2025.05.02【特集|指導者の道へ】競歩で世界陸上「金」アスリート鈴木雄介さん【新潟】
“世界一美しいフォーム” 鈴木雄介コーチ
競歩の元世界記録保持者で、世界陸上金メダリストの鈴木雄介さんが新潟で指導者に転身しました。世界で戦った経験を次の世代に伝え、選手の育成に力を注ぐ鈴木さんの姿を取材しました。
「いきます、よーいスタート!」
一歩、また一歩。着実な歩みでその速さを競う〝競歩〟。
■新潟食料農業大学 鈴木雄介コーチ
「これ終わったら、最低限あと1本だから。」
選手とともに歩き汗を流す指導者は、かつて世界の舞台に戦ったアスリートです。
■新潟食料農業大学 鈴木雄介コーチ
「ただいまご紹介にあずかりました、鈴木雄介です。」
サトウ食品新潟アルビレックスランニングクラブにスタッフとして入団した鈴木雄介さん。石川県出身の37歳です。2012年には、男子20km競歩でロンドン・オリンピックに出場。2015年には20kmを1時間16分36秒で歩き、当時の世界記録を樹立しました。持ち味は、“世界一美しい”と言われるフォームです。
2024年、現役を引退。クラブと提携する新潟食料農業大学で、この春からコーチを務めています。
■新潟食料農業大学 鈴木雄介コーチ
「祖父が学校の先生をやってたりして教えるのが好きだなと思っていた中で〝競歩〟に出会い、競歩の選手を育てて指導することに考えがシフトした。」
『歩き』は、人間の基本動作のひとつ。競歩はそこに厳格なルールを科すことで、〝最も過酷な競技〟といわれる領域に高めました。
■新潟食料農業大学 鈴木雄介コーチ
「ランニングは完全に浮くことがあるが、(競歩は)極端にいうと跳んではいけない。両足を着くシーンを作ってください。」
さらに、接地した脚が地面と垂直になるまで膝を伸ばす必要があります。
■新潟食料農業大学 鈴木雄介コーチ
「地面から離す直前までまっすぐで、離したら曲げてもってくる感じ。」
そのスピードを、中学~大学まで陸上短距離選手だった記者が体験しました。
「よーいスタート!」
■柿木哲哉記者
「早い!やばい!早い!脚・ふともも・ハムストリングスが結構きた。」
■新潟食料農業大学 鈴木雄介コーチ
「あと(初心者は)すねもくるんですよね。」
「試合はきついですけどね。でも長距離種目全部同じで、最終的には出し切るというところ。」
新潟食料農業大学陸上部の練習会。メニューは400mのトラックを2周、スピードを鍛える練習です。自らも選手とともにトラックを歩き指導します。
■新潟食料農業大学 鈴木雄介コーチ
「『まだ歩けるかな』と自分自身に思うのと、競歩はフォームが大事だが自分が手本になればいいかなと思っています。」
先頭を走っていたのは、この春入学した中田大嵩選手。
長野県出身で、高校3年生だった2024年に5000m競歩でインターハイに出場しました。
■新潟食料農業大学 中田大嵩選手
「この大学に入ったときにタイムが一番遅いので、自分が頑張らないとみんなに勝てない。一番頑張らないと。」
中田選手は、インターハイで鈴木コーチから直接オファーを受けて入部しました。
■新潟食料農業大学 中田大嵩選手
「練習終わりにどんなの食べればいい?」
■新潟食料農業大学 鈴木雄介コーチ
「小さいパンとか。コンビニのおにぎりも大きいから、もうちょっと小さくていいかも。」
■新潟食料農業大学 中田大嵩選手
「トップレベルの選手を目の前で見られるのは、すごく勉強になる。人生の中で、これだけ高いレベルで教われることはなかったので、僕自身も新潟に来て頑張りたいと思ってきた。」
2024年のインターハイ5位の六本木直斗選手も入部しました。
鈴木コーチの背中を追い、世界の頂点を目指します。
■新潟食料農業大学 六本木直斗選手
「土台づくりを1年目に行い、2年目からは学生トップの選手にも交えるようになって、オリンピックでメダルを取ることが目標。」
有望な新入部員7人を迎えた『新潟食料農業大学』。
鈴木コーチは選手と同じ目の高さで、世界と戦うための技術を伝えています。
■新潟食料農業大学 鈴木雄介コーチ
「厳しく指導しても全然響かないと思うんですよね。そういうキャラクターではないので。(自分の)精神年齢はすごく幼く、選手と同じくらいだと思うので、選手に近い立場でいようかなと。」
新潟で歩み始めた『指導者の道』。
これからの目標は-
■新潟食料農業大学 鈴木雄介コーチ
「(自分が)オリンピックで金メダルを取れなかった悔いが残っていて、それを背負わせるわけじゃないが、選手たちには金メダルを目指して頑張ってもらいたい気持ち。」