2026.06.18【特集】離島医療の現場:無医村の「粟島」年に一度の全島健診に密着【新潟】
医師がいない・・・日本海に浮かぶ周囲23kmの島『粟島』
医師がいない離島『粟島浦村』では年に一度、大部分の島民が受ける全島健診があります。今回その健診に密着し、無医村の医療を支える島の看護師や村上総合病院の取り組みなど〝離島医療の現場〟を取材しました。
村上市の岩船港からフェリーで1時間半。日本海に浮かぶ周囲23kmの島『粟島』。約300人が暮らす粟島浦村には普段 医師はいません。
■島民
「緊急のときが本当に不安ですね。うちの息子もクルミアレルギーでアナフィラキシーになってしまって、そのときはちょっとあたふたしてしまいました。すぐ看護師を呼んでどうしたらいいかと。」
集落の端にある村唯一の診療所には、看護師が2人常駐しています。
■看護師 法性美弥子さん
「皆さん定期受診に来て待合室でワイワイ楽しそうにしていて、すごい元気なんですよね。80歳90歳でも畑に行っていて、無医村だけどあまり悲壮感なくすごく元気。」
粟島出身の本保たからさん(26)。進学のため一度島を離れましたが、2025年から診療所に勤めています。
■看護師 本保たからさん
「小さいころは、おばあちゃん・おじいちゃんたちの名前は分からなかった。顔しか分からなかったけど、いまは診療所に来てくれたりするのでやっと顔と名前が一致して、それもそれで楽しいなというか。」
専門学校を卒業後、村上総合病院に3年間勤務した本保さん。病棟で入院患者の看護にあたっていましたが、医師がいない粟島は看護師の責任も大きく違うといいます。
■看護師 本保たからさん
「村上総合病院のときは先生の指示があって動ける部分があったが、こっち(粟島の診療所)は24時間自分たちが一応何かあればいつでも動けるようにしなければいけない。ファーストタッチという部分で、結構責任というかプレッシャーというか大きいかなと思っています。」
現場での医療を看護師が担うなか、組織として離島・粟島を支えているのは『村上総合病院』です。杉谷想一院長は長年、粟島の医療に携わってきました。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「まずは昔から(粟島の)オンライン診療をやっていたという流れがあって、むしろ最近だとドクターヘリが飛びますので昔に比べると粟島の医療は非常に良くはなっていると思います。」
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60年以上前に無医村となった『粟島』。
いま、その島民の健康を支えているのは2000年から始まった『オンライン診療』です。
■看護師 法性美弥子さん
「(看護師が)問診をして血圧とか測って、電話して相談して、口頭指示の場合もあれば『テレビ診療遠隔で』となったら遠隔 テレビ診療につなげて、画面越しに先生の診察が始まるという感じですね。」
オンライン診療は週に3回程度行われ、5~8人が受診。緊急時には医師がドクターヘリの判断を下すことも。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「テレビ画面越しに患者さんをみても判断するのは非常に難しいのと、迷ったらドクターヘリを飛ばさなければいけないので、躊躇(ちゅうちょ)したことによって重大な事案が起こるよりはいいかなという感じだと思います。」
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この日、診療所には患者に接する医師の姿がありました。村上総合病院に研修に来ていた研修医の中村剛さん(26)です。
■研修医 中村剛さん
「必要な薬も少なければ、検査もレントゲンもない。聴診器とか触診、ここではそれが判断材料のひとつとして活躍している。今後、勉強をもう少し進めなければと再確認できる期間でもありました。」
村上総合病院では、2023年から粟島へ研修医の出張診療を実施しています。2025年度は8人、2026年度も10人が訪れる予定です。研修医は1週間ほど粟島に滞在し、島民の診療にあたります。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「研修医であっても、島に行くと頼りにされて非常にありがたがられます。人と人のコミュニケーションを大事にする島なので、そこに入ると非常にみんな本当に責任感を大きくして帰ってくると思います。」
■看護師 法性美弥子さん
「私たちだけだと先生方に相談して、そこから指示をもらうが時間がかかる。(研修医に)来てもらえていると早く医療につなげてもらえるので、非常に安心感はありますね。」
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5月14日、村上総合病院の医師やスタッフ・研修医ら約20人が粟島にやってきました。年に一度実施される島民の健康診断『全島健診』です。普段、島内に医療機材などがそろわないなか、島民が健康診断を受けられる大切な機会です。
■全島健診に携わる研修医
「無医村の島なので、そういう特有の島の方たちの特色があると思うので、健康診断を通して診ることができたらなと思っています。」
全島健診は2日間にわたって実施されました。
■島民(80代)
「(全島健診は)ありがたいですね。医者がいないということでちょっと不安。何も異常がなければ安心します。」
■島民(70代)
「年を追うごとに病気が出てくるので、やっぱり1年に1回はやっておけば安心です。」
今回の健診を受けるのは約150人。島民が一度に行動し、高齢者も多いため介助やサポートが欠かせません。
2日目はいよいよ特定健診です。介護センターと診療所に健診のブースが設けられ、看護師の2人も大忙し。
■看護師 本保たからさん
「採血困難者が何人かいるので、その人の採血と診療所でも定期で採られる方もいるし、その方の性格とかもあるので任されています。」
日ごろから島民と接している島の看護師だからこそできる役割です。医師の診察では、島民が日常の不安を相談していました。
■島民(70代)
「胃がん手術して今年で8年目だけど、貧血が治らない。」
健診に携わった研修医たちは、離島だからこその患者の生活に密着した医療の大切さを感じていました。
■健診に携わった研修医
「医者が少ない場所とか医療従事者が少ない場所で医療に貢献するというのは、今後先10年20年ともっと大切なことになってくると思うので、いろいろたくさんまた勉強になりました。」
■健診に携わった研修医
「まだ健康で笑顔で歩いてこれる段階で患者さんをみて、命の危機に瀕(ひん)して病院に運ばれるというのを未然に防ぐ。生の現場を見て、非常に重要なことだなというふうに思った。」
粟島の医療を支える村上総合病院。杉谷院長は、島民に寄り添い・日常の暮らしを知ることが医療の武器になると話します。
■村上総合病院 杉谷想一院長
「患者さんたちは非常につつましやかというか、簡単に(医者に)かかれないからすごく我慢しているんですよね。病気の重さ軽さではなくて、本人が生活するうちにどのぐらいの支障になっているかというのがすごく実感として伝わってきます。」