのは、この世に正義なんてないこと。もし“力”をもっているなら、ロシアが持つ核兵器などの力があれば、何でも思い通りになってしまうなんて。」

小千谷市での生活が始まって、まもなく3年。2人は、ウクライナに戻らずこれからも日本にとどまることを決めました。

■ムタル・サリフさん
「私たちが帰っても、生活を立て直すのにどれくらいかかるだろう。すごく苦労するだろうし、もし上手くいったとしてもそのころ僕たちは80代です。」

■イリナ・シェフチェンコさん
「私たちは日本にとどまって、ここで家庭を築きたい。日本を第二の故郷にしたいです。」

日本で暮らしていくには、“避難民の在留資格”から“新たな在留資格”に変更する必要があります。 サリフさんは2025年2月、外国人が日本で働くための〝就労資格〟に変更。イリナさんは現在、家族滞在の在留資格を申請中です。

■ムタル・サリフさん
「避難民の在留資格を持っていたら、例えばの話だけど、もし今日戦争が終わればウクライナに帰らないといけないかもしれない。私たちは在留資格の変更に成功しました。それは、日本に住み続けるという私たちの〝夢を実現するための道しるべ〟です。」

『就労資格』への変更は、サリフさんの職場がサポートしました。避難民での入国は審査のハードルが高く、サリフさんが会社にとって必要な存在と示す必要がありました。

■エヌ・エス・エス 新田裕康取締役総務部長
「サリフさんは医療現場の経験があり、繊細かつ慎重な仕事ができる。私たちの会社も色々な部品が組み合わさる製品を作っているので、彼なら任せられるのではないかと判断(説明)した。」


2025年3月。イリナさんはウクライナを支援するため支援者と『チャリティーマルシェ』を開きました。

■イリナ・シェフチェンコさん
「イベント時は、地域の人たちと交流できるのをいつも楽しみにしている。子どもたちとの交流は特にね。みんながウクライナに思いをはせる機会になることがとてもうれしい。」

手作り商品の販売などで得た収益は、ある場所に寄付しています。

■イリナ・シェフチェンコさん
「レナタ、こんにちは。」

贈り先は、ウクライナの孤児院です。運営するレナタさんは、爆撃を受けたウクライナ東部の孤児院から子どもたちを比較的安全な西部に避難させました。しかし、状況は今も変わっていないと言います。

■ウクライナで孤児院を運営 レナタ・グセイノバさん
「ウクライナに暮らすのは非常に大変です。たとえ安全な場所に住んでいても安心することはできないし、幸せだと感じることもできないです。周囲に苦しんでいる人がいるから。」

レナタさんは、支援を続けるイリナさんや日本人に感謝しながら、ウクライナの現状を伝えてくれました。

■ウクライナで孤児院を運営 レナタ・グセイノバさん
「ウクライナはひどく苦しんでいます。戦争は私たちの土地で起きていて、私たちの土地で子どもが亡くなっています。戦争を止める唯一の方法は、ロシアのプーチン大統領に圧力をかけること。彼らの兵士が私たちに侵入していて、その逆ではないのです。私たちは誰よりもこの状況を終わらせたいと考えています。」

もうひとつ、イリナさんが気にかけるのが両親の存在。今もウクライナにとどまっています。


■イリナ・シェフチェンコさん
「私の父はいま、病気で具合が悪いです。ロシア軍が包囲していて、日に日に(両親がいる)ドニプロ近づいている。みんなひどく心配しています。」

ロシアの侵攻が終わらない限り、心が休まることはありません。

■イリナ・シェフチェンコさん
「両親との会話の最後には必ず『愛している』と伝えています。明日何が起きても、私たちはお互いに愛し合っていることが分かるように。」
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