2025.05.09【特集】妙高市の無形文化財「スゲ細工」存続の危機…作り手たちの奮闘、人口約70人の平丸集落の春【新潟】
妙高市の無形文化財「スゲ細工」
細部まで丁寧に作り込まれた『スゲ細工』。妙高市の無形文化財として知られ、古くから平丸集落で作られてきましたが、〝作り手〟が不足し存続の危機となっています。伝統文化を次の世代へ繋ごうと奮闘する〝作り手たち〟にカメラが迫りました。
長野との県境に近い妙高市平丸集落。
この日、集落の伝統行事「春まつり」が開かれました。まつりの目玉は、平成初期に作られたという“巨大な牛”!妙高市の伝統工芸品で、昔から平丸集落で作られてきた『スゲ細工』です。
人口約70人の平丸集落。美しいブナ林が広がり、豊富な湧き水が平丸の農業を支えています。柴野美佐代さんと青野尚登さん、2人は上越市で暮らしていますが、10年前から定期的に平丸に通い『スゲ細工』を制作しています。
■スゲ細工の作り手 柴野美佐代さん
「(Q.いま制作しているのは?)来年は午年。本来は干支を作らなければいけないが、昔の人が作った『馬上謙信』というものがある。それを再現したい。」
平丸の『スゲ細工』は、昭和33年に冬の農家の副業として作られるようになりました。最盛期には200人ほどの作り手がいましたが、年々高齢化や過疎化が進み、この技術を継承しているのは柴野さんと青野さんの2人だけ。〝スゲ細工のこし隊〟と称し、伝統文化の継承や情報発信にも努めています。
■スゲ細工のこし隊 青野尚登さん
「(当時の人たちの技術の高さは)なんでこんなふうにできるんだろうって思う。要所要所がきれい。そこがうまく再現できない、もどかしさ。」
2025年3月。上越市の複合施設に〝スゲ細工残し隊〟の姿がありました。
■訪れていた人
「懐かしい。私らの親が作っていた。」
「作れないそうですもんね。残念。こんなに素敵なのが。」
2人が『スゲ細工』の歴史や魅力を発信するために開いた作品展です。
■スゲ細工の作り手 柴野美佐代さん
「今後も作り手を増やさなければという使命がある。まずは知ってもらうイベントを考えていた。」
平丸で毎年開かれていた伝統の「春まつり」。過疎化がすすみ、2018年を最後に途絶えていましたが、今年は出身者や地元企業などの協力を経て7年ぶりの開催に漕ぎ着けました。
■平丸の住民
「村の人が誰もいなくなっちゃったから、(祭りに)出てくれと言われた。」
■平丸の住民
「本当に祭りは、この山にとって大きな大きな心の支え。とっても楽しみにしていた。」
■妙高在住・アメリカ出身
「妙高大好き。親切。」
■妙高市民
「自然と人が共存しているのが素敵。」
7年ぶりに響き渡る、祭り囃子。
集落に活気が蘇りましたが、かつてのように恒例行事とするのは難しいと言います。
■まつりプロジェクト 霜鳥榮之代表
「私自身は二度とないことかな。地元でできないからやらないというパターンが多い。そうではなくて、なんとかやる。やれねーかと。」
祭りのあとは、みんなで食事です。
■上越市から参加
「とてもサクサクでおいしい。春を感じる。」
■平丸の住民
「(Q.コゴミの味は?)まだ走り。これからすごく大きいのが出る。」
思い思いに平丸を味わう参加者たち。
〝スゲ細工のこし隊〟もその輪の中にいます。
■スゲ細工の作り手 柴野美佐代さん
「ずっと行事がない。みなさんと会う機会がない。(会うのは)久しぶりのはずなんだけど接してくれて『仲間になれているかな』って。」
上越市で今年開かれる第100回謙信公祭の中で、2人が制作した『上杉謙信』がお披露目される予定だということです。